転生君主 ~伝説の大魔導師、『最後』の転生物語~【改訂版】

マツヤマユタカ

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第九十五話 気配

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「またぞろ、臭いねえ」

 先頭を行くカルラが、凶悪そうな面相でもって鋭く言った。

「ほんと?他にも犠牲者が?」

 ガイウスも険しい顔つきでもってカルラに問いかけた。

「ああ、おそらくそうだろうね。同じ臭いなんでね」

「とりあえず行ってみよう。この先なんだね?」

「ああ、行こう」

 三人は、足早になって臭いの元へと急ぎ向かった。


 すると突然、先頭のカルラが急激に立ち止まった。

 あまりにもいきなりなことのため、後ろを歩いていたガイウスの顔が、カルラのお尻に突っ込んでしまった。

「ちょっと!どうし――」

 ガイウスが言い終えるより早く、カルラが叫んだ。

「来たよ!」

 ガイウスは、これまでに幾度かの実戦経験を積んだことが功を奏したのか、考えるより早く後方に飛び退すさった。

 カルラは、ガイウスが後方に素早く飛んだことを気配で察知し、愛弟子の成長を感じてにやりと一瞬口角を上げた後、自らは左へ地面すれすれを滑空するように飛んだ。

 ロデムルは、カルラが左へ飛ぶのを確認すると、反対の右方向へと大きく跳躍すると同時に、空中で隠し刀を素早く抜き放った。

 三人は、一瞬の内に敵に対する迎撃体制を整えた。


 だが敵は、現れなかった。


「ん?あの~、敵が来たんじゃ?」

 ガイウスは狐につままれたような顔つきで、いぶかしげに言った。

 カルラは、そんなガイウスを厳しく叱責した。

「馬鹿たれ!警戒を解くな!敵は、いる!」

 カルラの言葉に、ガイウスは驚いた。

「うそ!?まじで!?本当にいるの?ぜんぜん気配とか感じないんだけど」

 今度はロデムルが、ガイウスの疑問に答えた。

「カルラ様が仰るのですから、確かに敵はいるのでしょう。ですが、おそらくは巧みな敵なのでしょう。坊ちゃま、決してご油断召されませんように」

「わかった。僕が感じないだけで、敵はいるのね。了解、僕もいきなり首を噛み切られたくはないしね」


 ガイウスが愚痴のように呟いてから、相当の時間が流れた。

 五分、十分、十五分と、時間はいたずらにただ過ぎ去っていった。

 だが敵は、気配だけを辺りに漂わせながらも、決して姿を現さなかった。


「まだいるの?」

 ガイウスが何度目かの問いを、カルラに発した。

「いるね。気配だけだが」

「そう。いるの。僕ちょっと、疲れてきちゃったんだけど……」

 ガイウスの弱音に、カルラが鋭く反応した。

「我慢しな!敵の目論見はそれだよ。こいつは、こちらの疲れを待っているんだ」

「それはそうかもしれないけど……」

 ガイウスの消耗は、かなりのものがあった。

 たとえ頭の中身が大人であるとはいっても、所詮身体は六歳児のものである。

 緊張した状態で立ち続ければ疲労が蓄積し、ついには限界を超えるであろうことは必定であった。


 ガイウスは今、自らの体力の限界と必死に戦っていた。
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