【R18】変態に好かれました

Nuit Blanche

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イケメンヤリチンチャラ男に捕まりました

やばい人に絡まれました

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 周りからは鈍いとよく言われる。でも、本当は自分に向けられる視線によく気付いてしまう。
 文芸部の後輩から告白された時、本人からも友達からも気付いてなかったでしょ、って言われたけど、本当は知ってた。色々、面倒になるのが嫌で気付かないフリをしてただけで。
 でも、彼に見られてると気付いた時はどうせ小学生並のチビがいると笑ってるんだろうと思ってた。彼が私に好意を向ける理由がないから。あるはずがないから。


 今日は日直で、やっと日誌を書き終わったところだった。しんとしてた教室に誰かが入ってきても気付かないフリをしていようと思っていた。
 なのに、誰だか知らないけど、その人は近付いてきて、私の机の上に影が落ちた。

「りんりん」

 すぐ側で声がする。男子の声。それは私を呼んでるのかわからない。仲が良い男子なんて部活にしかいないけど、誰もそんな呼び方はしない。
 子供の頃、みんなからそうやって呼ばれるのが凄く嫌だった。

「うわっ、シカト? もしもーし、りんりん? りんりーん?」

 私の態度が気に入らなかったのか机を叩かれて顔を上げるしかなかった。
 その声は凄く聞き覚えがあって、喋り方ですぐわかったから、無視してやり過ごしたかったのに、そうさせてくれないらしい。
 嫌々顔を上げれば、やっぱり影本かげもと君がニヤニヤ笑ってた。

「りんりん、でしょ? 俺、漢字ちゃんと読めるんだぜ?」

 影本君は日誌の氏名欄を指さして自慢げに笑う。
 何が面白いのかいつもヘラヘラ笑ってる影本君は同じクラスだけど、今まで話したこともない。
 髪の毛は金色だし、ピアスもしてるし、制服も着崩してる不良さん。顔だけ見ればイケメンだけど、チャラい。
 自由な校風の学校とはいってもとにかく目立つし、私の友達からはDQN認定を食らうような要注意人物。関わりたくない男ナンバー1。
 喧嘩が強くて先輩達にさえ一目置かれてるとか、美人の先輩は全員抱いたとか先生にまで手を出したとか言われるくらい、とにかくやばい噂が絶えない人。一年の時からそんな感じだった影本くんと同じクラスになった時、私は何て運が悪いんだろうと思った。
 実際は関わることなんてなかったけれど。

「パンダみてぇ。りんりん、りんりん」

 何も言えない私に構わず影本君は笑い続けてる。はっきり言って怖い。怖すぎる。
 パンダって言われるのが嫌なのに、影本君に文句を言えるはずがない。
 小さい頃のプレゼントと言えばパンダばっかりだった。本当はウサギが好きだったのに、言えなくて身の回りの物が全部白黒のパンダになったくらい。
 スカートをめくられた時、パンダのパンツを見られて笑われた時は本当に辛かった。

「つーか、何か言ったら? りんりん」

 何でかわからないけど、今日の影本君はしつこく絡んでくる。
 スクールカーストの上位にいるような影本君に逆らって明日から何を言われるかわからない。

「りりん、です」

 きっと影本君にとってはどうでもいいことだと思うけど、名前の問題は放置しておくと後々面倒臭い。
 私の名前は光石みついし凛鈴りりん。確かに漢字は『りんりん』だけど『りりん』が正しい。
 だから、訂正しておこうと思ったけど、それは正に蚊の鳴くような声だったと思う。
 何考えてるかわからない影本君、マジホラー。

「ふーん……じゃあ、りりちゃんね」

 影本君は気分を害した風じゃなかったけど、馴れ馴れしく呼ばれても余計に怖い。

「あの、影本君」
「なぁに、りりちゃん」

 正直、今すぐ逃げ出したい。もしくは誰かに助けてほしい。
 でも、絶対、このままだと状況が改善されないから声をかけてみるけど、にこにこ笑顔で応じる影本君、本当に意味不明で怖い。パニックムービーが一本作れるんじゃないかってくらい怖い。一応文芸部の語彙を貧弱にするくらい怖い。もう怖いしか言えない。怖い。

「私に何のご用でしょうか?」
「ぶはっ、りりちゃんって敬語キャラだっけ? うける」

 影本君の気分を害さないように精一杯丁寧にお尋ねしたら吹き出された。
 本当に何なの、この人。罰ゲーム? 実験? 誰かどこかで見てる?

「しかも、すげー嫌そーな顔してる」

 嫌って言うか、怖すぎて意味わからないんだけど、顔に出てたらしい。やばい。
 部内ポーカーフェイス大会万年最下位は伊達じゃない。

「まあ、いいや」

 気に留めてないような影本君に一瞬ほっとするけど、私は何も良くない。言えるわけもないけど。

「りりちゃんも乙女ゲームっていうの? あれ、やってんの?」

 散々私に恐怖を与えておいて、本題それ?
 しかも、りりちゃん呼びやめてくれないらしい。ぞわぞわするからやめてほしい
 いや、この質問も普通に怖い。意図がわからないから怖い。
 オタクの集まりの文芸部所属だけど、教室ではオタク感を隠してる私達をあぶり出しにかかってるのかもしれない。
 魔女狩り? 明日には晒し者にされるの? もうやだ、マジこわい。
 最適な答えを導き出すべく必死にぐるぐる考えるけど、恐怖に邪魔をされる。
 沈黙が長引くほど影本君のイライラメーターが上がってく気がする。マッハで。
 そう言えば、最近、CMやってたっけ。
 影本君の言葉からは何となく苦手意識が見え透いている気がする。
 リアル美女攻略し放題ヌルゲー状態のリア充影本君には理解できないだろうし、偏見にも慣れてるけど。

「やってるけど……」

 それが何か? って強気に出られればいいのに現実の私は蚊。
 やってないって嘘を吐けばいいのに、バレた時が怖くて正直に答えてしまう。
 文芸部仲間と同盟関係にあるアニ研の仲間に勧められてアプリもやってるし、ゲーム機の方だってやってる。
 それでも、まだどっぷり浸かってはいないと思ってる。

「じゃあ、恋人は二次元?」
「主人公イコール自分みたいに思ったことはないから……」

 こんな尋問に何の意味があるのかわからない。
 真面目に答えて何になるのかわからない。

「ふーん……実は彼氏いるとか?」
「いないけど……」

 絶対、いるわけねぇ、って思ってる。確かに生まれてこの方一度も彼氏なんていたことがない。
 何回か告白はされたことはあるけど、そういう風には見れなくて断った。
 友達には勿体ないって言われたけど、それは別に二次元とは関係ないこと。

「だったら、何が楽しいの?」

 一体、どういう興味なのか。
 影本君は前の席にこっち向いて座った。もしかして、この尋問、長引きますか?
 帰りたい。マジ帰りたい。帰りたい。

「ストーリー読むのが好きなの」
「だったら、小説とか漫画でいいじゃん? ほんとはせーゆー目当てとかじゃないの?」
「漫画も小説も好きだけど……でも、ハッピーエンドだったりバッドエンドだったり、相手によって変わるのが面白くて全部見たいと思うの」

 やっぱり影本君は偏見があると思う。
 声優さんも好きなのは否定できないけど、コレクター気質だし、漫画とかはどうしても別のストーリーを妄想しちゃう。だから、一つで何回もお得みたいなのは影本君には理解できないかもしれない。多分、根本的に理解し合えない人種だと思う。

「漫画も読むんだ? どんなの? やっぱ少女漫画? エッチなやつ?」
「少年漫画とかも読むけど……」

 影本君は私を一体何だと思ってるんだろう?
 何の目的で今聞いてるんだろう?

「じゃあ、今度うちにおいでよ。いっぱいあるから」

 本格的に意味がわからない。何、この罠。
 何で、私が影本君の家に誘われてるんだろう?
 やっぱり、どこかでこの様子を見て笑ってる人達がいるんじゃ……
 キョロキョロと見回しても扉は閉まってて隙間があるわけでもない。影本君も動画を撮ってる様子もない。でも、ボイスレコーダーを隠し持ってるとか……?
 どうしよう。どうしたら逃げられる?
 どっちみち、明日には勘違いブスとして晒し首になる?
 社会的な死が近付いてる……?
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