転生君主 ~伝説の大魔導師、『最後』の転生物語~【改訂版】

マツヤマユタカ

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第七十二話 バースへ

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「じゃあ、行ってくるよ」

 ガイウスは、ホテルの玄関前でカルラにしばしの別れの挨拶を告げた。

「ああ、気を付けてな。それと、くれぐれも魔法の練習を怠るんじゃないよ」

「判ってるよ。ほらアベルも挨拶しなよ」

 ガイウスに促され、アベルがカルラに手を振りつつ笑顔で挨拶をした。

「ばいばい。ありがとう」

「ああ、ばいばい。気を付けるんだよ」

 日頃厳しいカルラも、幼子相手には優しく、笑顔で手を振り挨拶を返した。

「俺には厳しいくせに。だいたい俺とアベルは一歳しか違わないってのにさ」

 ガイウスがぐちぐちと小さな声で呟いたのを、カルラは聞き逃さなかった。

「何か言ったかい?一歳しか違わないって言うが、そもそもお前さん本当の歳はいくつなんだい?」

 カルラのこの言葉にロデムルは怪訝な顔つきとなり、と同時にガイウスが目を白黒させた。

「んぐっ!ろ、六歳だよ!な、なにを言ってんのかなあ、カルラは。はは、ははははは」

 ガイウスは、ロデムルに向かって必死で取り繕った。

 そんなガイウスの大慌てな様子を見て、カルラがにやりと口角を上げた。

「これで判ったろう?あたしに逆らうとどういうことになるか」

「はい、ごめんなさい」

 ガイウスはあっさりと敗北を認めるしかなかった。

「ふん、判ったならいいよ。もうお行き」

「はい。では改めまして、行ってきます」

 ガイウスはそう告げると、ロデムルの手を借り馬へ跨った。

 次いでアベルが、ロデムルにより後ろに乗せられると、ガイウスは軽く馬腹を蹴り、馬はゆっくりと歩き出した。

 ロデムルは、カルラに深々と一礼すると颯爽と別の馬に飛び乗り、手綱を返してガイウスの後を追った。

 カルラは、こちらを振り向きいつまでも手を振るアベルに対し、やはり笑顔で手を振り続けたものの、ついにその姿が見えなくなると同時に厳しい顔つきとなり、きびすを返してテーベの路地裏へと消えていった。


 2


「アベルの村、なんていったっけ?」

「バースだよ」

 アベルは少し口を尖がらせて言った。

「ああ、そうそうバースね。ごめんよ、忘れちゃってて」

 ガイウスは村の名前をすっかり忘れていたことを、アベルに素直に謝った。

「それで、バースまではどれくらいかかりそうかな?」

 アベルはその質問には答えられず、首を大きく横に傾げた。

 すると後ろを行くロデムルが、アベルの替わりに答えた。

「およそ五日といったところでしょうか」

「そんなに?結構あるね」

「ですが道は平坦ですし、テーベまでの道のりと比較しますと、かなり楽かと」

「ああ、あの山道はひどかった。もっとも、おかげでずいぶん乗馬がうまくなったけどね」

「なにごとも実践が一番かと」

「確かにね。魔法の方も、テーベでの実戦経験でだいぶ自信がついたよ」

「それは良うございました。ですが過信は禁物でございます。くれぐれもご注意を」

「そうだね。それにしてもカルラのいない日なんて、どれ位ぶりだろう」

「そうですね。ですがあまり羽を伸ばしすぎますと」

「判ってるよロデムル。ちゃんと練習はするよ。なにせ後が怖いからね」

 ガイウスはそう言うと、ロデムルに向かって軽くウインクをした。
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