転生君主 ~伝説の大魔導師、『最後』の転生物語~【改訂版】

マツヤマユタカ

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第九十八話 エルムールへの帰還

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 王都アレキサンドラの西、陸行二日の港町ベルスから今、定期連絡船が滑る様に出航した。

 その甲板上には、憔悴しきったガイウスたちの姿があった。

「なんとか乗れましたね?」

 ナスリがほっと一息といった様子で、そう言った。

 だが険しい顔つきのロデムルは、声に出さずただうなづくのみであった。

「あのう、それにしてもエルムールまで撤退というのは」

 ロデムルはさも仕方ないといった様子で一度ため息をつき、次いで覚悟を決めたように説明をし始めた。

「ナスリ、我々は王宮内において敵と対峙し、無残にも敗北した。そしてその際、我々は最高戦力たるカルラ様を、一瞬の内に失ってしまった。現状カルラ様に取って代わる戦力の補完が出来ない以上、撤退は速やかにして、最大に行わなければならない。つまり、それがエルムールへの帰還なのだ」

「はあ……」

「判らないか?中途半端に撤退し、そこで立ち止まっているところを敵に襲われたらどうする?我々はすでに、大幅に戦力が低下しているのだぞ?ひとたまりもあるまい?だからエルムールまで一気に引くのだ」

「なるほど、そういうことですか」

「そういうことだ」

 ロデムルはそれだけ言うと、強い後悔の念をその表情に表し、唇をギュッと噛み締めた。

 傍らのガイウスもまた、激しい自責の念にさいなまれた顔つきでうつむいている。

 二人の顔を、沈みゆく夕日が真っ赤に照らす。

 そして彼らは、ダロスを出国した。


 2


「あれがエルムール、なんと美しいのか!」

 ナスリは定期連絡線の甲板上から、始めてみるエルムールの青と白の二色に染められた美しい町並みを見て、感嘆の声を上げた。

「うん!すごい綺麗!」

 ナスリの脇で、アベルもまた興奮していた。


 港町ベルスを出航して二ヶ月あまり、ついにガイウス一行は、故郷エルムールへと帰還を遂げた。


「坊ちゃま、エルムールでございます」

 ロデムルが恭しく頭を垂れた。

「ああ、久しぶりだね。もう、何年も旅をしていたかのような気分だよ」

 ガイウスは穏やかな笑みを湛えて、そう言った。

「わたくしも同感にございます」

 ロデムルもまた、ガイウスに合わせたかのようにそっと微笑んだ。

 ガイウスはそんなロデムルの微笑を見て、何度も小刻みにうなづいた。

 だが次の瞬間、ガイウスの顔からすーっと笑みが消えた。

「父様に説明しなきゃならないね。カルラのことを」

「わたくしも共に」

 その時、船員が大きな声で船の接岸を告げた。

 ガイウスは軽くうなづくと、穏やかな声で言った。

「うん。行こう」

 ガイウスはそう言うとその身を翻し、階段をゆっくりと下っていった。


 ガイウスは、久しぶりにエルムールの大地を、その足でしっかり踏みしめた。
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