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3月3日、ひなまつりだけど好き。
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笹倉さんから転勤を打ち明けられた二日後。
残業中に一息つこうと、またまた私は休憩ブースにいた。
今日はひなまつりだ。
男女のイベントとしては弱いが、さっきコンビニのレジ横で可愛いひなあられを見かけたので買ってみた。
笹倉さんにあげようと思って。
本当はモノじゃなくて、思いを伝えたいけど、どうしていいか悩む。
目の下のくまが目立ってる気がする。
本当に寝不足になりかけている。
はあ……とついたため息があくびに変わったその時、人が入ってきた。
「あ、やっぱりいた」
「さ、笹倉さん!」
慌てて大口を隠して立ち上がった。
笹倉さんは背が高いから見上げなければならない。
「これあげる」
と、笹倉さんが小さな包みを差し出した。
「あ! 私も、笹倉さんにあげようと思って、これ……一緒でしたね」
差し出したのは全く同じひなあられ。
二人で顔を見合わせる。
「俺にくれんの?」
「はい……」
大きな手のひらの上に包みを置く。
男らしいけど、きれいな手。
このままこの手を握ってしまいたい衝動に駆られる。
「じゃ、これ受け取って。同じだけど」
笹倉さんからのひなあられを両手で受け取る。
胸がいっぱいで顔が見られない。
けど……。
「ありがとうございます。嬉しいです」
「なんか久住さんが好きそうだと思って。こういう菱餅色な」
菱餅色……。
パステルカラーは好きだ。
ピンクも緑も。
笹倉さんのことはもっと好き。
「さ……笹倉さんの彼女は幸せですね」
声が上ずったけどそのまま続けた。
笹倉さんがびっくりした顔で私を見ている。
「え? 俺彼女いないよ」
そう、だよね。知ってる……。
バクバクと心臓がうるさくなってきた。
ここで告げようか、告げまいか。
頭がぐちゃぐちゃになりそうだけど、たぶんもう今しかない。
「……じゃあ、じゃあ、私が彼女になりたいです……」
膝が震えている。
笹倉さんの顔が見られない。
今きっと耳まで赤くて爆発しそう。
断られる、かな。
何か言って……!
耐えられない。
少しの沈黙の後、笹倉さんが口を開いた。
残業中に一息つこうと、またまた私は休憩ブースにいた。
今日はひなまつりだ。
男女のイベントとしては弱いが、さっきコンビニのレジ横で可愛いひなあられを見かけたので買ってみた。
笹倉さんにあげようと思って。
本当はモノじゃなくて、思いを伝えたいけど、どうしていいか悩む。
目の下のくまが目立ってる気がする。
本当に寝不足になりかけている。
はあ……とついたため息があくびに変わったその時、人が入ってきた。
「あ、やっぱりいた」
「さ、笹倉さん!」
慌てて大口を隠して立ち上がった。
笹倉さんは背が高いから見上げなければならない。
「これあげる」
と、笹倉さんが小さな包みを差し出した。
「あ! 私も、笹倉さんにあげようと思って、これ……一緒でしたね」
差し出したのは全く同じひなあられ。
二人で顔を見合わせる。
「俺にくれんの?」
「はい……」
大きな手のひらの上に包みを置く。
男らしいけど、きれいな手。
このままこの手を握ってしまいたい衝動に駆られる。
「じゃ、これ受け取って。同じだけど」
笹倉さんからのひなあられを両手で受け取る。
胸がいっぱいで顔が見られない。
けど……。
「ありがとうございます。嬉しいです」
「なんか久住さんが好きそうだと思って。こういう菱餅色な」
菱餅色……。
パステルカラーは好きだ。
ピンクも緑も。
笹倉さんのことはもっと好き。
「さ……笹倉さんの彼女は幸せですね」
声が上ずったけどそのまま続けた。
笹倉さんがびっくりした顔で私を見ている。
「え? 俺彼女いないよ」
そう、だよね。知ってる……。
バクバクと心臓がうるさくなってきた。
ここで告げようか、告げまいか。
頭がぐちゃぐちゃになりそうだけど、たぶんもう今しかない。
「……じゃあ、じゃあ、私が彼女になりたいです……」
膝が震えている。
笹倉さんの顔が見られない。
今きっと耳まで赤くて爆発しそう。
断られる、かな。
何か言って……!
耐えられない。
少しの沈黙の後、笹倉さんが口を開いた。
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