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微妙な関係編
感じてはいけない気持ち
しおりを挟む雪也視点
1時限目前の休み時間
うるっと、彼女…手越神奈の透き通った茶色の目から透明で小さな一粒の雫が出てきて、白色の肌には目立つ淡い桃色の頬を通り顎の方へといき、滴り落ちていく。
俺は、驚いて手越の目を再び見つめる。すると、もう一粒両方の目から出てきていた。
手〔あっ…ごめんなさい…欠伸ですわ〕
如〔なんじゃ!良かった~泣いているのかと思ったよw〕
俺がそう言った途端、中学でも聞き慣れた授業開始を知らせるチャイムが鳴り、周りに立って居た生徒も、先生が来る前に急いで着席し始めた。
俺も、皆と同じ様に自分の席がある方へ向かい、ドアが開いて先生が入って来るギリギリの時に着席する。
先〔えっと…では授業を開始致します〕
そう言えば…結局、優里亜のやつ戻って来なかったな。俺は、改めて理事長に苛つきながらも目の前に居る先生へと目線を移した。
2時限目前の休み時間
手〔えっ!?嘘、婚約者なの?〕
如〔しーっ!皆には黙ってんだから〕
俺は、手越と一緒に廊下の方を歩いている。向かう先は勿論保健室。だが、正直言って保健室が何処にあるか検討がつかない。けれど、先輩達や先生のおかげで、なんとか保健室が近くにある廊下の まで来る事が出来た。
そんな保健室が近くにある静かな廊下で、手越が大声を出すもんだから、俺は誰かに聞こえて居ないか心配でたまらなかった。
手〔良いなぁ!なんか、憧れるっ〕
如〔クスッ、でも手越も彼氏さんがいるんでしょ?〕
俺が問いかけると、まぁねとばかりに両頬に両手をおいてコクンと静かに頷く。そして、隠しているつもりだと思うが、元々淡い桃色の頬が、際立って桃色になっている。
彼女と、1時限目前の休み時間の時に少し聞いた話では、此処西櫻高校に彼氏がいるらしく、彼氏と同じ学校に通いたいが為に努力して、この学校に入学してきたらしい。だからこそ、体育館で理事長の話を聞いた時、ショック過ぎて立って居たら危うく倒れるところだったという。
手〔あっ、此処だね~保健室って〕
旧校舎の人通りの少ない廊下にあり、空き教室の隣にある保健室は、出入り口からして、何処か古めかしい様な感じがして、また寂しそうな雰囲気が漂っていた。
俺と手越はお互い、何方かがドアを開くかで待っていたが、俺が意を決してドアを開ける事にした。
如〔失礼します!〕
キィーと、予想通りの古いドア独特の音が出る。どんどん外側へと開く毎に開けていく保健室内を俺達は、隈なく見た。だが、其処には優里亜らしき人物は居なかった。ただ、保健室にある机を囲む様に置かれた椅子に、若い男女2人が座って居た。
理〔おっ、如月君じゃないか~♪しかも、女子生徒を連れて来て…どうしたの?〕
又〔もしかして、怪我とかしたの?〕
俺は今、1番会いたくない人と会ってしまった様な気がする。だが、理事長が嫌いだからとかではない。むしろ、理事長の事は尊敬している。だけど、優里亜の事があって、理事長とは現在、気不味い関係だった。
如〔理事長、優里亜は?〕
理〔ん?優里亜ちゃんな〕
如〔優里亜ちゃん…?〕
理事長が軽々しく優里亜の事をちゃん付けで言った事に驚き、理事長の発言を遮ってしまう。だが、おかしい。ほんの1時間程前までは、理事長は優里亜の事を苗字呼びで、しかも君付けで呼んでいたはず。
…気付けば、理事長はまた笑っていた。理事長室で人を見下す様に馬鹿にした様な感じで笑っていた時と同じ様に。
理〔あーごめん、ごめん♪優里亜君とはねー、結構仲良くなれたもんだからついつい♡〕
最後のハートは、本当にいらないと思う。
…とにかく、内気な優里亜が簡単に理事長の心を開いたとは思えない。だけど、俺が知らない間に、理事長と優里亜の関係は少しでも深い物になってしまったのかもしれない。
俺は、よく嫉妬されていた方だからあんまりわからないけど、これは嫉妬?
…でも、嫉妬は人を信じきれていないから出る感情のはず。俺は、優里亜を信じているっ。皆からすれば、綺麗事にしか聞こえないかもしれないけど。本当に、こればかりは本気だ。
手〔…如月、大丈夫?〕
俺の制服を引っ張りながら、心配そうに言う手越。俺は、心配されるくらい顔色か雰囲気が悪いのだろうか?
如〔…大丈夫!優里亜は、教室帰ったみたいだし、俺らも帰ろっか〕
手〔…そうだね…って、何これ~!?〕
スタスタと、何かに興味をそそられたのか、保健室内に俺を御構い無しに入る手越。そんなに、驚くなんて…何が気になったのだろうか?
手〔うわぁ!この模型面白いw〕
悪い。手越…俺にはそれが、そんなに興味をそそられた理由がよく分からない。というか、早くしないと授業開始しちゃう気がするのだが
如〔おいっ、そろそろいくぞ〕
声をかけるだけでは言う事を聞かなかった為、バシッと手越の手を掴む。手越は、これには流石に驚き反応して、此方の方を見てくれる。これで、やっと帰れる。だが、そう思っていたのが甘かった。
理〔ちょいっ、其処!手を離しなっ!〕
手〔!?〕
今の理事長の大声に驚いた手越が、その模型から手を離してしまい、危うく落としそうになる。いや、と言うより手越は勘違いをしたようだ。
如〔手越、多分お前の手を離せって意味じゃなくて、俺がお前の手を離せっていう意味だと思う…〕
理〔その通りっ、気持ちがなかったとしても、そういう行為は一切禁じるからね~〕
離しなとばかりに、俺の腕に触れる理事長。否定する暇さえもなかった為、俺は理事長の言う通り手を離した。だけど、何故か理事長が俺の腕に触れた時に、感じてはいけないはずの暖かみと、心臓が高鳴るのを身に覚えてしまう。おかしい。男の理事長に、こんな感情をもってしまうなんて。
如〔理事長…〕
理〔ん?何~〕
俺は、身長差がそこまでない理事長の顔をわざわざ覗き込む様に言う。これには、理事長も俺が言いたい事が真剣な内容だと気付いてくれたらしい。
如〔今週で暇な日ってあります?〕
暫く、俺と理事長は見つめ合っていた。初めてかもしれない。俺達が睨み合わずに目と目をちゃんと見つめ合う事が出来たのは。
理〔んー…明日の放課後なら空いているよ♡〕
やっぱり♡は、いらないけど嬉しい。理事長が空いている時があるなんて。俺は、少し喜びをあらわにした後、恐る恐る聞いた。
如〔その時、理事長室で話せますか?〕
理〔勿論♪待ってるよ~〕
もうすぐ、鐘がなってしまうであろう。だけど、もう少しで良い。鐘が鳴るのが遅くなってほしい。
廊下での帰り道、俺は優里亜が居なくてショックな気持ちで帰る予定だったはずなのに、何故か気分は向上していた。こんな気持ちを思ってしまうなんて…やっぱり…いや、今は考えないでおこう…
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