【R18】お世話した覚えのない後輩に迫られました

Nuit Blanche

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第二章

侵食される日常 19

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 抱えられていた足が解放されて、紗菜はだらりと投げ出す。離れていく晃を目で追う気力もなかった。

(終わった……?)

 不安になるのは晃が息を吐くように嘘を吐くからだ。
 そして、収斂する秘筒が妙に切ない。まるで中で彼の脈動を感じることを望んでいたかのようだ。入れられなかったことを残念がっているかのよう秘唇もひくりと震える。
 しかし、そんなことはありえない。紗菜が望んでいたのはこの行為の終わりであり、今し方もたらされたはずだった。
 それなのに、なぜ、ぽっかりと穴が開いてしまったような、満たされない感覚がそこあるのか。

「先に寝てていいですよ。後始末は俺がしておきますし、ベッドに運んであげますから」

 そっと頭を撫でられて紗菜はぼんやりと晃を見上げた。

「おわり……?」
「ええ、終わりましたよ」

 頷く彼は優しい顔をしているように見えた。満足したのだろうか。
 あれほど望んでいた終わりだというのに、紗菜の胸の内に落ちてきたのは安堵ではなかった。もっと形容し難い感情だ。あるいは認めたくないからこそそう感じるのか。

「入れないって約束したじゃないですか。俺もイケましたし」

 あっさりと終わりを認められて紗菜は信じられない気持ちだった。
 晃の言葉が信用できないのは今に始まったことではないが、彼が本当に約束を守ったことが信じられなかった。何より愕然としている自分がいることがショックだった。まるで約束が破られた方が良かったかのように。
 満足できないと言って散々紗菜を追い詰めたくせに本当に満足してしまったのか。

「自分で搾り取った精子見ます?」

 紗菜はすぐに見たくないと言うはずだった。そんなものを見たいはずがないのだ。
 けれども、その前に避妊具の先に溜まった精液を見せつけられて、紗菜はなぜかまた妙に悲しいような言い表しがたい気持ちになっていた。
 本当に終わったのだ。嘘つきの晃が本当に約束を守った。それは喜ぶべきことであるはずなのに、どうして悲しいなどと思うのか。
 理解できない内に紗菜の目からは涙が溢れていた。

「ちょっ……泣かれると悪いことしたみたいじゃないですか」
「したでしょ……!」

 些か慌てた様子の晃だが、自分が悪いことをしたと思っていないようだ。
 それが腹立たしくて紗菜はぺちんと晃の腕を叩く。

「ははっ、猫パンチみたいですね。可愛いですよ」

 ぺちん、ぺちん、何度叩いても晃にはダメージがないのだろう。紗菜にとっては精一杯の抗議だが、彼はどこかくすぐったそうにクスクスと笑っている。それでも紗菜はぺちぺちと叩き続けた。暴力は好まないが、他に方法がなかったのだ。

「俺は先輩にも気持ちいいこと知ってほしいだけですし、一番嫌がることはしないであげましたし、そもそも施したい気持ちって悪いことですかね?」
「うぅ……嫌なのに……からだ、変なの……!」

 頬を撫でられ、紗菜は遂に手を止めて白状した。
 中途半端にされたまま彼だけ射精して満足してしまったのだ。ボロボロと零れる涙が止まらないほど紗菜にとっては辛いことだった。とにかく体が疼いて気持ち悪いのだ。

「そんな物欲しそうな顔されたら今日は我慢しようと思ったのに我慢できなくなっちゃうじゃないですか」
「嘘吐き……!」

 困ったように笑う晃が誠実な男でないことはわかっていたのに、そう言わざるを得なかった。
 今まで散々丸め込んできたくせに、どうして約束を守ったのか。我慢してこなかった男がなぜ今日は約束を破らないのか。
 約束を守ってほしかったのに、今や自分の方が理不尽なことを言っているのかもしれない。彼のせいであるにもかかわらず。

「本当ですよ? 可愛い彼女は大事にしたいです。長く付き合いたいですから」

 よしよしと宥めるように軽く抱き締められて肌が触れただけで秘筒が収斂する。彼が終わっても紗菜の体は終わっていないのだ。
 紗菜は彼の腕に強く爪を立てる。たとえ、晃のようなとんでもない嘘吐きが相手であっても、紗菜としても他人を傷つけたくはない。それなのに無意識にそうしていた。逃すまいとするかのように。
 晃は痛がるわけでもなく、怒るわけでもない。ただ優しく、より強い力で紗菜を抱き締める。触れ合う肌に紗菜は不快感を覚えるわけでもなく、むしろどこか安心して、紗菜は指先に力を込めるのをやめてしまった。

「今度は先輩がムラムラして眠れなくなっちゃったんですね」
「ひっく……気持ち、悪いの……! やなの!」

 晃の言うムラムラという感覚が紗菜にはよくわからない。あるいは認めたくないのかもしれない。
 果てを知っているからこそ中途半端に思えてしまうのだ。まるで八つ当たりしているような気分だが、紗菜にその果てを教えたのは晃である。
 晃に無理矢理快楽を教え込まれたせいで紗菜の体はおかしくなってしまったのだ。

「ムラムラして辛くて寝れない俺の気持ち、少しはわかりました?」

 紗菜はハッとして晃の言葉を思い出す。

『ムラムラして辛くて寝れる感じじゃないんです。発散しないとダメです』

 そう言っていた彼が眠れるように仕方なくこの行為に応じたはずだった。それなのに、今度は紗菜が眠れなくなってしまった。
 これが狙いだったのか。わからせるために、約束を守ったのか。

「まだ二回目なのに紗菜先輩の俺のチンポほしくなっちゃうくらい気に入ってくれてたんですね。嬉しいですよ」
「変なこと言わないで……! ひゃあぁっ!」

 するりと手が足の間に伸び、未だに蜜を潤ませている秘唇を撫でられて紗菜の体がビクンと跳ね上がる。既に知っている本当の終わりを迎えられなかった体は燻っていた火が一気に燃え上がるようだった。

「変なことじゃないですって。泣いちゃうぐらいほしいくせに」
「あぅ…… あうぅっ!」

 意地悪く囁かれながら秘芽をも掠める指先に翻弄されて紗菜は嬌声をあげることしかできない。快楽を求めているわけでもない。セックスをしたくもないのに、せざるを得ない。快楽を感じても満たされないことがあると知ってしまった。

「紗菜先輩の体を変にしちゃった責任とります」

 そう言って離れていった晃は再び避妊具を装着しているらしかった。
 責任などと言っても、結局は彼に都合が良いように持ち込まれてしまったのだ。
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