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第一章

「いつもお世話になってます」 10

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「んんっ……!」

 唇に触れるのは晃の唇なのだろう。先ほど味わわされた感触が再び紗菜を苛む。
 顔を背けて逃げようとすれば晃の手が頭に回されるが、片手が自由になっても紗菜にできることはない。
 片手を繋いでキスをして、まるで恋人同士のようである。

「ふ、ぁ……」
「ほら、先輩、目開けて俺を見てくださいよ」

 そうは言われても晃が自分を見ているかと思うと紗菜は目を開けることができなかった。それが晃にとっては答えになったのかもしれない。

「っ!」

 僅かな膨らみが包み込まれるだけでも紗菜には一大事である。ふにふにと柔らかさを確かめるように揉まれ、火が出るのではないかと言うほど自分の顔がどうしようもなく熱くなっていくのを感じる。しかし、どうして溶けてなくなってしまえないのか。

「ちっちゃい乳首、立ってて可愛いですね」
「んっ……ぅんっ……」

 既に固くなってしまった胸の先端を指先が掠めただけで紗菜の体は敏感に反応を示す。面白がるように摘ままれれば唇を引き結ぶしかない。

「っ、ひゃぅっ!」

 どれほど耐えれば良いのかもわからない内に感じた違う刺激に紗菜は驚きで目を開ける。充分に刺激が強い経験をしているというのに、異性が胸に唇を寄せているということが信じられなかった。
 大人の階段を上っているということなのか。高速エレベーター、あるいはジェットコースターに乗せられているような気分だった。

「やっと見てくれましたね」
「ぁ……」

 ふと晃と視線がぶつかって紗菜の居たたまれなさに拍車がかかる。もう目を閉じることも逸らすこともできなくなってしまったが、それを見透かしたように晃が見せつけるように先端を舐めた。

「だめっ! ぁっ、そんな……!」

 舌先で転がされたかと思えばちゅぱちゅぱと音を立てて吸われ、もう片側は指先で弄ばれる。どれも紗菜には初めての刺激であり、むずがゆさのような未知の感覚がひっきりなしに襲いかかってくる。それは胸から伝わって下腹部に溜まっていくようで、わけもわからずに悶えることしかできなかった。

「あっ、ふ、ぁあっ! も、やめ……」

 羞恥心を感じている暇などなかった。快感と呼んで良いのかもわからない感覚の方が問題であるが、こうなってしまえば、紗菜にできることはない。過敏なほどに反応する体を震わせるだけだ。
 けれども、そうして紗菜が耐えている間にも晃の不埒な手は次の段階へ進もうとしていた。

「ゃあんっ! そこっ、だめぇっ!」

 胸への刺激に紗菜が気を取られていると不意にまた違う刺激が紗菜を襲った。わけもわからないまま、もじもじと擦り合わせていた足の間に晃の手が伸びていたのだ。

「こっちも先に脱がせてあげれば良かったですね。もう湿っちゃってますよ、ここ」
「やあっ!」

 最も触れられたくない秘めた場所をショーツ越しにトントンと指先で叩かれて伝わってくる振動が未知の感覚を強める。ジンジンするような、何とも言えないもどかしさに紗菜は怯えた。今や残っているのはショーツと靴下だけであり、最後の砦とも言える。

「これ以上濡らしちゃう前に脱がせちゃいますね」
「なっ……だめっ!」

 彼は一体何を言っているのか。なぜ、そうする必要があるのか。
 理解できない内にショーツに手がかけられて紗菜は慌てて手を伸ばすが、いとも簡単にはぎ取られてしまう。それでもまだ足に残っているショーツを紗菜は必死に引き戻そうとした。

「ビショビショのパンツ履いて帰るんですか? それとも、ノーパンで?」

 そんなになるものなのか。紗菜は一瞬考えてしまった。晃にとっては慣れたことでも紗菜にとっては全てが初めての経験だ。その上、望んでいるわけでもないのだから理解が追い付かずにパニックになっていた。

「もっと恥ずかしいことになる前に脱いじゃいましょうね」

 こうなってくると何が一番恥ずかしいのかわからなくなるものだ。そうなる前にやめてほしいものだが、言い返すことすらできないまま紗菜の足からショーツが抜き取られていく。

「ぁ……ぅ……」

 まさか、そんなところまで見られることになるとは思いもしなかった。紗菜の体を覆う物は何もなく、手で隠すことも許されない。それどころか、最も隠したい部分に再び晃の手が触れるのを止めることもできなかった。

「ここ、ヌルヌルですよ」
「やっ……触っちゃ、あっ!」

 晃の指が割れ目を滑るように行き来する。その度に大きくなる疼きをどうやり過ごせば良いのかが紗菜にはわからない。

「こんなになっちゃうなんて、何が気持ち良かったんですか? キス? それともおっぱいですか? 好きなの、いっぱいしてあげますよ」
「ゃっ、しなくていいからぁっ……!」

 言いながらも晃の唇は胸の頂を捉えている。弱い場所を同時に責められては、どちらに反応しているのかもわからない状態だ。

「いっぱい気持ち良くなって、俺がイケるぐらいエロい顔見せてくださいよ」

 見られたくないが、見せなければ帰ることができない。それは紗菜にとって高いハードルだった。この行為はどこまでエスカレートしてしまうのか、先が見えないのだ。
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