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第一章

「いつもお世話になってます」 7

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 ベッドへ運ばれ、端に座らされた紗菜は緊張しきっていた。大きなまな板の上に乗せられた気分だ。頭を撫でられても和らぐことはない。
 前に立った晃の股間が嫌でも目に入る。顔を背けようとすれば後頭部に回された手が許さない。

「そんなに怖がらなくても先輩のこと傷つけたりしませんよ」

 そうは言われても紗菜にとっては未知の物体にも等しい。だからこそ、膝の上でギュッと握った紗菜の手に晃の手が重なる。先ほどのように強く掴んでくるわけではないが、ゆっくりと導かれて紗菜は振り払うこともできなかった。

「ひゃぁ……」
「噛みつくわけでもあるまいし」

 ズボン越しに触れて驚く紗菜に晃が笑う。確かな膨らみはまるで何か恐ろしい生き物が潜んでいるようにも感じられた。

「初めて見るならビックリするかもしれないですけど、ちゃんと見てくださいね」

 一度紗菜から手を離して晃がファスナーに手をかける。紗菜は目を閉じたかったが、釘を刺すように言われてしまってはそれすらもできない。
 優しい晃の声も言葉も今の紗菜には絶大な強制力を持っている。
 そして、取り出された陰茎を初めて目の当たりにして紗菜は息を飲む。

「ひっ……!」

 見なければ何をされるかわからない。そう思うからこそ、紗菜は自分が持ち合わせていないそれを見詰める。
 驚きはしたが、身構えていたほど抵抗感もない。けれども、想像よりは質量を感じる。とても体内に入るとは思えなかった。

「いつも、先輩の写真見ながらこうやって擦ってたんですよ」
「ぅ……」

 晃は自らの手で陰茎を握り、前後に擦ってみせる。自分でしたこともなければ自慰など見たことがあるはずもない。それでも紗菜は目が離せずに不思議な気持ちだった。

「やってみてください」

 そう言われれば紗菜はおずおずと手を伸ばすしかない。実物を見てしまったからこそ、彼が言う本番だけは絶対に回避しなければならないという気持ちが強くなったのだ。
 晃の手が紗菜の手に重なり、導く。先ほど一度触れたとはいっても服越しに一瞬だけである。直に感じる熱さと同時にピクピクと動くことに驚いて手を引っ込めようとするが、晃の手が許さない。ただ彼に動かされるがままさするしかなかった。

「もう少し強くてもいいですよ」

 そうは言われてもデリケートな部分だけに紗菜は力加減がわからなかった。そっと力を込めれば晃の手が再び紗菜の手を動かす。こんなことが良いのか、不思議だった。

「うーん、いくら紗菜先輩でも手だけじゃダメそうですね」

 しばらくさすってから首を傾げる晃を見上げて紗菜は不安になった。これで済むなら、と我慢していたというのに、またハードルが上げられてしまう気がしたのだ。

「先輩、脱ぎません?」
「え……?」
「先輩の下着見るの、凄く興奮したんですよね。だから、脱いでくれたら、もっとギンギンになる気がするんですけど」

 ふるふると紗菜は首を横に振る。
 なぜ、脱がなければならないのか。交際してもいない異性の前で脱ぐことなど紗菜には受け入れ難いことだった。

「もう俺に見られてるのに?」
「やだ……」

 他人からの頼みを断れない紗菜でもそればかりは拒否した。一度見られているから平気というものでもない。脱いでしまえば身を守るものを失ってしまう気がしたのだ。

「じゃあ、この可愛いお口貸してください。それならいいですよね?」

 あっさりと引き下がった晃の指が紗菜の唇をなぞる。それが何を意味するか、よくわからないまま脱がされるよりは良いだろうと紗菜も今度は拒否しなかった。

「先っぽにキスしてください」

 そう言われてしまえば抵抗感はあった。まさかそんなことだとは、よく考えていなかった。
 だが、きっとこれは命令なのだ。一度承諾してしまった以上、背くことはできない。
 だからこそ、紗菜は素直に従って、唇を先端に軽く押し当てる。

「いいですよ。そこ、舐めてみてください」

 帰りたい一心で言われるがまま怖々と紗菜は舌を這わせる。本当にこんなことが気持ち良いのか、紗菜にはわからない。

「くわえてください。歯は立てないでくださいね」
「ん……ふぅっ……」

 顔にかかる髪を払われ、優しくも残酷な指示を紗菜は従順に実行するしかなかった。
 陰茎に触れるどころか、まともに見ることも初めてだというのに、口に含まされて奉仕させられるのだから苦痛以外の何物でもない。
 だが、拒否権などない。これをしなければ帰れないのだという思いが紗菜を動かす。

「いいですよ。もっと舌を絡めて。根元の方を手で扱いて」

 口内を犯す大きな熱に歯を立てないようにするだけで紗菜は精一杯だった。それでも零れ落ちた涙が頬を濡らし、唾液が口の端から溢れるのもそのままに、先ほどの力加減を思い出しながら言われた通りの動きを繰り返す。
 本当にどうしてこんなことになってしまったのだろうか。
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