転生君主 ~伝説の大魔導師、『最後』の転生物語~【改訂版】

マツヤマユタカ

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第七十四話 マタイ茶

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 女将の案内で、今宵のしとねへと向かう途中、突然アベルの腹の虫が豪快に鳴り響いた。

 ガイウスは、笑顔を浮かべてアベルに問うた。

「お腹すいた?」

 アベルは無言でこくりとうなずいた。

「じゃあ先に食事にしよう」

 ガイウスの言葉に、アベルは満面の笑みを浮かべて勢いよくうなずいた。

「あらあら、それじゃあみなさん、どうぞ食堂へいらしてください。すぐにお食事のご用意を致しますので」

 非常に愛想の良い女将に促され、ガイウス達は食堂へと向かった。


「あんた~、三名様、お食事お願いね~」

 女将は、食堂奥の厨房にいる筋骨隆々な男性に向かって、声をかけた。

 すると女将に「あんた」と呼ばれた男性は、女将とは違ってひどくぶっきらぼうに答えた。

「あいよ」

 女将は男性の返事を聞くと、ガイウス達に振り返って言った。

「すみませんねえ。無愛想で。さあこちらへどうぞ」

 女将に促され、四人用のテーブル付きの椅子に座りながら、ガイウスは機嫌よく尋ねた。

「ご主人ですか?」

「ええ、そうなんです」

 女将はまたも愛想よく答えた。

 すると突然女将が何かを思い出したのか、顔の前で両手をぱちんと合わせた。

「あっそうだ!お飲み物をお出ししましょうね。この地方の名物のマタイ茶はいかがかしら?」

 アベルが、はじけるような笑みを浮かべて叫んだ。

「マタイ茶!ぼくマタイ茶がいい!」

「アベル、マタイ茶が好きなの?」

「うん、大好き!」

「そう、じゃあ僕もマタイ茶にしようかな。ロデムルはどうする?」

「わたくしもぜひ、その名物のマタイ茶を頂きたいですね」

「それじゃあ、マタイ茶を三つください」

 ガイウスが代表して注文すると、女将は本当にうれしそうに返事をした。

「は~い。すぐに持ってきますね」

 女将は言うや、足早に厨房へと向かった。

 アベルはその背を見やりつつ、足をブラブラとさせて待ちきれないといった素振りを見せた。

 その様子を見てガイウスが言った。

「マタイ茶が本当に好きなんだね?」

「うん!ママがよく作ってくれたんだ。僕の大好物だから」

「そうか、もうすぐそのママにも会えるね」

「うん!本当にありがとう」

 そこへ女将が、お盆の上に人数分のマタイ茶をのせてやってきた。

「来た!」

 アベルは真っ先に目の前に置かれた熱々のカップの取っ手を掴み、慌ててフーフーと息を吹きかけ始めた。

 そしてしばらく息を吹きかけた後、みんなが暖かい目で見守る中、アベルは待ちに待ったマタイ茶を口に含んだ。

「うん!美味しい!」

 アベルは心底うれしそうに言った。

「二人も飲んで!さあ早く早く!」

 アベルにせかされ、ガイウス達も熱々のマタイ茶をすすった。

「おっ!これは美味しい!」

「実に膨よかな香りと、豊潤な味わいですね」

「でしょ!でしょ!」

 アベルはご機嫌な様子で女将と顔を見合わせ。笑いあった。
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