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第一章

「いつもお世話になってます」 12

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「ほんとに、もぉ、む、んっ! ふ、ぁ……んぅっ!」

 もう無理だと言いたかった紗菜の唇は晃に塞がれて最後まで紡ぐことができなかった。
 そして、軽く曲げられた二本の指が蜜をかき出すようにスムーズに出し入れされると体が勝手に反応してしまう。

「ん! んぁ! んんっ、ぁふっ……」

 頭がクラクラするのは最早単純に息苦しいからではないのかもしれなかった。口内を、体内をかき回される度に体がピクピクと反応する。
 体の奥も頭の奥も痺れていくようだ。唇が離れた時にはもう紗菜の息は絶え絶えになっていた。

「とろけた顔しちゃって……ほんと可愛いですよ」
「ひゃうぅぅっ!」

 晃はどこかゆったりしているが、指の動きは紗菜には苛烈にすら感じられた。
 中をかき混ぜながら親指で秘芽を擦られ、ほとんど悲鳴のような声が飛び出す。表からも裏からも責められているような感覚であった。

「あっあぁっ! っひ……ぅ、っあ、あんっ! ゃあぁ……!」

 秘芽と中を同時に刺激されるだけでも辛いというのに、乳首にまで触れられて紗菜は危険を感じた。弱い場所を同時に責められて声が引きずり出されるように止まらなくなる。
 自分からこんなにも声が出るとは思いもしなかった。苦痛だけではなく、どこか甘ささえあるが、勝手に出るのだ。

「その可愛い声、いっぱい聞かせてくださいよ」
「っ……ん! っく、ぅぅ……」

 ニヤニヤと楽しげに笑う晃の顔を見てしまった紗菜は恥ずかしくなって慌てて手で口を塞ぐ。この行為を受け入れているとは思われたくなかったのだ。

「可愛いことするんですね。いいですよ。出してくれないなら、出させればいいだけのことですから」
「んっ……んん……ふぅっ……」

 晃が笑ったかと思えば手と舌が体を這い回り、紗菜はくすぐったさとは違う疼きに全身を苛まれる。あまりにも慣れた手つきにあらゆる場所から快感を引き出されるようで、熱くなった体がぐずぐずに溶けてしまいそうだった。
 漏れそうになる声を手で必死に抑えながら身を捩ってもすぐに抑え込まれてしまう。

「素直に声出した方が楽ですよ?」
「んぅっ! くっう……」

 耳元で囁いてくるのは悪魔か。唯一できたささやかな反抗を崩すように弱い場所を何カ所も同時に責められて、それでも紗菜は声を堪えようとした。
 未知の感覚に塗り替えられて支配されそうな自分の体の変化が信じられずにいる。これは本当に現実なのだろうか。

「そんなに俺に聞かせたくないんですね」

 ぶるりと紗菜が震えたのは快感のせいだけではない。晃の暗い声が突き刺されるかのようだった。
 知らない自分になっていくような怖さで声を出したくないのに伝える余裕もない。言ったところで彼にはわからないだろうが。

「先輩初めてだから優しくしてたつもりなんですけど……もう手加減しなくてもいいですよね?」

 どこか凄艶な笑みにぞくりとまた寒気が走り、呆けた紗菜は晃の動きを把握できていなかった。ただ、彼が体の位置を変えた程度にしか認識していなかった。

「ひ、っあぁぁぁぁっ!」

 急に体を駆け抜けた強烈な快感に体が仰け反り、甲高い声をあげる紗菜は自分が何をされたのか気付くのに遅れた。

「あぁ、いい声ですね」
「あっ…………ん、ぅあぁ……!」

 紗菜にとっては信じられないことで、何かの間違いであってほしかった。
 晃が言葉を発するだけで刺激になるほど彼の顔が秘部の近くにあることなど知りたくはなかった。既に見られているとは言っても、広げられてまじまじと見られるのは違うのだ。ましてや先ほどの感覚は指で触れられたのとはまるで違った。
 それが何であるのかを見せつけるかのように晃が舌を這わせ、声を殺すどころではなかった。

「やっ、きた、なあぁんっ!」

 こんなことはやめさせなくてはいけない。紗菜は慌てるが、晃は聞く耳を持たないかのように秘芽に吸い付き、言葉を奪っていく。一度、声を発してしまえば再び堪えるのは容易ではなかった。

「綺麗ですよ。色も形も最高です」
「そ、いうことじゃ……」

 他の女性と比べられているのかもしれないが、褒められても喜べるはずもない。
 紗菜自身、見たことがない場所があるからこそ、その見た目を気にしたことはない。しかし、そういうことを言いたいのではないのだ。

「美味しいですよ」
「や、んあぁっ!」

 そう言って晃はわざと大きな音を立てるかのようにして溢れる蜜を啜る。
 これほど褒められて嬉しくないことがあるだろうか。晃の行為は紗菜の理解を超えている。そういった愛撫の仕方があると知らないからこそ、ひどく異常なことに思えたのだ。
 尤も、紗菜も先ほど晃に陰茎をくわえさせられているのだが、そこまで頭が回ることはなかった。

「先輩、大事なこと忘れてません? そうやって、いっぱい声出して何度もイッてくれないと俺は満足できないんですよ?」

 既に一度絶頂して『イク』という感覚を教えられたが、紗菜にはとても恐ろしい感覚として刻まれていた。決して何度も味わいたいと思うものではない。
 だからこそ、それは死刑宣告を受けたような絶望的な気分だった。
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