双子の姉の身代わりという人生から逃げるため、空飛ぶ絨毯作ります

ねり梅

文字の大きさ
46 / 69

46 サバラン視点 報告

しおりを挟む
爽やかな風が吹き、カーテンの隙間から柔らかな日差しが降り注いできた。鳥の鳴き声が朝の到来を告げている。サバランが顔を上げると、カマロンは、床に敷いてある絨毯に死んだように眠っていた。首を左右に降り、凝りをほぐす。


昨日はカマロンが食事の途中で寝始め、マシューが到着したのも夜が闇に包まれた頃だった。マシューにはそのまま休むように伝え、カマロンを運ぼうとした。が、テーブルから離れようとせず、面倒になってそのまま放置して仕事に戻ったのだ。目が覚めたら自室に戻るように促すつもりが、どうやら自分も寝てしまったようだ。


こめかみを押さえ目を瞬く。まだまだ片付けなければならないことは山ほどある。回復用の薬を喉に流し込む。疲れで動きが緩慢になっている。変な体勢で寝たせいで節々が強ばっていた。


(軽く体を動かしてシャワーを浴びるか。朝食を食べながら、3人と会話すればまだ間に合うだろう)




2の鐘が鳴り、徐々に城の使用人達が動き出した頃、サバランは、料理人にいつもより早く食事を用意するよう頼んだ後、3人を呼び出した。


「朝早くから申し訳ない。食事ももうじき届くが、それぞれ報告をしてくれ」


ジルバはパリッと糊を利かせたシャツに前の短いベストとコート。ブーツまで履いて用意がいい。対するマシューは、ゆったりとしたズボンにローブと、労働者風の服装をきっちり着こなしている。

カマロンは慌ててシャワーを浴びたらしく髪がまだ湿っている。が、分厚く通気性に優れた綿入りのローブにタイツを着ている。


一瞬顔を見合せ、ジルバが前に進み出て話し始めた。


「時間もないかと存じますので、私から手短にご報告を。国王主催の非公式狩猟会、及びその後のパーティーにドレーン伯爵、ポーケッタ侯爵、王妃の兄上であるビオレソリネス公爵が欠席すると正式に確認できました。表向きは、家族の看病と療養とされてますが、本当の理由はイートポーテル国付近で会合を行うからだと突き止めました」
「具体的な店の名前は、」
「タングストレスです。ハニーニ国で採れる鉱石タングスに3という神聖な数字をかけあわせた由来だそうで、地元ではお忍びで貴族が訪れる高級な店として認知されていました。ドレーン伯爵と旧友のスモーツ侯爵が、王家御用達のウィスキーやエールをここに卸しているので間違いないかと」
「よくやった、ジルバ!どう突き止めたかは聞かんが大変だったろう。で、もう1つのナハルの婚約者という王子はどうなった?」
「2名まで絞り込みましたが・・・・・・。1人は王位継承第4位のドータス、もう1人は王位継承権第7位のラックスです。どちらも年齢が17,18歳で剣術に優れております」
「ふむ、そうか」


サバランは考えを巡らせる。調査を頼んだ際に、剣術に優れている者としたのは、2つ理由がある。


1つは、ハニーニ王国では知力より武力が求められる特性がある。これは、豊かな土壌を求めて周囲の国を攻めることで領土を拡大してきたからだ。なんせ国土の8割を乾燥した内陸高原が占め、残りは高山地帯で凍てついた土地が広がっている。


もう1つは、ビオレソリネス公爵が剣術を好んでいるからだ。剣舞や決闘をよく見物しているという。他国の王子と接点を持つとしたらそういった催しだろうと考えたのだ。


しかし、私はどちらとも顔を合わせていない気がするのだ。我が国を訪問したとしたら、記憶にあるはずだが・・・・・・。非公式だとすると、どこかに誤魔化そうとした痕跡があるはずだ。


「どちらかは特定している時間はない。会合を行われる店に忍び込むか。その話はあとだ。カマロン、報告を頼む」
「はい。サバラン様のご友人であるカスティーラ国第1王子と接触出来、部下のポルカ様が滞在許可に加え、住む場所と仕事も手配すると約束してくださいました。また、手紙も預かっております」

 
サバランが手渡された手紙に触れると、ぱっと光り封が開いた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

処理中です...