【R18】Fragment

Nuit Blanche

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君に祈りを、スライムに愛の雫を

君に祈りを、スライムに愛の雫を 5

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 目が覚めた時、私は制服のままベッドで寝てた。
 ちゃんと下着を履いてるし、制服も乱れてない。疲れて帰ってきてそのまま寝ちゃったのかな? 親がいないからって気が緩みすぎなのかも。
 凄く変な夢を見てた気がする。でも、体を起こせば下腹部に痛みが走るし、部屋の隅にレジャーシートが畳んで置かれてるのが目に入った。
 やっぱり夢じゃなかった……?
 でも、家の中を探してもスライムは見付からなくて、それ以上考えるのはやめることにした。調べようがないし、疲れていたから。


 翌朝も体は少しだるかったけど、登校はできた。親が不在だからって、ずる休みする気にはなれない。

「遠山!」

 上履きに履き替えたところで、名前を呼ばれて振り返る。
 あれ、この声って……

「おはよ」

 片手を上げて笑ってるのは賢人君。
 いつも通り、そう思ったら急に涙が出た。
 だって、賢人君が事故に遭ったのは現実のはずなのに、その賢人君が目の前にいる。

「わっ、泣くなって! ちょっとこっち来て!」

 慌てた賢人君に引っ張られて、人気のない方に行く。
 その手からは確かな温もりを感じる。

「体、大丈夫か?」

 廊下の奥でそう聞かれて、どう答えたらいいかわからなかった。
 だって、どこからどこまでが夢かわからない。
 大丈夫かどうかって言われたら、あんまり大丈夫じゃないけど、でも、それを賢人君が知ってるはずがなくて、他には思い当たらない。
 むしろ、それは私が聞きたいこと。

「その……何から話したらいいかわかんないんだけど……ありがとな」

 答えられない私に困ったように賢人君が言った。
 何かお礼を言われるようなことしたっけ?
 全然話が見えなくて、私も何から聞いたらいいかわからない。

「よく走馬燈のように、って言うだろ? はねられて、死ぬんじゃないかって思った瞬間、思い浮かんだのは遠山のことばっかりだった。告白しとけば良かったって、このまま死にたくないって……それで気付いたら、遠山がいた。いや、俺が遠山の部屋に行ったんだよな」
「え……?」

 賢人君が事故に遭ったのが現実だとして、理解が追いつかない。
 私の部屋に来た……?

「俺も夢だと思ったけど、何か遠山の反応見たら現実だったんだなって実感した」

 涙は止まったけど、私はまだ現実と幻覚の狭間をさまよってる気がする。

「信じられないかもしれないけど、でも、遠山はわかってくれただろ?」
「スライム……」
「ピンクで可愛かっただろ? 遠山の部屋もピンクで可愛かったから合ってたのかもな」

 呆然と呟けば賢人君が頷く。そして、賢人君が知らないはずのこと。
 やっぱり、スライムが現実。私の処女喪失の相手はスライムになった賢人君……?
 でも、あの時、賢人君の名前を呼んだのは錯覚だと思ってたところがある。

「俺もわけわかんなかったし、遠山に興奮して襲いかかって、約束したけど……遠山が学校に行ってる間、寂しいし、また死ぬんじゃないかって思った。そうしたら、変な声が聞こえたんだ。心から愛する人に受け入れてもらえれば俺は助かるって」

 俄には信じ難いことだけど、スライムが現実ならそれらも真実。ありえないことは確かに私の部屋の中で起きていた。
 賢人君が聞いた声が何なのかは賢人君にもわからないんだと思う。神様? 仏様? 天使?
 気まぐれに起こされた奇跡なのかもしれない。

「怖い思いさせてごめんな。けど、遠山のおかげで俺は死なずに済んだよ。親とか医者にはめちゃくちゃ驚かれたけど、何ともないんだ。それに、俺をはねた奴も捕まったんだってさ」

 賢人君は頭を撫でてくれる。スライムの時だってそうしてくれたことを思い出すと、まだじわりと涙が出そうになる。

「賢人君が無事で良かった……」

 それが本心。スライムとエッチしちゃったことだって、無駄じゃなかったって思える。

「責任とるとか言うんじゃなくてさ、もう後悔したくないんだ……だから、俺と付き合ってください」

 そうして差し出された手を私は迷わず握って、賢人君がぱっと顔を上げて、それから笑い合った。
 昨日の夜のことは二人だけの秘密。
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