転生君主 ~伝説の大魔導師、『最後』の転生物語~【改訂版】

マツヤマユタカ

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第百六話 庭

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 訝しむエルに、ロンバルドが恐る恐るといった様子で言った。

「そうなのですか?ではタミール族が忽然と何処いずこかへと消え去ったのち、この辺り一帯を領したローエングリンが名づけた地名なのかもしれません」

 するとロンバルドの言葉に、エルが興味深く反応した。

「ふむ、面白いな。人の世ではタミールは忽然と何処かへ消え去ったことになっておるのか?」

 ロンバルドは意外な問いかけだと思いながら答えた。

「古代タミール族については謎だらけで、古文献を紐解ひもといてもほとんどなにも判らずじまいだと聞いています。エル様は、彼らの行方をご存知で?」

 ロンバルドは古代史上の大いなる謎についてエルに問うた。だがエルはそれには答えず、逆にロンバルドに問い返した。

「さきほどお前さん、ローエングリンと言うたか?それが今、この地を治めておると?」

 ロンバルドの問いはまんまとはぐらかされたものの、そもそも彼自身はあまり歴史に興味がなかったためか特に気にせず、エルの問いに答えた。

「ローエングリン教皇国が、今現在この辺り一帯を治めております」

「きょうこう国?きょうこう国とはなんじゃ?」

「えーと、ゼクス教はご存知で?」

「知らん。なんじゃそれは?」

「たしか先ほど、この地はエル様の庭だとおっしゃってたと思うのですが……」

「うむ。言うたがどうした?」

「その、ご自分の庭であるこのルーグの森を訪れたのは、何年振りのことなのでしょうか?」

 エルは眉尻をギュッと上げ、斜め上を見ながら答えた。

「そうじゃな。ざっと、千年振りといったところかのう」

 ロンバルドはエルの言葉に眉根を寄せた。

「千年ほったらかしにしておいても、ここはご自分の庭だと?」

「なんじゃ、文句でもあるのか?」

 エルが威圧的に顎を上げながら言ったため、ロンバルドはこれ以上刺激しないよう努めた。

「いえ、別に。そういうわけではありませんが」

 しばしの沈黙の後、エルが気まずそうに一つ咳払いをした。

「まあ、そうじゃな。ちょこーっと久しぶりではあるな。じゃがまあわしも忙しいでな。なかなか下界に下りてはこれんのじゃよ」

 エルはロンバルドたちに対して、完全に目を逸らしながらそう言った。

 ロンバルドは優しさからか、それ以上エルを追求することはせず、先ほどの疑問をぶつけてみた。

「では、それはいいとして、この森は元々何と言われていたのですか?」

 するとエルは気まずい態度が一変、機嫌よくロンバルドの疑問に答えた。

「知りたいか?そうかそうか。この森の名を知りたいか。ならば教えてやるとするかのう」

 エルは早口でまくし立てると一旦そこで言葉を区切り、次いでゆっくりとした口調でこの鬱蒼とした森の名を告げた。

「この森の名はエデン。人の世が始まりし地にして、原罪を背負いし地、ここがそのエデンの森じゃよ」
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