2 / 6
好きになっちゃって困る
しおりを挟む
昨日、あれから雨が上がって、ギクシャクしたまま駅で別れたんだけど。
課長の発言は本当だったのかな。
そもそも、あれを本気と捉えていいのかな。
恥ずかしながら、一晩明けたら課長を想うだけで胸がきゅんとしてしまうようになってしまった。
元々課長に対して好意は持っていた。それは自覚している。
でも……。
「竹内さん、おはよう」
「ひっ! おはようございますっ、課長」
駅から会社のビルまでの道中、課長に声を掛けられた。
もう昨日と違って見える。こんなにかっこいい人だったっけ。
「あっ、鞠ちゃーん! 笹見課長、おはようございまーす」
背後から同僚の須田君が声を掛けてきた。
課長と二人ではなくなって残念なようなほっとしたような気持ちで、私たちは三人で歩き出した。
須田君と課長が仕事の話をしているから、私は少し後ろにずれて歩く。
改めてこうして見ると、課長はやっぱり背が高い。知ってはいたけど。
昨日の課長の残業後の発言をまた思い出して一人赤面する。
くうう、ギャップがいい意味でひどい。
マイペース系というか不思議系の男性から発される好意は、心の深い部分に刺さる。
私も……私も、課長の好きなところならある。
困っていたら助けてくれるところとか、飲み物買いに行ってくれたところとか、目が合うと意外と優しく微笑むところとか。
理屈っぽいところも、頭がよさそうでいつの間にかかわいいかもしれないと思ってるし……。
そう伝えたら、課長はどんな顔するのだろうか。
思い浮かべるだけで胸が苦しくなる。
「っはあー……」
午後9時前。
またもや私は一人、オフィスに残っている。
マスクの中でため息を漏らす。
今週は仕方ないと思ってはいたけど今日も残業。
業務上、他の同僚とは残業になる期間が違うから止むを得ない。
そういえば昨日のアイスコーヒーはおいしかったな。買いに出ようかな。
カタカタとキーボードを鳴らして、窓の外を見た。
今日は夕方から雨だそうだ。
うーんと伸びをしたら、オフィスのドアが開いた。
課長が戻ってきた。
「……お、お疲れ様です」
まだ社内にいると思っていたけど……いたんだ。
昨日と一転して、しゃきっと背筋を伸ばす。
同僚たちがいると平気だけど、二人きりになると緊張する。
「え、今日も残ってるの?」
課長は昨日のことなど何もなかったような顔をしている。
「はい。今週はそんな感じです。でも昨日よりは早く帰れそうなので」
「手伝ってあげたいけど、今日は俺も捌かなきゃいけないのがあるからなぁ」
「あ、気にしないでください! 課長は課長のお仕事をしてください」
「そうする。あと一時間以内には終わらせるから、竹内さんもそれまで頑張って」
はい、と返事してキーボードを打つ。
早めに終わらせて昨日のお礼がしたいなあ。
コーヒー買いに出たいけど、それで仕事が遅れるのもな。
静かなオフィスに、カタカタとキーを叩く音と、カチカチと心地よいクリック音が響く。
いつもより集中できてすぐに終わり、課長の席を確かめたら課長もちょうど終わったところだった。
「終わった?」
「はい、帰ります」
「俺も」
「……あのっ、課長! 一緒に帰りませんか?」
「ああ。俺は元々そのつもりだったけど」
そ、そうだったんだ。なんだか意気込んじゃって恥ずかしい。
今日は課長も傘を持っている。
私は昨日の折り畳み。課長の言う「女の子色」の。
「雨激しいなあ……」
またビルのエントランスで部長が空を見上げる。
今夜から本降りのようで風も強い。
私はバッグの中から折り畳み傘を出して広げた。
その瞬間突風が吹いて、心もとないピンクの三つ折り傘が簡単に折れ曲がる。
「えっ! きゃああ! 傘がー!」
「あー、ちょっと貸して」
咄嗟に課長が傘を取り、風に煽られないようにすぐに閉じてくれた。
この風で髪もぐしゃぐしゃ。スカートも濡れてる。
ちゃんとした傘持ってくればよかった……。
課長は慌てるそぶりもなく空を見上げている。
なんか私ってダメすぎない?
「すみません……課長にはご迷惑ばっかり……」
「え? 俺何か竹内さんに迷惑掛けられたっけ」
「昨日だって……残業、一緒に残ってもらって……」
「あーまあ。でも今日は俺は俺の仕事やってただけだけど。何を迷惑掛けられたっけ」
「……。そういやそうですね……。今日は違いましたよね……」
私が発言すればするほど言葉が滑る感じがして、最後はお互い黙ってしまった。
わーん。私の自意識過剰だったかな?
課長は無言で折り畳み傘を畳んでくれている。
「はい。畳んでみたけどなんか変かも。ちょっとぐしゃぐしゃになった」
と折れかけのピンクの傘を差し出す課長を見上げたら、課長もまっすぐに私を見下ろしていた。
「いえ、たぶんさっきので折れてますし、すみません、本当に……」
確かに、ちょっとぐしゃぐしゃに畳まれている傘を受け取りながら、もう瞳から視線が外せない。
「……あの、課長」
「ん?」
「私、課長のことすごく好きです……」
課長の瞳を見ていると、もうそれしか言えなかった。
課長の発言は本当だったのかな。
そもそも、あれを本気と捉えていいのかな。
恥ずかしながら、一晩明けたら課長を想うだけで胸がきゅんとしてしまうようになってしまった。
元々課長に対して好意は持っていた。それは自覚している。
でも……。
「竹内さん、おはよう」
「ひっ! おはようございますっ、課長」
駅から会社のビルまでの道中、課長に声を掛けられた。
もう昨日と違って見える。こんなにかっこいい人だったっけ。
「あっ、鞠ちゃーん! 笹見課長、おはようございまーす」
背後から同僚の須田君が声を掛けてきた。
課長と二人ではなくなって残念なようなほっとしたような気持ちで、私たちは三人で歩き出した。
須田君と課長が仕事の話をしているから、私は少し後ろにずれて歩く。
改めてこうして見ると、課長はやっぱり背が高い。知ってはいたけど。
昨日の課長の残業後の発言をまた思い出して一人赤面する。
くうう、ギャップがいい意味でひどい。
マイペース系というか不思議系の男性から発される好意は、心の深い部分に刺さる。
私も……私も、課長の好きなところならある。
困っていたら助けてくれるところとか、飲み物買いに行ってくれたところとか、目が合うと意外と優しく微笑むところとか。
理屈っぽいところも、頭がよさそうでいつの間にかかわいいかもしれないと思ってるし……。
そう伝えたら、課長はどんな顔するのだろうか。
思い浮かべるだけで胸が苦しくなる。
「っはあー……」
午後9時前。
またもや私は一人、オフィスに残っている。
マスクの中でため息を漏らす。
今週は仕方ないと思ってはいたけど今日も残業。
業務上、他の同僚とは残業になる期間が違うから止むを得ない。
そういえば昨日のアイスコーヒーはおいしかったな。買いに出ようかな。
カタカタとキーボードを鳴らして、窓の外を見た。
今日は夕方から雨だそうだ。
うーんと伸びをしたら、オフィスのドアが開いた。
課長が戻ってきた。
「……お、お疲れ様です」
まだ社内にいると思っていたけど……いたんだ。
昨日と一転して、しゃきっと背筋を伸ばす。
同僚たちがいると平気だけど、二人きりになると緊張する。
「え、今日も残ってるの?」
課長は昨日のことなど何もなかったような顔をしている。
「はい。今週はそんな感じです。でも昨日よりは早く帰れそうなので」
「手伝ってあげたいけど、今日は俺も捌かなきゃいけないのがあるからなぁ」
「あ、気にしないでください! 課長は課長のお仕事をしてください」
「そうする。あと一時間以内には終わらせるから、竹内さんもそれまで頑張って」
はい、と返事してキーボードを打つ。
早めに終わらせて昨日のお礼がしたいなあ。
コーヒー買いに出たいけど、それで仕事が遅れるのもな。
静かなオフィスに、カタカタとキーを叩く音と、カチカチと心地よいクリック音が響く。
いつもより集中できてすぐに終わり、課長の席を確かめたら課長もちょうど終わったところだった。
「終わった?」
「はい、帰ります」
「俺も」
「……あのっ、課長! 一緒に帰りませんか?」
「ああ。俺は元々そのつもりだったけど」
そ、そうだったんだ。なんだか意気込んじゃって恥ずかしい。
今日は課長も傘を持っている。
私は昨日の折り畳み。課長の言う「女の子色」の。
「雨激しいなあ……」
またビルのエントランスで部長が空を見上げる。
今夜から本降りのようで風も強い。
私はバッグの中から折り畳み傘を出して広げた。
その瞬間突風が吹いて、心もとないピンクの三つ折り傘が簡単に折れ曲がる。
「えっ! きゃああ! 傘がー!」
「あー、ちょっと貸して」
咄嗟に課長が傘を取り、風に煽られないようにすぐに閉じてくれた。
この風で髪もぐしゃぐしゃ。スカートも濡れてる。
ちゃんとした傘持ってくればよかった……。
課長は慌てるそぶりもなく空を見上げている。
なんか私ってダメすぎない?
「すみません……課長にはご迷惑ばっかり……」
「え? 俺何か竹内さんに迷惑掛けられたっけ」
「昨日だって……残業、一緒に残ってもらって……」
「あーまあ。でも今日は俺は俺の仕事やってただけだけど。何を迷惑掛けられたっけ」
「……。そういやそうですね……。今日は違いましたよね……」
私が発言すればするほど言葉が滑る感じがして、最後はお互い黙ってしまった。
わーん。私の自意識過剰だったかな?
課長は無言で折り畳み傘を畳んでくれている。
「はい。畳んでみたけどなんか変かも。ちょっとぐしゃぐしゃになった」
と折れかけのピンクの傘を差し出す課長を見上げたら、課長もまっすぐに私を見下ろしていた。
「いえ、たぶんさっきので折れてますし、すみません、本当に……」
確かに、ちょっとぐしゃぐしゃに畳まれている傘を受け取りながら、もう瞳から視線が外せない。
「……あの、課長」
「ん?」
「私、課長のことすごく好きです……」
課長の瞳を見ていると、もうそれしか言えなかった。
10
あなたにおすすめの小説
ナイトプールで熱い夜
狭山雪菜
恋愛
萌香は、27歳のバリバリのキャリアウーマン。大学からの親友美波に誘われて、未成年者不可のナイトプールへと行くと、親友がナンパされていた。ナンパ男と居たもう1人の無口な男は、何故か私の側から離れなくて…?
この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。
一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。
青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。
その肩書きに恐れをなして逃げた朝。
もう関わらない。そう決めたのに。
それから一ヶ月後。
「鮎原さん、ですよね?」
「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」
「僕と、結婚してくれませんか」
あの一夜から、溺愛が始まりました。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ブラック企業を退職したら、極上マッサージに蕩ける日々が待ってました。
イセヤ レキ
恋愛
ブラック企業に勤める赤羽(あかばね)陽葵(ひまり)は、ある夜、退職を決意する。
きっかけは、雑居ビルのとあるマッサージ店。
そのマッサージ店の恰幅が良く朗らかな女性オーナーに新たな職場を紹介されるが、そこには無口で無表情な男の店長がいて……?
※ストーリー構成上、導入部だけシリアスです。
※他サイトにも掲載しています。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる