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第九十五話 見えざる敵
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「坊ちゃま、どうかご辛抱を」
ロデムルがガイウスを気遣い、声をかけた。
「うん……」
ガイウスは弱々しく返事をするも、その額には疲労のため、すでに玉のような汗が吹き出ていた。
「ここが我慢のしどころでございます。なにとぞ意識を集中なさって下さい」
はじめは散開して敵に備えていた三人であったが、カルラの指示によって集結し、今は背中合わせで三角形を形成している。
だが敵は一向に姿を現さず、気配だけを辺りに漂わせるという状態となってから、すでに三十分が経過していた。
この三十分という時間は、百戦錬磨のカルラとロデムルにとってはどうということもない時間であったが、六歳児の肉体を持つガイウスにとっては、そうではなかった。
敵を警戒して意識を集中し続けるには、三十分という時間の長さは、ガイウスにとっては永劫の時かと思うほどであった。
「くっ!……」
歯を食いしばって必死に苦行に耐えるも、今や彼は一行の足手まといとなっていた。
カルラは背中越しに伝わるガイウスの息遣いから、そろそろ彼が限界に近いことを察していた。
(まずいねえ。実にまずいねえ。いくら魔力が膨大でも、体力がなきゃそれも発揮できやしないからねえ。それにしても姿を現さない敵っていうのは、やっかいだねえ。やりづらいったらないよ、まったく)
さすがのカルラも、この見えざる敵の対応には苦慮していた。
(敵は完全にガイウスの体力が尽きるのを待ってるね。さて、どうするか)
すると突然、ガイウスの膝がガクンと崩れかけた。
ガイウスは咄嗟に全身に力を込めて踏ん張り、なんとか体勢を立て直して倒れ込まずにすんだものの、もはやそうなるのも時間の問題かと思われた。
(ちぃっ!今ので攻めて来ないとなると、こいつは相当に慎重な奴だね。おそらくガイウスが完全に倒れ込むまでは、決して姿を現さない気だよ、こいつは!)
カルラは内心で、実に何十年振りかの焦燥に駆られていた。
(仕方ないねえ。こうなったら攻めに転ずるのみだ!)
すると突然、カルラの両腕が真紅に染まり始めた。
「攻めるよ!集中をし!」
カルラは言うなり、両腕から凄まじい炎の連撃をたちどころに繰り出した。
紅蓮の炎はとぐろを巻いて暴れ狂い、瞬く間に宮殿内のだだっ広い総大理石で出来た廊下の壁や床、天井などの至る所に襲い掛かった。
壁に掛けられた美しい絵画や、床に置かれた流麗な彫刻、天井から吊るされた豪華なシャンデリアなどが燃えカスすら残らない程に燃やし尽くされた。
だがカルラは決して手をゆるめることなく、炎を発し続けた。
カルラの号令によって背中合わせのガイウスたちはゆっくりと回転し、それによってカルラは三百六十度、ところかまわず炎を繰り出し続けて、あらゆる調度品を燃やし尽くした。
だが、それだけだった。
敵は気配だけを漂わせながらも、決して姿を現すことはなかった。
(ちぃっ!だめか。本当にこいつはやっかいな相手だねえ)
カルラは内心で、強く舌打ちをした。
ロデムルがガイウスを気遣い、声をかけた。
「うん……」
ガイウスは弱々しく返事をするも、その額には疲労のため、すでに玉のような汗が吹き出ていた。
「ここが我慢のしどころでございます。なにとぞ意識を集中なさって下さい」
はじめは散開して敵に備えていた三人であったが、カルラの指示によって集結し、今は背中合わせで三角形を形成している。
だが敵は一向に姿を現さず、気配だけを辺りに漂わせるという状態となってから、すでに三十分が経過していた。
この三十分という時間は、百戦錬磨のカルラとロデムルにとってはどうということもない時間であったが、六歳児の肉体を持つガイウスにとっては、そうではなかった。
敵を警戒して意識を集中し続けるには、三十分という時間の長さは、ガイウスにとっては永劫の時かと思うほどであった。
「くっ!……」
歯を食いしばって必死に苦行に耐えるも、今や彼は一行の足手まといとなっていた。
カルラは背中越しに伝わるガイウスの息遣いから、そろそろ彼が限界に近いことを察していた。
(まずいねえ。実にまずいねえ。いくら魔力が膨大でも、体力がなきゃそれも発揮できやしないからねえ。それにしても姿を現さない敵っていうのは、やっかいだねえ。やりづらいったらないよ、まったく)
さすがのカルラも、この見えざる敵の対応には苦慮していた。
(敵は完全にガイウスの体力が尽きるのを待ってるね。さて、どうするか)
すると突然、ガイウスの膝がガクンと崩れかけた。
ガイウスは咄嗟に全身に力を込めて踏ん張り、なんとか体勢を立て直して倒れ込まずにすんだものの、もはやそうなるのも時間の問題かと思われた。
(ちぃっ!今ので攻めて来ないとなると、こいつは相当に慎重な奴だね。おそらくガイウスが完全に倒れ込むまでは、決して姿を現さない気だよ、こいつは!)
カルラは内心で、実に何十年振りかの焦燥に駆られていた。
(仕方ないねえ。こうなったら攻めに転ずるのみだ!)
すると突然、カルラの両腕が真紅に染まり始めた。
「攻めるよ!集中をし!」
カルラは言うなり、両腕から凄まじい炎の連撃をたちどころに繰り出した。
紅蓮の炎はとぐろを巻いて暴れ狂い、瞬く間に宮殿内のだだっ広い総大理石で出来た廊下の壁や床、天井などの至る所に襲い掛かった。
壁に掛けられた美しい絵画や、床に置かれた流麗な彫刻、天井から吊るされた豪華なシャンデリアなどが燃えカスすら残らない程に燃やし尽くされた。
だがカルラは決して手をゆるめることなく、炎を発し続けた。
カルラの号令によって背中合わせのガイウスたちはゆっくりと回転し、それによってカルラは三百六十度、ところかまわず炎を繰り出し続けて、あらゆる調度品を燃やし尽くした。
だが、それだけだった。
敵は気配だけを漂わせながらも、決して姿を現すことはなかった。
(ちぃっ!だめか。本当にこいつはやっかいな相手だねえ)
カルラは内心で、強く舌打ちをした。
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