【R18】Fragment

Nuit Blanche

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双子の檻から逃げられない

双子の檻から逃げられない 2

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「乃愛がいけないんだよ」

 私を羽交い締めにして耳元で囁くのは大河。
 ぱくりと耳を食まれてゾワゾワする。
 自殺騒動のあたりでおかしいと気付くべきだったというか……普通に、どう考えてもおかしかった。
 なのに、大和に比べて病弱だった大河は昔から危ういところがあったし、人見知りが激しいからだなんて楽観視してた。

「俺らから逃げようなんてバカなことするから」

 ニヒルな笑みを浮かべるのは大和。
 いつも大河を宥める役だったから、まともだと思ってた大和も十分に病んでたのかもしれない。

「お前ら、ふざけんなよ!」

 大和に抑え込まれながら叫ぶのは直島なおしま優一ゆういち君。
 中学の時からの付き合いだけど、私達のことはよく知ってるし、クラスメートで、私の彼氏になるはずだった人。
 そう私の答えは二人とも選ばずに直島君と付き合うこと。それを伝えに二人の家に来た。それが間違いだとも知らずに。
 大河の部屋に入るなり、直島君は後ろから大和に殴られて倒れて、今や腕を縛られ、私は大河に捕まってる。

「ふざけてるのはそっちでしょ? 乃愛は僕達のモノなのに」
「俺らから乃愛を奪おうとするから」

 私は断じて二人のモノじゃない。なのに、二人の中では決まり切ったことみたい。
 そんなに想われて嬉しいとかよりも、普通に怖い。
 これは異常だ。なのに、正常なはずの私も直島君も動けなくて、異常に飲み込まれようとしている。

「俺だって」
「後から出てきた奴が、しゃしゃり出てくんじゃねぇっての。お前だけは排除しないでやったのに調子に乗りやがって」
「いててててっ!……悪かった! 俺が悪かった! 付き合うなんて嘘だ! お前らに返すから!」

 直島君が何を言おうとしたのかはわからない。その後ろで大和が何をしたのかもわからない。
 でも、直島君は呆気なく白状した。

 考える時間をもらって、二人と離れて私は悩んだ。
 二人がいないと静かで、それが少し寂しくて、でも、ニヤニヤ笑いながら嫌みを言ってくる女の子はいなくならない。身の程知らずとか言われても、こっちの事情も知らないで勝手なことを言うなと思ったりもする。それを口に出せるほど私は強くもなくて、ただ黙って聞いてるだけなんだけど。

 昔から私はそうだった。何も言えなくて、そんな時、二人は私の口になった。
 けれど、二人が勝手に追い払うせいで友達も少ないことに気付いた。
 このまま二人と決別するという選択肢があるのだろうか。考えすぎて頭が痛くなってきた私に『何か悩んでる?』って声をかけてくれたのが直島君だった。
 直島君も十分にイケメンだと思うし、優しいし、運動もできるのに、双子の前では霞むというのが周囲の評価。
 直島君はこのまま二人から離れたいなら自分と付き合えばいいと言ってくれた。付き合うフリでいいから、って。
 それならいいかな、って話に乗ってしまったのは、二人ももっと私以外の女の子のことも見たらいいと思ったから。その内に直島君のことも好きになれるかもしれないと思ってた。

「これはお仕置きだよ」
「お前の入れ知恵のせいだからな、ちゃんと見とけよ」
「そうそう本当は目を潰してやりたいくらいなのに、見せてあげるんだから、むしろ感謝してほしいよ」

 大和も大河もいつもと違う怖い声、怖い顔。
 直島君も怯んでるけど、私は二人のこういう面を今まで何度も見てきた。
 私が誰かに傷付けられる時、二人は私の代わりに手も足も出した。

 あれは小学生の時、私の髪を切った女の子がいた。長く伸ばした髪の毛は唯一私の自慢だった。大河はそれを梳かしたがって、三つ編みにしたり、可愛い髪飾りを付けてくれたりした。そして、みんながそれを褒めるのが気に食わなかったらしい。
 少し切られたところで二人が助けてくれたけど、その後が大変だった。
 大和は女の子の髪を全部引き抜こうして、大河は同じように女の子の髪を切ろうとして、二人で追いかけ回し、相手を泣かせたところで先生に見付かって保護者が呼び出される事態にまで発展した。
 私は短くなった髪をそれはそれで気に入っていたけど、伸びるまで二人は不機嫌だった。特に大河は私の髪が安定剤だったかのように、突然泣き出すような情緒不安定さで本当に大変だった。以来、私は髪を短くしていない。

 私に手をあげた女の子の指を折ろうとしたこともあったし、私のモノが盗まれた時には犯人を見付けて公開処刑とも言うべき方法でそれを責め立てた。
 私を泣かせた相手は必ず泣かす。でも、二人はやりすぎないギリギリのところをわかってたような気もする。保護者を呼ばれることもあったけど、二人は実に堂々と主張した。
 その内に私に手を出そうとする女の子もいなくなったけど、いつだって二人は私を守ろうとしてくれた。
 でも、今になって思えば、それらは少し異常だった。みんながキラキラ王子だと思ってる双子はドロドロに闇を抱えて、私は見て見ぬフリをしてきた。
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