転生君主 ~伝説の大魔導師、『最後』の転生物語~【改訂版】

マツヤマユタカ

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第六十六話 帰還

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「プロメテウス……」

 ガイウスは噛んで含めるように、その名を復唱した。

「あまり、思い出したくもない名前だがね!」

 カルラはそう吐き捨てるように言った。

「前にも言ったと思うがね、あの男はかつて正真正銘の大魔導師だったんだよ。だがね、ある時突然、奴はひっくり返っちまったのさ」

「ひっくり返る?」

「簡単に言えば、悪の道に入っちまったってことさ」

「何でまた、突然そんなことに?」

「さあね。その頃あたしはもうプロメテウスの下から独立してやっていたからねえ。ただ、シグナスは知っているはずさ。なにせあいつも一緒にひっくり返っちまったんだからね」

「なるほど」

「で、シグナスはどうしたんだい?」

 問われてガイウスは答えに窮した。

「い、いやその、逃げられました……」

「ふうん。そうかい、逃げられたかい。あたしには、なにやらずいぶん話し込んでいたように見えたがね?」

 ガイウスは途端に目を白黒させて、慌てふためいた。

「んぐっ!い、いやその……」

「ふん!どうせ前世の話でもしていたんだろうさ!違うかい!?」

「違わない、です……」

「まったく、しょうがない奴だねえ」

「あのう、カルラも知っていたの?」

「なにがだい?」

「いや、その、僕が転生者だってこと」

「当たり前だろ!だがまあ、その話は又にしようか。ロデムルがさっきから下で退屈そうに待っているからね」

 カルラの言う通り、ロデムルは所在なさげに、空中に浮かぶガイウス達をぽつんと下から見上げていた。

「了解」

 ガイウスはカルラに同意の返事をすると同時に、ゆっくりと下降を始めた。


 2


「アベル、いい子にしていたかい?」

 ガイウスは瀟洒な構えのレストランで一人寂しげに待っていたアベルに、とても朗らかに話しかけた。

 アベルはガイウスの声にピクンと反応すると、すぐさま顔を上げて彼の姿を確認し、一目散に駆け出してしっかと抱きついた。

「また、ずいぶんと懐いたもんだねえ」

 カルラが二人の横を、さもつまらなそうに通り過ぎ、窓際の席によっこいしょと座った。

「実に微笑ましいことです」

 ロデムルは二人に愛情のこもった視線を送りつつ、カルラの隣の席にゆっくりと静かに腰掛けた。

「まあそんなことは、どーでもいいがね。それよりも今後どうするかだが」

 そこで、アベルを伴ってカルラ達の対面の席に座ったガイウスが、提案した。

「まあとりあえずは食事にしようよ。さっきは途中で食いっぱぐれちゃったしさ?」

「ふん、あたしは食いっぱぐれてさえいないがね。だがまあ、とりあえずは腹ごしらえといこうかね」

 カルラがそう言うと、すかさずロデムルが右手を挙げてウェイターを手招いた。

 ガイウスはあらためて、うれしそうにメニューを広げた。
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