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45 サバラン視点
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城の自室に戻って食事をすませた頃には、辺りはすっかり闇に包まれていた。好物の牛のソテーを食べながら、日が沈んでいく空を眺めるのは、至福のひとときだった。お腹が満たされたことで、疲れた頭も生き返ったようで、じっくりと考えを巡らせることが出来た。
突如、しんとした空間に規則正しいノック音が響く。サバランが返事する前に扉がゆっくり開いた。
泥だらけの靴に、何かで引き裂かれたようなコート、そして赤黒い染みだらけのクラバットを身につけた、格好だけはいかにも紳士という様子の小柄な男が現れた。無論、汚れていなければだが。更に、手には杖ではなく槍を握っている。
「・・・・・・カマロンか、遅かったな。早速だが報告してくれるな?」
「えぇ、報告したいのは山々ですが、この部屋には美味しそうな肉の匂いが充満していて、空きっ腹には拷問のようです」
「すぐに食事を用意させよう。道中食べてこなかったのか?」
「いえ、他国へせっかく出かけたのですから、食べないわけがございません。ちょうど国境付近で槍の名手と偶然出会い、意気投合。修行の一つとして魔物を食べないかと誘われて頂いたのですが、そこから急いで帰った次第で」
「腹が減ったと。はぁ。まあ、今日着いたからいいとするか」
カマロンは食事を望むと踏んで、料理は準備させてある。知らせればすぐに届けてくれる手筈になっていた。合図をしようとベルに手を伸ばしていると、扉が開きガラス製のワゴンを押した料理人が入ってきた。
すぐあとから現れたジルバが、テーブルに次々と料理を並べるのを手伝っている。準備が終わるまでにカマロンから話を少しでも聞いておこうと視線を向けると、彼は神に祈りを捧げていた。ナイフを持ちながら祈りのポーズをするのは如何なものだろうか。
料理人が一礼して部屋を出る時には、カマロンはもう前菜を食べ終わり、次の料理を口に放り込んでいた。
(マイペースな男だな。これくらいの図太さが無いと武力の達人としてのし上がるのは難しいのだろうか)
眉間に皺を寄せて唸っていると、すっと進み出たジルバが恭しく一礼した。戻って間もないはずなのに、シャツに皺ひとつない。
「サバラン様、どうしましょうか。話はカマロンが食事を終えてからでもよろしいですか?マシューもそろそろ1度戻るかと思いますが」
「あぁ、それで頼む。ジルバ、休んだのか?」
「シャワーを浴びて着替えは済ませてありますが・・・・・・」
「こちらから呼ぶまで自室で休んでろ」
うるさいハエを払うように手を振り、退出を促す。動こうとしないジルバに痺れを切らして部屋から追い出す。
(ふぅ。真面目なのも考えものだな)
「サバラン様、追加で頂くことは可能でしょうか?」
「は?」
振り向くと、テーブルに並べられていた大量の料理は綺麗に無くなっていた。優に2人前は用意してあったはずだが。よく食べる男だとは思っていたが、ここまでとは想定外だ。顔に出ていたのか、申し訳なさそうに言う。
「修行していたら、身長が5ミリも伸び、筋肉もこんなに発達したんです」
「そうか」
見た目の筋肉の量は変わっているようには見えなかったが、無駄な脂肪が削ぎ落とされ引き締まっているようだ。追加で食事を頼み、それを待つ間に、隣国での様子を詳しく聞いて過ごした。
突如、しんとした空間に規則正しいノック音が響く。サバランが返事する前に扉がゆっくり開いた。
泥だらけの靴に、何かで引き裂かれたようなコート、そして赤黒い染みだらけのクラバットを身につけた、格好だけはいかにも紳士という様子の小柄な男が現れた。無論、汚れていなければだが。更に、手には杖ではなく槍を握っている。
「・・・・・・カマロンか、遅かったな。早速だが報告してくれるな?」
「えぇ、報告したいのは山々ですが、この部屋には美味しそうな肉の匂いが充満していて、空きっ腹には拷問のようです」
「すぐに食事を用意させよう。道中食べてこなかったのか?」
「いえ、他国へせっかく出かけたのですから、食べないわけがございません。ちょうど国境付近で槍の名手と偶然出会い、意気投合。修行の一つとして魔物を食べないかと誘われて頂いたのですが、そこから急いで帰った次第で」
「腹が減ったと。はぁ。まあ、今日着いたからいいとするか」
カマロンは食事を望むと踏んで、料理は準備させてある。知らせればすぐに届けてくれる手筈になっていた。合図をしようとベルに手を伸ばしていると、扉が開きガラス製のワゴンを押した料理人が入ってきた。
すぐあとから現れたジルバが、テーブルに次々と料理を並べるのを手伝っている。準備が終わるまでにカマロンから話を少しでも聞いておこうと視線を向けると、彼は神に祈りを捧げていた。ナイフを持ちながら祈りのポーズをするのは如何なものだろうか。
料理人が一礼して部屋を出る時には、カマロンはもう前菜を食べ終わり、次の料理を口に放り込んでいた。
(マイペースな男だな。これくらいの図太さが無いと武力の達人としてのし上がるのは難しいのだろうか)
眉間に皺を寄せて唸っていると、すっと進み出たジルバが恭しく一礼した。戻って間もないはずなのに、シャツに皺ひとつない。
「サバラン様、どうしましょうか。話はカマロンが食事を終えてからでもよろしいですか?マシューもそろそろ1度戻るかと思いますが」
「あぁ、それで頼む。ジルバ、休んだのか?」
「シャワーを浴びて着替えは済ませてありますが・・・・・・」
「こちらから呼ぶまで自室で休んでろ」
うるさいハエを払うように手を振り、退出を促す。動こうとしないジルバに痺れを切らして部屋から追い出す。
(ふぅ。真面目なのも考えものだな)
「サバラン様、追加で頂くことは可能でしょうか?」
「は?」
振り向くと、テーブルに並べられていた大量の料理は綺麗に無くなっていた。優に2人前は用意してあったはずだが。よく食べる男だとは思っていたが、ここまでとは想定外だ。顔に出ていたのか、申し訳なさそうに言う。
「修行していたら、身長が5ミリも伸び、筋肉もこんなに発達したんです」
「そうか」
見た目の筋肉の量は変わっているようには見えなかったが、無駄な脂肪が削ぎ落とされ引き締まっているようだ。追加で食事を頼み、それを待つ間に、隣国での様子を詳しく聞いて過ごした。
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