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あなたは私の救い主【連載中】
ウォルトとコリン
「電報です」
ある日、ウォルトの元に電報が届いた。
差出人は頭文字だけだったが、内容から誰が送り主なのかはすぐに解った。
「想像より早かったな」
そこには、ウォルトの元婚約者セシリーが、ウォルトに隠れて体の関係を持っていた乳兄弟の兄ネイトを殺害したと書かれていた。
「庶民の生活なんて、できるはずないだろう」
ウォルトがセシリーとネイトの関係に気付いたのは、すぐだった。婚約者として顔合わせの席に、護衛としていたネイト。
二人で目配せしあい、さりげなさを装っているが、あからさまなボディータッチ。
それで隠しているつもりなのか?と、思わず聞きたくなったほど。
両親が同席している場ですら、そんな行動を取る二人なのだから、二人きりで遭うときはもっと酷かった。
すぐに二人で物陰に隠れて腰を寄せ合い、深いキスをする。
「あの護衛の唇、いっつも口紅がついてたなあ。あれでマウンティングしているつもりだったんだろうが、阿婆擦れと乳繰り合っている姿の何処が……」
セシリーについてウォルトは知らないが、ネイトは確実にウォルトに対して「セシリーは俺の女だ」と主張していた。
そんなネイトに盲目なセシリーを諭してやる義理など、ウォルトにはなかった。
――――――
乳兄弟で恋人のネイトとセシリーしか解らない会話で盛り上がっているのを、白けた目で眺め、セシリーの実家を後にする。
そんな面会が何度か行われ、無為な時間を過ごしたなとセシリーの実家を出て、
「気分転換に、少し歩く」
待っていた馬車を先に帰らせ、ゆっくりと歩を進める。
ウォルトが歩いて帰ると言ったのは気分転換の意味もたしかにあったが、目的は邸を出る時からウォルトの様子をうかがっている女性の存在。
ウォルトに話し掛けたいのだろうと気付いたので、少し歩くことにした。
もちろん襲われる可能性も少しは頭にあり、腰に忍ばせている護身用の短剣に手を伸ばしていたが。
「少々よろしいでしょうか?」
邸から少し離れたところで、ウォルトはその女性から声を掛けられた。
女性はマチルダと名乗り、
「貴方様にご無礼を働いている騎士ネイトの、一応許嫁です」
ネイトの婚約者だと名乗った。
自分にマウンティングしてくるネイトに対して、鬱陶しさはあったが、彼の素性を調べるつもりはなかったので、婚約者がいることに驚いた。
「そうか」
そしてマチルダはセシリーの母親からの手紙を差し出した。
内容は「秘密理に会って話をしたい。そちらの両親にも内緒で」というものだった。
「了承した」
マチルダは手紙を受け取り頭を下げて、
「馬車を用意いたしましょうか?」
「では、お願いしようか」
「少々お待ちください」
邸へと引き返し、馭者となってウォルトの元に戻ってきた。
そしてセシリーの母親と、弟と対面の日。
「アレが申し訳ございません」
ウォルトの元にセシリーの母親と弟が謝罪しにきた。そしてセシリーが父親の浮気で産まれた子だと知った。
「セシリーにも、何度か説明したつもりなのですが、あの子はあの子の母親だった私の姉にそっくりで、自分が聞きたいことしか聞かないもので」
ウォルトには思い当たるところが、いくつもあった。
なにより、そっくりな同期がいた。
身分だけは同じだが、あとは全く違うブライアン。同格なので、同世代同士として交流があったが、ブライアンは本当に人の言うことを聞かなかったし、思い込みも激しかった。
ブライアンは勉強は大得意だったが、勉強がとてもよく出来るだけで、賢さとは無縁だった。
とにかく勉強はできる。だが既存の知識を吸収することに長けているだけで、それを応用したり発展させたり、新たなものを生み出す基礎にするようなことは、一切できなかった。
「ああ……分かります。ちなみに、セシリーの産みの親は?」
(親が持て余して、外国に送ったと聞いたときは、胸をなで下ろした)
ブライアンが貴族として使い物にならないことを、いち早く理解していた彼の両親は「そのような性質でもいい」という外国の貴族の娘婿にと、送り出した……というのを、風の噂で聞いていた。
「妹の夫に手を出すような出戻りなど、価値がないどころか、足を引っ張るだけだと」
セシリーの産みの親は、セシリー出産後に両親の命令によって毒殺された。
セシリーの父親は、浮気相手が毒殺される姿を見て以来、浮気はしていないらしいが、入り婿なのだから当然だろうとウォルトは思った。
「セシリーについては、事前にそちらに説明したのですが、お聞きになって?」
「聞いていませんね」
両親はセシリーの出生について知らされていたが、ウォルトには教えなかった。sono理由は、政略などではなく、
「貴方のお父様も、あの女に憧れていたらしいのよ。だからその娘と息子を結婚させたいと」
父親の身勝手な思慕だった。
セシリーの出生を聞き、そしてセシリーの異母弟コリンから、
「このままでは、貴方が不幸になってしまいます。だから、逃げませんか?」
思わぬ提案を持ちかけられた。
ある日、ウォルトの元に電報が届いた。
差出人は頭文字だけだったが、内容から誰が送り主なのかはすぐに解った。
「想像より早かったな」
そこには、ウォルトの元婚約者セシリーが、ウォルトに隠れて体の関係を持っていた乳兄弟の兄ネイトを殺害したと書かれていた。
「庶民の生活なんて、できるはずないだろう」
ウォルトがセシリーとネイトの関係に気付いたのは、すぐだった。婚約者として顔合わせの席に、護衛としていたネイト。
二人で目配せしあい、さりげなさを装っているが、あからさまなボディータッチ。
それで隠しているつもりなのか?と、思わず聞きたくなったほど。
両親が同席している場ですら、そんな行動を取る二人なのだから、二人きりで遭うときはもっと酷かった。
すぐに二人で物陰に隠れて腰を寄せ合い、深いキスをする。
「あの護衛の唇、いっつも口紅がついてたなあ。あれでマウンティングしているつもりだったんだろうが、阿婆擦れと乳繰り合っている姿の何処が……」
セシリーについてウォルトは知らないが、ネイトは確実にウォルトに対して「セシリーは俺の女だ」と主張していた。
そんなネイトに盲目なセシリーを諭してやる義理など、ウォルトにはなかった。
――――――
乳兄弟で恋人のネイトとセシリーしか解らない会話で盛り上がっているのを、白けた目で眺め、セシリーの実家を後にする。
そんな面会が何度か行われ、無為な時間を過ごしたなとセシリーの実家を出て、
「気分転換に、少し歩く」
待っていた馬車を先に帰らせ、ゆっくりと歩を進める。
ウォルトが歩いて帰ると言ったのは気分転換の意味もたしかにあったが、目的は邸を出る時からウォルトの様子をうかがっている女性の存在。
ウォルトに話し掛けたいのだろうと気付いたので、少し歩くことにした。
もちろん襲われる可能性も少しは頭にあり、腰に忍ばせている護身用の短剣に手を伸ばしていたが。
「少々よろしいでしょうか?」
邸から少し離れたところで、ウォルトはその女性から声を掛けられた。
女性はマチルダと名乗り、
「貴方様にご無礼を働いている騎士ネイトの、一応許嫁です」
ネイトの婚約者だと名乗った。
自分にマウンティングしてくるネイトに対して、鬱陶しさはあったが、彼の素性を調べるつもりはなかったので、婚約者がいることに驚いた。
「そうか」
そしてマチルダはセシリーの母親からの手紙を差し出した。
内容は「秘密理に会って話をしたい。そちらの両親にも内緒で」というものだった。
「了承した」
マチルダは手紙を受け取り頭を下げて、
「馬車を用意いたしましょうか?」
「では、お願いしようか」
「少々お待ちください」
邸へと引き返し、馭者となってウォルトの元に戻ってきた。
そしてセシリーの母親と、弟と対面の日。
「アレが申し訳ございません」
ウォルトの元にセシリーの母親と弟が謝罪しにきた。そしてセシリーが父親の浮気で産まれた子だと知った。
「セシリーにも、何度か説明したつもりなのですが、あの子はあの子の母親だった私の姉にそっくりで、自分が聞きたいことしか聞かないもので」
ウォルトには思い当たるところが、いくつもあった。
なにより、そっくりな同期がいた。
身分だけは同じだが、あとは全く違うブライアン。同格なので、同世代同士として交流があったが、ブライアンは本当に人の言うことを聞かなかったし、思い込みも激しかった。
ブライアンは勉強は大得意だったが、勉強がとてもよく出来るだけで、賢さとは無縁だった。
とにかく勉強はできる。だが既存の知識を吸収することに長けているだけで、それを応用したり発展させたり、新たなものを生み出す基礎にするようなことは、一切できなかった。
「ああ……分かります。ちなみに、セシリーの産みの親は?」
(親が持て余して、外国に送ったと聞いたときは、胸をなで下ろした)
ブライアンが貴族として使い物にならないことを、いち早く理解していた彼の両親は「そのような性質でもいい」という外国の貴族の娘婿にと、送り出した……というのを、風の噂で聞いていた。
「妹の夫に手を出すような出戻りなど、価値がないどころか、足を引っ張るだけだと」
セシリーの産みの親は、セシリー出産後に両親の命令によって毒殺された。
セシリーの父親は、浮気相手が毒殺される姿を見て以来、浮気はしていないらしいが、入り婿なのだから当然だろうとウォルトは思った。
「セシリーについては、事前にそちらに説明したのですが、お聞きになって?」
「聞いていませんね」
両親はセシリーの出生について知らされていたが、ウォルトには教えなかった。sono理由は、政略などではなく、
「貴方のお父様も、あの女に憧れていたらしいのよ。だからその娘と息子を結婚させたいと」
父親の身勝手な思慕だった。
セシリーの出生を聞き、そしてセシリーの異母弟コリンから、
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