転生君主 ~伝説の大魔導師、『最後』の転生物語~【改訂版】

マツヤマユタカ

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第九十四話 異臭

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「ふむ、ロデムルの言うとおり、ダロスの憂鬱がこの宮殿内にも蔓延しているとすれば、案外探し出すのは容易かもしれないねえ」

 カルラは何度もうなずきながら、そう言った。

「うん。実際ここは物資だけは大量に積まれているけど、人っ子一人いないし。ねえ、ここが倉庫ってことはないよね?」

「それはないかと思われます。この部屋には多量の日光が直接差し込んでおります。塩などはともかく、小麦粉やワインなどを保管する場所としては適しませんので」

 ロデムルはすかさずガイウスに説明を施した。

 ガイウスはその説明を聞くなり、近くの密閉された木箱の蓋を思い切って開けてみた。

 すると驚くべきことに、中に入っていた果物が若干くさりかけており、蓋を開けたことによって異臭を辺りに撒き散らした。

「うわっ!ひどいもんだなあ。でもまあ、これならカルラの言うとおりかもね」

 ガイウスは言いながら、直ちに木箱の蓋をきっちりと密封する形に閉めた。

「さて、いつまでもこんなところにいても始まらん。さっそく捜索開始と行こうじゃないか」

 カルラは言うなり、さっさと歩き出した。

 ガイウスたちは、カルラの呼びかけに大きくうなずき、そそくさと後に続いた。


 2


「この部屋じゃない。こっちでもない。て言うか、扉の前で衛兵にあって以来、人っ子一人出会わないんですけど」

 ガイウスの困惑の言葉に、カルラも同調した。

「ふむ、確かにおかしいねえ。もうすでに宮殿内に侵入してから十五分は経っているはずだ。それにもかかわらず一度も人影すら見かけないというのは、ちと異常だねえ」

「もしかして、罠?」

「シグナスが仕掛けたっていうのかい?」

「だってシグナスは、僕らが追いかけてくるだろうことを予想しているはずでしょ?だったらこの宮殿内に罠を張り巡らして、僕らを捕まえようとしてもおかしくないと思うんだけど?」

「かも知れないねえ。うん?ちょっとお待ち、何か匂わないかい?」

「えっ?いやなんにも、まさかさっきの腐った果物の匂いが、ここまで来たってことはないよね?」

「馬鹿をお言いじゃないよ。そんなわけがないだろう」

「だよね。ロデムルはどう?」

「わたくしも特になにも匂いませんが」

 だがカルラは鼻をクンクンと何度もひくつかせて、匂いを嗅いだ。

「いや、かすかにではあるが匂いが漂っているよ。かつて何度も嗅いだことのある、嫌な匂いがね」

 ガイウスは、カルラの言葉を聞いて目一杯に鼻腔を広げて、辺りの空気を出来る限り吸い込んだものの、まったく異臭を感じることはなかった。

 だがカルラは、ついに異臭の出所を突き止めた。

「こっちだよ!」

 突然駆け出したカルラを、ガイウスたちは慌てて追いかけた。

 するとカルラは、ある扉の前で急に立ち止まった。

 ガイウスたちが追いつき、カルラ同様その扉の前で立ち止まると、ようやくガイウスたちもかすかに異臭を嗅ぎ取ることが出来た。

「本当だ!なんか臭い!」

「はい。それもこの匂いは、カルラ様!」

 ロデムルの緊張した呼びかけに、カルラは大きくうなずくと、おもむろに扉に手を掛け、一気に押し開いた。

「やはりね。思ったとおりだ」

「な、なんだ!?この強烈な匂いの元は!?」

 ガイウスは立ち込める強烈な匂いを遮ろうと、自らの口元を両手で厳重に押さえながら、カルラに問うた。

 カルラは、重々しい声音でもってこの匂いの正体をガイウスに明かした。

「お前さん、今までこの匂いを嗅いだ経験はなかったのかい?これはね、日数を経て腐り果てた、人間の死体の匂いだよ」
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