転生君主 ~伝説の大魔導師、『最後』の転生物語~【改訂版】

マツヤマユタカ

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第九十六話 限界点

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 1


 ガイウスは、もはやふらふらの状態にまで追い詰められていた。

 四肢にはすでに力なく、首は大きく傾き、今にももげそうな程であった。

 口もだらしなく開き、息も荒く、半開きの眼にはすでに生気の色は乏しくなってさえいた。


 カルラは背中越しに、そんなガイウスの限界を完全に把握し、それゆえに焦燥の念を強くしていた。

(これはもう、数分だって持ちやしないね。何か打つ手を考えないと)

 その時カルラの額には、じっとりとした汗が浮かび上がっていた。

(ふん!一体何十年振りかねえ。こんなにこのあたしが追い詰められたのは)

 カルラはさも愉快そうに笑った。

 その時、またもガイウスの膝がガクッと崩れかけた。

 ロデムルはその様子を肩越しに捉え、たまらずカルラに進言をした。

「カルラ様、坊ちゃまはもはや限界のようでございます。わたくしが坊ちゃまを背中に背負いますので、その間の援護をお願い出来ますでしょうか?」

 このロデムルの申し出は、カルラにとって大変に危険なものであった。

 なぜならばロデムルがガイウスを背負う間、二人はまったくの無防備となってしまうため、カルラは二人の安全を図るために、反転して彼らに向き合う必要があった。

 だがそうなれば、代わりにカルラの背後ががら空きとなってしまう。

 では何故、こんな危険な申し出をロデムルがカルラに提案したのか?

 無論それはロデムルの、大魔導師カルラへの全幅の信頼があったればこそであった。

 他ならぬカルラならば、どんな絶体絶命の窮地に追い込まれようとも潜り抜けられるはずだとの思いから、ロデムルはあえて危険な進言をした。

 カルラは、この申し出を承知した。

「わかった。出来るだけ速やかにな」

 カルラもまた、自らに絶対の自信を持っていた。


 2


「カルラ、ごめん……」

 ガイウスは意識が朦朧とした状態ながらも、カルラへ声を掛けた。

「気にするな。お前さんはよくがんばったよ。だから安心して、ロデムルに負ぶさりな」

「ではカルラ様、出来る限り速やかに行いますので、よろしくお願いいたします」

「ああ、いつでもいいよ」

「では三秒前からカウント致します。三!」

 ロデムルは速やかにガイウスを背負うためにゆっくりと腰を落とし始めた。

「二!」

 カルラはいつ敵が姿を現してもいいように両手を真紅に染め、いつでも攻撃できる態勢を整えた。

「一!」

 ガイウスは一瞬でも早くロデムルの背中に乗るために、半身となってその時を待った。

「零!」

 合図と同時に、三人は一斉に動き出した。

 だがその瞬間、それまで頑なに姿を見せずにいた敵が、待ってましたとばかりに、ついにその邪悪な姿を白日の下に晒した。

 敵は、合図と同時に振り返ったカルラの、その背後に音もなく瞬時に現れた。

 そして――

 カルラは一瞬の内に、この世から消え去った。
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