【R18】Fragment

Nuit Blanche

文字の大きさ
18 / 80
国を奪われた夜に

国を奪われた夜に 1

しおりを挟む
誕生日パーティーは魔王の襲撃によって最悪の物になってしまった。
魔王に妻としてもらい受けると宣言されたラナ姫は婚約者である隣国の王子エドガルドが転送魔法を発動したことにより、護衛騎士クライヴと共に隣国へ逃げ延びたのだが……(全三話)

[ファンタジー 異世界転生 姫 王子 騎士 3P]


* * * * *


 二人分の腕が、舌が、私に絡み付いて、這い回り、掻き乱す。汗ばむ肌が触れ合って、溶けてしまいそうなほどに熱くなっていく――


 どうして、私はこんなことをしてるのだろう?
 一日で状況が変わりすぎて整理が追い付かないというのに、もっと混乱させられている。

 今日は私の誕生日だった。一国の姫である私の誕生日祝いは望まずとも盛大なものになる。特に今回は隣国グリアンの第一王子エドガルド様との婚約発表も兼ねて執り行われていた。
 それなのに、歓声は一瞬にして悲鳴に変わった。今も耳の奥に張り付いてるような気がする悲痛な声。けれど、それもまた一刹那の出来事だった。
 お父様も、お母様も、お兄様達も、みんな……みんな、石になって、動かなくなってしまった。急に音を失ったように静かになってしまった世界であの男――魔王ヴィルジルは高らかに笑い、宣言した。

 ――ラナ姫を妻としてもらい受ける

 城を守る騎士達も、魔術師達も一瞬の内に石にされてしまった。誰も魔王に適うはずがない、そう思わされた。その存在は絶望そのものだった。
 けれども、今の私は魔王に囚われたわけではない。私が生きていられるのは護衛騎士クライヴとエドガルド様のおかげ。
 クライヴは魔剣の力によって石化の魔法を防ぎ、エドガルド様が発動させた転送魔法によって私達は共にグリアンへ逃げ延びた。
 国同士で緊急時の取り決めがされていたと知らされたのはつい先程のこと。

 城を、国を奪われてしまった。あれから国民全てが石に変えられたと聞いた。私が身を差し出せば元に戻すと魔王は言っているけれど、それを信用して良いものかはわからない。
 私だけ逃げてきてしまった。それなのに、どうして、私は寝台でエドガルド様とクライヴに淫らな行為をされているのだろう?
 夜、一人でいるのは辛いだろうと二人は私に用意された部屋に来て、慰めなど要らないと言ったのに、必要なことだと言いくるめられて寝衣も下着もはぎ取られて今に至るわけだけれど……

「エド、ガルド様……!」

 どうにか私の胸に顔を埋めるエドガルド様を押し戻す。
 その蒼玉のような瞳は見詰められるだけで鼓動が速まるのに、どこか不機嫌で……

「どうか私のことはエドと――そう言ったはずだが」

 私よりも二つ年上のエドガルド様はもっとずっと大人に見える。老けているということではなく、とても落ち着いている。
 淡い金髪に吸い込まれるような青い瞳、あまりに美しい顔立ちから冷たく見られることもあるけれど、私にはいつも優しくしてくださった。
 どれほどの女性が彼との婚姻を夢見ただろう。私なんかがと卑屈になってしまうこともあった。それでも彼に相応しい人間になりたいと望んでいたはずなのに。

「エド様っ、おやめください……」

 確かに言われたはずのことが頭から抜け落ちてしまうくらいには私は混乱している。城で起きた悲劇よりも今はこちらの方が衝撃的。

「私はただのエドになりたかったのだが」
「エド様、こんなことは……ひうぅっ!」

 エド様がぽつりと零す言葉の意味はわからない。
 婚約の発表をするはずだったとは言っても婚前にこんなことをして良い理由にはならない。
 エド様だって知ってるはずなのに、胸の先を噛まれたせいでそれ以上言うことはできなかった。

「クライヴも……!」
「やめません」

 私を守るはずの騎士は今丹念に足の指を舐めている。
 体は清めさせてもらったけれど、そんなところを舐められるのは嫌だと言っても無駄だった。不敬だとかそんなことは今の彼には関係なかった。

「貴女が純潔でなくなっても私は気にしない。相手は私だからな」
「私が気にします……!」
「国がなくなれば何の意味もないことだ」

 エド様の言葉に思わずはっと息を飲む。
 国は今、魔族の物になってしまった。元の国民達は生活していた姿のまま、まるで石像のように置かれていると言う。

「俺も気にしません」
「君は気にするべきだと思うが」
「本当は姫様の一番は俺でありたいところを王子様の手前、渋々遠慮して差し上げています」

 クライヴは言うけど、そもそも騎士の言動から逸脱していることは本人が一番わかっているはず。
 この男は騎士としての腕は確かだし、人前では完璧な騎士を演じている。
 そう、演じていたのだ。二人きりになれば一人称も変わる。二人きりで息が詰まるのも嫌で許していたけれど、他人の前では絶対に晒すことはなかった。それが今エド様の前では何も取り繕っていない。そんな慇懃無礼な態度にエド様は対して驚きもせず、咎めもしなかった。

「王子様ともあろうお方が随分と余裕がなさそうなので」
「君こそ」
「消耗してるのはお互い様ってことですね」

 まるで二人はお互いをわかっているかのように私を取り残して話を進める。
 国を奪われて辛いのは私だけじゃないのはわかっている。エド様は転送魔法を発動させる際にかなりの魔力を使ったはず。クライヴの魔剣も持ち主の魔力を吸うと聞いたことがある。
 だったら、尚更二人とも休んでいなければならないはず。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

乳首当てゲーム

はこスミレ
恋愛
会社の同僚に、思わず口に出た「乳首当てゲームしたい」という独り言を聞かれた話。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

👨一人用声劇台本「寝落ち通話」

樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
彼女のツイートを心配になった彼氏は彼女に電話をする。 続編「遊園地デート」もあり。 ジャンル:恋愛 所要時間:5分以内 男性一人用の声劇台本になります。 ⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠ ・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します) ・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。 その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

処理中です...