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3月5日、夜。
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その日は残業になってしまったけど、笹倉さんは私よりも残っていて、私は一人駅前の喫茶店で待っていた。
レトロなカップに入ったコーヒーを飲み、時間を確認する。
やっぱり、転勤前ともなると引継ぎがたくさんあるのだろう。
今日は金曜日だしいくらでも待てる。
今から笹倉さんに会えると思ったら、いくらでも……。
すると笹倉さんから終わったとLINEがあった。私は急いで店を出て、待ち合わせ場所まで急いだ。
駅裏側を利用する社内の人間は少なく、そこで待ち合わせることになっていた。
「――あ、笹倉さん!」
姿を見つけて手を振ると、息を切らせた様子の笹倉さんがこちらを見た。
「ごめん、待たせちゃったな」
「いえ、そんなにです。待ってたお陰でおいしいコーヒー飲めましたから」
「ははっ。いいな。前向き」
思わず褒めてもらって頬が赤くなる。けれど、笹倉さんはそれには気付いてないんだろう。
顔が熱い……。
笹倉さんは構わず話を始めた。
「コーヒーおいしかった? どこで待ってたの?」
「駅前のスワンですよ。落ち着いてて好きなんです。久しぶりに行きました。ワッフルも食べたかったけど、時間ないかなって思って……」
「じゃ、今度行こう。ワッフルごちそうするよ」
……優しい。
二人で歩きながら、肩が触れ合って、笑い合って。
話の核心には触れないけれど、とても幸せな空気で。
ふと、会話が途切れた時、笹倉さんが私を抱きしめた。
「笹倉さ……」
「昨日の話だけど……俺の彼女になってくれる?」
コート越しにも、強い鼓動が伝わる。
私もドキドキしてるから、この鼓動が笹倉さんなのか、私なのかわからないほど。
でも、ちゃんと伝えなきゃ。
私は笹倉さんの胸の中で答えた。
「私を……笹倉さんの彼女にしてください。好きです……」
笹倉さんの腕に力が籠り、ぎゅうっと抱きしめられながら耳元で囁かれる。
「俺も好きだよ。久住さんのことずっと好きだったよ」
信じられなくて、笹倉さんの背中に手を回してぎゅうっとしがみついたら、柔らかな唇で優しく塞がれて目を閉じた。
レトロなカップに入ったコーヒーを飲み、時間を確認する。
やっぱり、転勤前ともなると引継ぎがたくさんあるのだろう。
今日は金曜日だしいくらでも待てる。
今から笹倉さんに会えると思ったら、いくらでも……。
すると笹倉さんから終わったとLINEがあった。私は急いで店を出て、待ち合わせ場所まで急いだ。
駅裏側を利用する社内の人間は少なく、そこで待ち合わせることになっていた。
「――あ、笹倉さん!」
姿を見つけて手を振ると、息を切らせた様子の笹倉さんがこちらを見た。
「ごめん、待たせちゃったな」
「いえ、そんなにです。待ってたお陰でおいしいコーヒー飲めましたから」
「ははっ。いいな。前向き」
思わず褒めてもらって頬が赤くなる。けれど、笹倉さんはそれには気付いてないんだろう。
顔が熱い……。
笹倉さんは構わず話を始めた。
「コーヒーおいしかった? どこで待ってたの?」
「駅前のスワンですよ。落ち着いてて好きなんです。久しぶりに行きました。ワッフルも食べたかったけど、時間ないかなって思って……」
「じゃ、今度行こう。ワッフルごちそうするよ」
……優しい。
二人で歩きながら、肩が触れ合って、笑い合って。
話の核心には触れないけれど、とても幸せな空気で。
ふと、会話が途切れた時、笹倉さんが私を抱きしめた。
「笹倉さ……」
「昨日の話だけど……俺の彼女になってくれる?」
コート越しにも、強い鼓動が伝わる。
私もドキドキしてるから、この鼓動が笹倉さんなのか、私なのかわからないほど。
でも、ちゃんと伝えなきゃ。
私は笹倉さんの胸の中で答えた。
「私を……笹倉さんの彼女にしてください。好きです……」
笹倉さんの腕に力が籠り、ぎゅうっと抱きしめられながら耳元で囁かれる。
「俺も好きだよ。久住さんのことずっと好きだったよ」
信じられなくて、笹倉さんの背中に手を回してぎゅうっとしがみついたら、柔らかな唇で優しく塞がれて目を閉じた。
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