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第九十九話 帰宅
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ガイウスたちは港に降り立つとすぐに馬車を拾い、一路懐かしの我が家たるシュナイダー邸へと向かった。
青と白の二色で構成された美しい景色が窓の外に流れるも、ガイウスとロデムルにとってはいつもの見慣れた光景に過ぎず、彼らの心を動かすことはなかった。
しかし、アベルやナスリにとっては別であった。
それというのも、そもそもエルムールはその美しい町並みにより、国内外を問わず大変に人気を博す観光地であった。
そのためアベルたちが美しい町並みに心奪われたとしても、それは至極当然のことといえた。
だが、はしゃぐアベルたちを横目に、ガイウスとロデムルの心中は憂鬱なものであった。
彼らには事の次第をシュナイダー家の当主たるロンバルド・シュナイダーに報告する義務があった。
そのため彼らの心は青と白の町並みに反して、限りなく黒に近い灰色に染められていた。
2
馬車が、成人男性の三倍の高さはあろうかという頑丈そうな門扉を潜り、またしばらくの間走っていると、地上三階建ての豪壮な構えの大邸宅が、その姿を現した。
「うわっ!大っきいなあ~」
アベルが思わず声に出して驚いた。
傍らのナスリも、そのあまりの豪華さに二の句を告げないでいた。
するとガイウスが、邸宅の前の人影に気付いた。
「あっ!父様と母様が、いる」
「速便で到着のみは伝えておりましたので、首を長くして坊ちゃまのお帰りをお待ちだったのでしょう」
「うん。そうだろうね。なにせ、五ヶ月近くも家を空けていたからね。それも無断で」
「そのことも含めまして、お二方にご説明を申し上げねばなりません」
「ちょっと気が重いけどね」
「ですが、及ばずながらわたくしもおりますので」
「ああ、心強いよ」
ガイウスがそう言い終えると同時に、馬車が速度を落とした。
ゆったりとした速度となって表玄関に回りこみ、ロンバルドたちの目の前で静かに止まった。
ロンバルドのすぐ横に控えていた召し使いが、馴れた身のこなしで前に進み出ると、馬車の扉に手を掛け、ゆっくりとした動作で引き開いた。
ガイウスは、シュナイダー家の跡取り息子にふさわしい流麗な動作でもって降り立ち、挨拶の言葉を行儀良く述べた。
「父様、母様、さぞご心配をお掛け致したかと存じますが、ただいま戻ってまいりました」
「ガイウス!」
母エメラーダは、ガイウスの挨拶を聞き終えると同時に叫び、たまらず膝を付いて抱きつき、瞬く間に泣き崩れた。
ロンバルドはその光景を見つつ、静かで穏やかな口調で「おかえり」と一言だけ声を掛けると、続いて馬車から降り立ったロデムルをねぎらった。
「ロデムル、ご苦労だったな」
ロデムルは、威儀を正して返答をした。
「とんでもございません、旦那様。事の次第につきましては後程改めて詳しくご説明申し上げますが、まずはご紹介したい人物が、二名おります」
そう言うとロデムルは、馬車から降り立とうとしているアベルとナスリを指し示し、簡潔に二人のことをロンバルドに紹介した。
ロンバルドは深くうなずき、言った。
「ようこそ。二人ともどうかここを自分の家だと思って寛いで欲しい」
そう言うとロンバルドは、にこやかに二人に微笑みかけた。
するとナスリが代表してロンバルドに挨拶を返した。
「ありがとうございます。痛み入ります」
ロンバルドはうなずくと、右手で邸宅を指し示して言った。
「さあ、いつまどもこんなところにいても始まらない。みんな中へ入ろうじゃないか」
ロンバルドに促された四人は、ゆっくりとした足取りで邸内へと足を踏み入れた。
ガイウスたちは港に降り立つとすぐに馬車を拾い、一路懐かしの我が家たるシュナイダー邸へと向かった。
青と白の二色で構成された美しい景色が窓の外に流れるも、ガイウスとロデムルにとってはいつもの見慣れた光景に過ぎず、彼らの心を動かすことはなかった。
しかし、アベルやナスリにとっては別であった。
それというのも、そもそもエルムールはその美しい町並みにより、国内外を問わず大変に人気を博す観光地であった。
そのためアベルたちが美しい町並みに心奪われたとしても、それは至極当然のことといえた。
だが、はしゃぐアベルたちを横目に、ガイウスとロデムルの心中は憂鬱なものであった。
彼らには事の次第をシュナイダー家の当主たるロンバルド・シュナイダーに報告する義務があった。
そのため彼らの心は青と白の町並みに反して、限りなく黒に近い灰色に染められていた。
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馬車が、成人男性の三倍の高さはあろうかという頑丈そうな門扉を潜り、またしばらくの間走っていると、地上三階建ての豪壮な構えの大邸宅が、その姿を現した。
「うわっ!大っきいなあ~」
アベルが思わず声に出して驚いた。
傍らのナスリも、そのあまりの豪華さに二の句を告げないでいた。
するとガイウスが、邸宅の前の人影に気付いた。
「あっ!父様と母様が、いる」
「速便で到着のみは伝えておりましたので、首を長くして坊ちゃまのお帰りをお待ちだったのでしょう」
「うん。そうだろうね。なにせ、五ヶ月近くも家を空けていたからね。それも無断で」
「そのことも含めまして、お二方にご説明を申し上げねばなりません」
「ちょっと気が重いけどね」
「ですが、及ばずながらわたくしもおりますので」
「ああ、心強いよ」
ガイウスがそう言い終えると同時に、馬車が速度を落とした。
ゆったりとした速度となって表玄関に回りこみ、ロンバルドたちの目の前で静かに止まった。
ロンバルドのすぐ横に控えていた召し使いが、馴れた身のこなしで前に進み出ると、馬車の扉に手を掛け、ゆっくりとした動作で引き開いた。
ガイウスは、シュナイダー家の跡取り息子にふさわしい流麗な動作でもって降り立ち、挨拶の言葉を行儀良く述べた。
「父様、母様、さぞご心配をお掛け致したかと存じますが、ただいま戻ってまいりました」
「ガイウス!」
母エメラーダは、ガイウスの挨拶を聞き終えると同時に叫び、たまらず膝を付いて抱きつき、瞬く間に泣き崩れた。
ロンバルドはその光景を見つつ、静かで穏やかな口調で「おかえり」と一言だけ声を掛けると、続いて馬車から降り立ったロデムルをねぎらった。
「ロデムル、ご苦労だったな」
ロデムルは、威儀を正して返答をした。
「とんでもございません、旦那様。事の次第につきましては後程改めて詳しくご説明申し上げますが、まずはご紹介したい人物が、二名おります」
そう言うとロデムルは、馬車から降り立とうとしているアベルとナスリを指し示し、簡潔に二人のことをロンバルドに紹介した。
ロンバルドは深くうなずき、言った。
「ようこそ。二人ともどうかここを自分の家だと思って寛いで欲しい」
そう言うとロンバルドは、にこやかに二人に微笑みかけた。
するとナスリが代表してロンバルドに挨拶を返した。
「ありがとうございます。痛み入ります」
ロンバルドはうなずくと、右手で邸宅を指し示して言った。
「さあ、いつまどもこんなところにいても始まらない。みんな中へ入ろうじゃないか」
ロンバルドに促された四人は、ゆっくりとした足取りで邸内へと足を踏み入れた。
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