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第一章
「いつもお世話になってます」 13
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「も、やぁ……」
あれから何度絶頂させられただろうか。数えるような余裕など紗菜にあるはずもなかった。
焦点の定まらない目で天井を見上げ、紗菜はか細い声を漏らす。
指と舌で散々とろけさせられた秘部からは絶えず耳を塞ぎたいほどの水音が響いている。
体には力が入らないが、敏感な場所を攻められる度に電流を流されたようにビクビクと勝手に体が反応する。
「まだ足りないです」
「うそ、つき……」
涙は止まらないが、晃の心を動かす力はないのだろう。恨めしい気持ちで吐き出した言葉さえ彼には突き刺さらないようだった。
「俺が本当に嘘吐きだったら今頃もうここにチンポ突っ込んでるんじゃないですかね」
「ぅ、あっ……」
手加減しなくなったとは言っても晃の手つきは決して乱暴ではないのだろう。的確に丁寧に弱い場所を攻められ、高められているのは経験のない紗菜にもわかった。多少の違和感はあっても、痛みは感じないからこそ未通の秘部をまさぐられる恐怖も既に薄れてしまっている。
大人しく受け入れることが帰宅への近道だと信じていたが、今となっては本当に近付いているのかもわからない。何度、果てても行為に果てがないように感じられる。このまま帰れることができるのか不安になるほどだ。
「約束、ちゃんと守ってるでしょう?」
同意を求められて紗菜は困惑するしかない。
指こそ挿入されているが、陰茎だけはまだ最後の砦を突き破ろうとはしていない。
そういう意味では約束は守られているが、無事に帰れてこそ初めて果たされたと言えるのではないか。紗菜の願いはただ一つだけだ。
「かえり、たい……」
「もっとイッてください」
必死の訴えに返ってきた言葉はあまりに残酷で目の前が真っ暗になっていくようだった。
「むり……も、やだ……か、る……かえる、からぁっ……」
これ以上こんなことを続けられたら、確実に頭がおかしくなってしまう。それが恐ろしくて紗菜は泣きながら首を横に振り、何度も『帰る』と譫言のように繰り返す。
ほんの数時間前までは、こんなことになるとは思ってもみなかったのに、あっという間だった。本当の恋もまだ知らないというのに、ひどく淫らなことを知ってしまったことが紗菜には罪悪に感じられた。
「そんなに帰りたいなら、終わらせる方法ありますよ」
秘部から顔を離して体の位置を変えた晃が紗菜を見下ろしながら頬に触れて目尻の涙を拭う。
どこまでも優しい声には安心しそうになるが、それはやはり悪魔の囁きだったのかもしれない。
「俺の彼女になってください」
「断った、のに……」
「だって、先輩が可愛すぎるからもっと欲しくなって、全然満足できないんですもん。俺だって困ってるんですよ?」
紗菜には終始楽しげな彼が困っているようには見えない。恥ずかしげもなく言う彼は初めから紗菜を罠にはめようとしていたのかもしれない。
「でも、俺はこのまま何時間も先輩のことイカせ続けたって構いませんよ? 何回でもしてあげます」
「やっ……」
最早、強制だった。紗菜に選択肢などない。あるように見せかけて実際に選べる道は一つしかない。この責め苦から逃れる方法はたった一つだけだ。彼と付き合わなければ写真を消してもらうことも帰ることもできないのだろう。
「それとも、セフレにします?」
その意味がわからないわけではないが、あまりに非現実的に思えて紗菜は呆然とする。セックスフレンド――セックスするだけの関係など紗菜には考えられなかった。
「あっ、セフレならセックスしなきゃおかしいですよね? 今度、俺が満足するまでヤらせてくれるなら、今日のところは帰してあげてもいいですけど」
「ひっ……」
それだけ回避しようと必死に頭を回転させようとしている紗菜を見て晃は面白がっているらしかった。何であれ彼に損はないのだろう。
「彼女なら意思は尊重しますけど」
「写真……」
「彼女なら消します」
彼女なら、と晃は強調する。そうなれば嫌なことはされないのだと紗菜に思わせるには十分だった。
「じゃあ、俺の彼女になってくれますね?」
改めて問われて、紗菜はコクンと頷く。もうそれしかないのだと自分に言い聞かせながら。
心を売り渡せば大事にしてもらえるかもしれない。あるいは、すぐに飽きて捨てられるかもしれない。
そうすることでしか貞操を守れないならば仕方のないことだった。
「嬉しいです。こんな可愛い彼女ができるなんて」
「ぁ……」
強制でしかなかったというのに、晃は本当に嬉しそうに顔を輝かせて抱きついてくる。
初めての年下らしい幼さを感じる仕草に紗菜はわからなくなっていく。一体何が彼の真実だというのか。
「急に転校させられて、人生なんてクソだと思ってましたけど、先輩に出会えて俺は幸せです」
嬉しくてたまらないと全身で示すように晃は頬ずりをしてくる。ペットにでもするようだ。それがくすぐったくて紗菜は身を捩るが、できることならば今すぐにこの腕の中から逃げ出したかった。
欲しかったものを手に入れられた子供のように幸福感を醸し出す晃に抱き締められながら、紗菜の心は底なし沼のようにどこまで沈んでいく。今まで自分を不幸だと思ったことはなかったが、不運であることは間違いない。
あれから何度絶頂させられただろうか。数えるような余裕など紗菜にあるはずもなかった。
焦点の定まらない目で天井を見上げ、紗菜はか細い声を漏らす。
指と舌で散々とろけさせられた秘部からは絶えず耳を塞ぎたいほどの水音が響いている。
体には力が入らないが、敏感な場所を攻められる度に電流を流されたようにビクビクと勝手に体が反応する。
「まだ足りないです」
「うそ、つき……」
涙は止まらないが、晃の心を動かす力はないのだろう。恨めしい気持ちで吐き出した言葉さえ彼には突き刺さらないようだった。
「俺が本当に嘘吐きだったら今頃もうここにチンポ突っ込んでるんじゃないですかね」
「ぅ、あっ……」
手加減しなくなったとは言っても晃の手つきは決して乱暴ではないのだろう。的確に丁寧に弱い場所を攻められ、高められているのは経験のない紗菜にもわかった。多少の違和感はあっても、痛みは感じないからこそ未通の秘部をまさぐられる恐怖も既に薄れてしまっている。
大人しく受け入れることが帰宅への近道だと信じていたが、今となっては本当に近付いているのかもわからない。何度、果てても行為に果てがないように感じられる。このまま帰れることができるのか不安になるほどだ。
「約束、ちゃんと守ってるでしょう?」
同意を求められて紗菜は困惑するしかない。
指こそ挿入されているが、陰茎だけはまだ最後の砦を突き破ろうとはしていない。
そういう意味では約束は守られているが、無事に帰れてこそ初めて果たされたと言えるのではないか。紗菜の願いはただ一つだけだ。
「かえり、たい……」
「もっとイッてください」
必死の訴えに返ってきた言葉はあまりに残酷で目の前が真っ暗になっていくようだった。
「むり……も、やだ……か、る……かえる、からぁっ……」
これ以上こんなことを続けられたら、確実に頭がおかしくなってしまう。それが恐ろしくて紗菜は泣きながら首を横に振り、何度も『帰る』と譫言のように繰り返す。
ほんの数時間前までは、こんなことになるとは思ってもみなかったのに、あっという間だった。本当の恋もまだ知らないというのに、ひどく淫らなことを知ってしまったことが紗菜には罪悪に感じられた。
「そんなに帰りたいなら、終わらせる方法ありますよ」
秘部から顔を離して体の位置を変えた晃が紗菜を見下ろしながら頬に触れて目尻の涙を拭う。
どこまでも優しい声には安心しそうになるが、それはやはり悪魔の囁きだったのかもしれない。
「俺の彼女になってください」
「断った、のに……」
「だって、先輩が可愛すぎるからもっと欲しくなって、全然満足できないんですもん。俺だって困ってるんですよ?」
紗菜には終始楽しげな彼が困っているようには見えない。恥ずかしげもなく言う彼は初めから紗菜を罠にはめようとしていたのかもしれない。
「でも、俺はこのまま何時間も先輩のことイカせ続けたって構いませんよ? 何回でもしてあげます」
「やっ……」
最早、強制だった。紗菜に選択肢などない。あるように見せかけて実際に選べる道は一つしかない。この責め苦から逃れる方法はたった一つだけだ。彼と付き合わなければ写真を消してもらうことも帰ることもできないのだろう。
「それとも、セフレにします?」
その意味がわからないわけではないが、あまりに非現実的に思えて紗菜は呆然とする。セックスフレンド――セックスするだけの関係など紗菜には考えられなかった。
「あっ、セフレならセックスしなきゃおかしいですよね? 今度、俺が満足するまでヤらせてくれるなら、今日のところは帰してあげてもいいですけど」
「ひっ……」
それだけ回避しようと必死に頭を回転させようとしている紗菜を見て晃は面白がっているらしかった。何であれ彼に損はないのだろう。
「彼女なら意思は尊重しますけど」
「写真……」
「彼女なら消します」
彼女なら、と晃は強調する。そうなれば嫌なことはされないのだと紗菜に思わせるには十分だった。
「じゃあ、俺の彼女になってくれますね?」
改めて問われて、紗菜はコクンと頷く。もうそれしかないのだと自分に言い聞かせながら。
心を売り渡せば大事にしてもらえるかもしれない。あるいは、すぐに飽きて捨てられるかもしれない。
そうすることでしか貞操を守れないならば仕方のないことだった。
「嬉しいです。こんな可愛い彼女ができるなんて」
「ぁ……」
強制でしかなかったというのに、晃は本当に嬉しそうに顔を輝かせて抱きついてくる。
初めての年下らしい幼さを感じる仕草に紗菜はわからなくなっていく。一体何が彼の真実だというのか。
「急に転校させられて、人生なんてクソだと思ってましたけど、先輩に出会えて俺は幸せです」
嬉しくてたまらないと全身で示すように晃は頬ずりをしてくる。ペットにでもするようだ。それがくすぐったくて紗菜は身を捩るが、できることならば今すぐにこの腕の中から逃げ出したかった。
欲しかったものを手に入れられた子供のように幸福感を醸し出す晃に抱き締められながら、紗菜の心は底なし沼のようにどこまで沈んでいく。今まで自分を不幸だと思ったことはなかったが、不運であることは間違いない。
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