異世界で異分子の俺は陰に干渉する

Pisutatio

文字の大きさ
18 / 19

18.ランキング戦

しおりを挟む




あれから目まぐるしい1週間を過ごし、今日はついにランキング戦初日。
俺達は、ランキング戦が行われる競技場へと向かっていた。
ランキング戦は、普段使っている訓練場ではなく街にある競技場でやるらしい。
競技場が姿を表したと思ったら、中から歓声が溢れ出ている。
観客席には、街中から騎士団を見に来る人達が集まり、盛り上がりをみせている。
こんな、街中を巻き込んでの行事だったの?
だから、いつもはしない騎士団の制服なのか。
訓練場では皆、好きな動きやすい服装で活動しているが、今日は制服着用の指示が出ていた。
着慣れない制服ではあるが、動きづらさは特にない。そうだよな、騎士団の制服なのに闘えなきゃ意味がないもんな。
俺がランキング戦の規模のデカさに驚きを隠せないでいるとレオが口を開いた。

「そんなに緊張しなくても大丈夫よ。最初はどうなることかと思ってたけど、魔力のコントロールができるようになってからは嘘のように上達したじゃない。」
「ああ。魔力のコントロールできなかったって嘘だったんじゃねーかと思うくらいだぜ。」

俺が人の多さで緊張しているのだと勘違いしたらしい。

「普通はあんなはやく魔法覚えられないのよ!?ほんとは前から魔法使えてたんでしょ!?」


魔法がない世界からきたのに、前から魔法を使えてたわけがない。前から使えていたのなら、今までの俺の苦労はなんだったんだ。魔力不足で倒れたり、グラディウス様に魔力を馴染ますのを手伝ってもらったり!いや、後者は苦労じゃなくご褒美だな。

「いやいや、2人の特訓の賜物だろ。」

「「はぁ~」」
2人して呆れたように、ため息をつく。



「これじゃ、必死に魔法を習得したアネーロが可哀想に思えてくるわ。」
「ほんとだよな、まさか、2つ同時に別属性を発現させるどころか、3つ以上、そしてその応用まで使いこなすんだからな。」
「2人の教え方が良かったんだよ。」

そう、俺は2人の特訓のお陰で魔法が使えるようになった。魔力のコントロールができるようになってから、俺は魔力が自分の手足のように思えた。俺がイメージしたように動き、出し入れできる。
1つ目の属性を発現してからは、早かった。2つ3つと全ての属性を発現させることができた。
レオが言っていたように、最初に発現させたときは魔力の構成とかイメージとかで脳が擦り切れるほど頭を使った。しかし、不思議なことに、その後はその魔力の使い方、回路を身体が元々知っていたかのように、スムーズに使えるようになっていた。身体が思い出したかのようだった。

「私より生徒の方が魔法の扱いがうまくなるなんて、私って教官とかのほうが向いてるのかしら。」

レオが1人で何か呟いている。
だが、そんなことお構い無しでフィジーは俺に顔を向ける。

「ったく。こいつは。」

そういうと、フィジーは俺の肩に腕を回したかと思えば、もう片方の手で頭を撫で回した。

「おっ、おい。」
「これで予選で負けるなんてことしたら、俺がぶん殴ってやるからな。決勝まであがってこいよ。」
「ああ、もちろんだ。」

「あら、ちょっと?私もいるんですけど?」
「フッ、そうだったな。3人で決勝トーナメントで会おう。」
「そうこなくっちゃ!」


俺達は、決勝トーナメントでの再会を約束し、各々の待機部屋へと向かった。
予選は、4つのブロックごとにトーナメント戦が繰り広げられる。1つのブロックに8名が振り分けられており、3回勝てばいいらしい。各ブロックで勝ち上がった4名と前回の上位3名が決勝トーナメントで闘うようだ。

俺はブロック2だから、もう少し時間がありそうだ。
競技場を探検がてら見て回ることにした。

待機部屋から出て、少し歩くと競技場の廊下や入口付近に屋台が多く出店しているのが見える。その様子は、元の世界のスポーツ観戦のときのようだった。色んな美味そうな食べ物の混ざった匂いが俺をお祭り気分にさせる。そんな気分になるのが、俺だけじゃないのは周りを見れば明らかだった。街の皆が楽しそうな笑顔を浮かべている。
沢山の人が入り乱れ、どんな人でも受け入れる環境がここにはあった。


ドンッ


俺は向こうからすごい勢いで歩いてくる人にぶつかった。
「っ、すまない。」
ぶつかった人に謝罪の言葉をかけるが、相手からはなんの反応もない。
目線をあげると、相手は体格からして男で黒いフードを被り、そこから覗く目は丸く見開き驚いている様子だった。

「お、お前は騎士団の…」

やっとなにか喋ったかと思いきや何やら俺が騎士団の団員ということに驚いているらしい。

「え?あぁ、そうだよ、俺は騎士団の団員。」

いつもなら、黒髪黒目で驚かれるが、今は騎士団の団員ということに驚いているらしい。
これが制服効果か?
黒髪黒目が目立たなくなるなら、俺ずっと制服着てようかな。
俺がアホなことを考えていると、男は焦ったようにあたふたしながら走っていった。


なんだったんだ?
俺が騎士団の団員に見えなかったのかな。お前なんか俺達が応援する騎士団じゃねーよってこと?俺ってそんな貧相に見えるのかな。
いや、違うか、騎士団の団員にぶつかってびっくりしたのかもしれない。
今日は騎士団のランキング戦なんだから、競技場に騎士団がいるのだって当たり前なのにな。
なにを驚いてるんだか。


…ん?騎士団の団員を見て慌てて逃げるってめちゃくちゃ怪しくね?
やましい事がないなら堂々とするよな?
俺は、さっきの男を追いかけようと思ったが、男の姿は見えなくなっていた。
何なんだ、前々からの胸騒ぎが一層大きくなる。


「どうしたの?」

後ろからの声が聞こえたと同時に、肩に重みが加わった。
その声がする方へ顔を向けると思いも寄らない人が立っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜

キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」 (いえ、ただの生存戦略です!!) 【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】 生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。 ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。 のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。 「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。 「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。 「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」 なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!? 勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。 捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!? 「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」 ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます! 元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

【完結済】虚な森の主と、世界から逃げた僕〜転生したら甘すぎる独占欲に囚われました〜

キノア9g
BL
「貴族の僕が異世界で出会ったのは、愛が重すぎる“森の主”でした。」 平凡なサラリーマンだった蓮は、気づけばひ弱で美しい貴族の青年として異世界に転生していた。しかし、待ち受けていたのは窮屈な貴族社会と、政略結婚という重すぎる現実。 そんな日常から逃げ出すように迷い込んだ「禁忌の森」で、蓮が出会ったのは──全てが虚ろで無感情な“森の主”ゼルフィードだった。 彼の周囲は生命を吸い尽くし、あらゆるものを枯らすという。だけど、蓮だけはなぜかゼルフィードの影響を受けない、唯一の存在。 「お前だけが、俺の世界に色をくれた」 蓮の存在が、ゼルフィードにとってかけがえのない「特異点」だと気づいた瞬間、無感情だった主の瞳に、激しいまでの独占欲と溺愛が宿る。 甘く、そしてどこまでも深い溺愛に包まれる、異世界ファンタジー

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

処理中です...