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7.ヒロインだったはずのエリス①
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なんで、なんで上手くいかないの?
エリスはイライラと爪を噛んだ。
少し離れたところにいるイザベルにどうしても近づくことができない。
近づこうとすると、絶対に誰かに邪魔をされる。
それは特定の誰かではなく、様々な人に邪魔される。
気がつけば、エリスの側には誰もいなくなった。
何人もの男子生徒に囲まれていたはずなのに、今は誰もいない。
エリスに強請られて、色んなプレゼントをしてくれていた男子生徒たちはなぜか学園に来なくなった。
元々、女子生徒には遠巻きにされてたから、本当にひとりぼっちだ。
学園入学直前に前世を思い出して、自分が乙女ゲームのヒロインだと気づいた時はニヤニヤが止まらなかった。
ありきたりなシンデレラストーリーだったけど、攻略対象たちのビジュアルが絶品で、彼らの甘い口説き文句が大好きだった。
一番のお気に入りはやっぱり王道の王子様。
宰相候補のインテリ腹黒のカリードが自分にだけデレるのもいいし、いずれは騎士団長になる実直な騎士に守られるのも捨てがたい。
その他にも攻略対象はいるけど、メインはこの三人で、地位もお金もある。
誰を攻略しようかウキウキしていたというのに。
入学式の日の転んだところをマリオンに助け起こしてもらうイベントが起きなかった。
それどころか、政略で結ばれたはずの婚約者の悪役令嬢イザベルと手を繋いで、頬を染める彼女を愛しそうに見つめていた。
カリードのイベントもライオネルのイベントも起きない。
徹底的に避けられてる。
エリスはヒロインなだけにすごくかわいい。
この華奢で可憐な容姿は庇護欲をくすぐるはずなのに、メインの三人は揃って塩対応なのだ。
それ以外の攻略対象者やモブの下位貴族の子息はチヤホヤしてくれるのに!
悪役令嬢が転生者で、断罪回避のためにあれこれ手を回すのもよくある話。
イザベルは転生者に違いない。
マリオンたちがイザベルをがっちりガードしていて、機会がない中、漸く話せた時に更に確信した。
悪役令嬢の言葉に反応したからね!
ただの当て馬のくせにヒロインに取って代わろうなんて、許せない。
そう思っていたのに、イザベルに全く近付くことができなくて文句を言うこともできない。
大体イザベルの妹だというフローラって何?
庇護欲を擽る可憐な容姿はキャラ被りじゃない!
下手したらヒロインの私より可愛いなんてあり得ない!
その上、ピアノが上手くて私から最優秀賞を掠め取っていった。
地団駄を踏んだが、どうにもならない。
フローラの可憐な容姿と柔らかな言葉遣い、上品な所作で完全に皆を虜にしてしまった。
マリオンたちに避けられていて、元々攻略できそうにもなかった上に、最優秀賞が獲れなかった時点で、王子や上位貴族であるメインどころの三人と結ばれるのは難しくなった。
ならば次点の攻略対象のジェイドをと思ってもナルトリア公爵令嬢に対する不敬な態度が目に余ると拒否されてしまった。
元々、モブの男子生徒とは違ってジェイドの心を完全には掴みきれていなかった。
好感度アップに欠かせない手作りのお菓子は甘いものが苦手だというジェイドに食べてもらえなかったのだ。
それならそのまた次点のと思っても、今や側には一人もいない。
かっこいい男の子に囲まれて、きゃっきゃっうふふしてるはずだった学園は、今や大層居心地が悪い場所に変わってしまった。
「エリス!あんたしくじったのね!」
面白くない学園を休んで、自宅のベッドでゴロゴロしていると母親のカトリーヌが憤怒の表情で部屋に乗り込んできた。
「顔だけは私に似てるから、イケるかもと思った私がバカだったわ。男を誑かすことすらできないのね」
そこにはお菓子を一緒に作ってくれる優しかった母の面影はどこにもない。
自分とそっくりだと言われる母のその様子を呆然と見つめることしかできない。
「エリスはかわいいから、きっとモテるわ。高位貴族、いえ、王子様にだって見初められるかも」
「王子様のお心を掴めるといいわね」
「王族に嫁ぐのなら、側近の方たちにも好かれないと大変よ」
「支えてもらわないといけないんだから、臣下も大切にしないとね」
そう言って、エリスが男子生徒から好かれるように色々アドバイスをしてくれた。
その甲斐なく誰とも上手くいっていないのは確かだけど、何をそんなに怒っているのかさっぱり分からない。
ベッドから起き上がって、唖然としているとあちこちから怒声と荒々しい足音があちらこちらから聞こえてきた。
それから、母親と共にあっという間に捕らえられて、牢に入れられた。
いつの間にか父親も隣の牢に入れられている。
罪を犯した貴族が入れられる貴族牢ではなく、ジメジメした地下牢だ。
「何これ。何これ。何これー!?ここはヒロインを虐めた罪でイザベルが入れられるとこじゃない!」
突然のバッドエンドに全く納得いかなくてガタガタと鉄格子を揺らした。
どれだけ叫んでも誰も助けてくれない。
それどころか、母親にも牢番にも「うるさい」と怒鳴られた。
しばらく会っていなかった父親は痩せこけていて、俯いて一人でぶつぶつと何かを呟いている。
気持ち悪い。
極力父の方を見ないようにして考える。
こうなったのはきっとイザベルのせいに違いない。
イライラと爪を噛むものの、状況は悪化する一方だった。
牢から連れ出された母はそれっきり戻ってくることはなかったし、父は仰向けに寝転がり、空を見つめたまま動くことがなくなった。
生きているかどうかもよく分からない。
心のどこかで私はヒロインなんだからきっと大丈夫だと思っていたが、いよいよ自分がどうなるのか不安になってきた頃、悪役令嬢イザベルの妹のフローラがマリオンとライオネルを連れてやって来た。
エリスはイライラと爪を噛んだ。
少し離れたところにいるイザベルにどうしても近づくことができない。
近づこうとすると、絶対に誰かに邪魔をされる。
それは特定の誰かではなく、様々な人に邪魔される。
気がつけば、エリスの側には誰もいなくなった。
何人もの男子生徒に囲まれていたはずなのに、今は誰もいない。
エリスに強請られて、色んなプレゼントをしてくれていた男子生徒たちはなぜか学園に来なくなった。
元々、女子生徒には遠巻きにされてたから、本当にひとりぼっちだ。
学園入学直前に前世を思い出して、自分が乙女ゲームのヒロインだと気づいた時はニヤニヤが止まらなかった。
ありきたりなシンデレラストーリーだったけど、攻略対象たちのビジュアルが絶品で、彼らの甘い口説き文句が大好きだった。
一番のお気に入りはやっぱり王道の王子様。
宰相候補のインテリ腹黒のカリードが自分にだけデレるのもいいし、いずれは騎士団長になる実直な騎士に守られるのも捨てがたい。
その他にも攻略対象はいるけど、メインはこの三人で、地位もお金もある。
誰を攻略しようかウキウキしていたというのに。
入学式の日の転んだところをマリオンに助け起こしてもらうイベントが起きなかった。
それどころか、政略で結ばれたはずの婚約者の悪役令嬢イザベルと手を繋いで、頬を染める彼女を愛しそうに見つめていた。
カリードのイベントもライオネルのイベントも起きない。
徹底的に避けられてる。
エリスはヒロインなだけにすごくかわいい。
この華奢で可憐な容姿は庇護欲をくすぐるはずなのに、メインの三人は揃って塩対応なのだ。
それ以外の攻略対象者やモブの下位貴族の子息はチヤホヤしてくれるのに!
悪役令嬢が転生者で、断罪回避のためにあれこれ手を回すのもよくある話。
イザベルは転生者に違いない。
マリオンたちがイザベルをがっちりガードしていて、機会がない中、漸く話せた時に更に確信した。
悪役令嬢の言葉に反応したからね!
ただの当て馬のくせにヒロインに取って代わろうなんて、許せない。
そう思っていたのに、イザベルに全く近付くことができなくて文句を言うこともできない。
大体イザベルの妹だというフローラって何?
庇護欲を擽る可憐な容姿はキャラ被りじゃない!
下手したらヒロインの私より可愛いなんてあり得ない!
その上、ピアノが上手くて私から最優秀賞を掠め取っていった。
地団駄を踏んだが、どうにもならない。
フローラの可憐な容姿と柔らかな言葉遣い、上品な所作で完全に皆を虜にしてしまった。
マリオンたちに避けられていて、元々攻略できそうにもなかった上に、最優秀賞が獲れなかった時点で、王子や上位貴族であるメインどころの三人と結ばれるのは難しくなった。
ならば次点の攻略対象のジェイドをと思ってもナルトリア公爵令嬢に対する不敬な態度が目に余ると拒否されてしまった。
元々、モブの男子生徒とは違ってジェイドの心を完全には掴みきれていなかった。
好感度アップに欠かせない手作りのお菓子は甘いものが苦手だというジェイドに食べてもらえなかったのだ。
それならそのまた次点のと思っても、今や側には一人もいない。
かっこいい男の子に囲まれて、きゃっきゃっうふふしてるはずだった学園は、今や大層居心地が悪い場所に変わってしまった。
「エリス!あんたしくじったのね!」
面白くない学園を休んで、自宅のベッドでゴロゴロしていると母親のカトリーヌが憤怒の表情で部屋に乗り込んできた。
「顔だけは私に似てるから、イケるかもと思った私がバカだったわ。男を誑かすことすらできないのね」
そこにはお菓子を一緒に作ってくれる優しかった母の面影はどこにもない。
自分とそっくりだと言われる母のその様子を呆然と見つめることしかできない。
「エリスはかわいいから、きっとモテるわ。高位貴族、いえ、王子様にだって見初められるかも」
「王子様のお心を掴めるといいわね」
「王族に嫁ぐのなら、側近の方たちにも好かれないと大変よ」
「支えてもらわないといけないんだから、臣下も大切にしないとね」
そう言って、エリスが男子生徒から好かれるように色々アドバイスをしてくれた。
その甲斐なく誰とも上手くいっていないのは確かだけど、何をそんなに怒っているのかさっぱり分からない。
ベッドから起き上がって、唖然としているとあちこちから怒声と荒々しい足音があちらこちらから聞こえてきた。
それから、母親と共にあっという間に捕らえられて、牢に入れられた。
いつの間にか父親も隣の牢に入れられている。
罪を犯した貴族が入れられる貴族牢ではなく、ジメジメした地下牢だ。
「何これ。何これ。何これー!?ここはヒロインを虐めた罪でイザベルが入れられるとこじゃない!」
突然のバッドエンドに全く納得いかなくてガタガタと鉄格子を揺らした。
どれだけ叫んでも誰も助けてくれない。
それどころか、母親にも牢番にも「うるさい」と怒鳴られた。
しばらく会っていなかった父親は痩せこけていて、俯いて一人でぶつぶつと何かを呟いている。
気持ち悪い。
極力父の方を見ないようにして考える。
こうなったのはきっとイザベルのせいに違いない。
イライラと爪を噛むものの、状況は悪化する一方だった。
牢から連れ出された母はそれっきり戻ってくることはなかったし、父は仰向けに寝転がり、空を見つめたまま動くことがなくなった。
生きているかどうかもよく分からない。
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