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答えは三人で
新たな提案
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ひどい倦怠感で実結は体は沈み込むようにソファーに、頭は右隣にいる和真に預けていた。三人掛けのソファーに実結を真ん中にして並んで座っている。同じソープの匂いがするのは不思議な気分だった。
体を動かすのが億劫で、水の入ったグラスさえ気付いたどちらかが取ってくれるのに任せている。しかし、水を飲んでも、元々強くない喉が酷使されて違和感が消えない。
シャワーを浴びさせてもらってすっきりしたが、まだ頭の中は霞がかかっている気がする。夢を見ていたような現実味のなさだが、確かな疲労感が現実だったことを教えてくれる。服も大人しく着せてもらってしまったくらいだ。
和真はベッドで休んで良いと言ってくれた。実結自身もベッドを占領して本格的な眠りに落ちてしまいたい誘惑に駆られていたが、慶は違う。
今も答えを求めるように強い視線を送ってくるのだ。
「あれだけしても大丈夫って和真先輩効果は凄いですね。目がハートになってたんじゃないですか?」
慶の言葉には小さな棘を感じる。実結が和真を好いていることをわかっているくせにひどい言い方だと思っても恨み言を返す気力もない。慶のせいでこうなってしまったというのに。
今、和真の肩を借りているのも慶の方に傾いた頭を彼が押したからだ。まるで今だけ夢を見させてくれるかのようだった。左隣に慶の体温を感じるからこそ実結は戸惑っているのだが。
「でも、まあ、これで俺ともできそうだし、和真先輩に感謝してあげますね」
慶も様子を見ながらしていたのだろうが、実結には激しすぎる行為だった。それでも最後は恐怖など嘘だったかのように快楽を貪ることしか考えられなかった。
和真がいたからこそ、どんな行為も受け止めようと思えたのは事実だ。未練もあったが、彼の存在は心強くて慶に向き合おうと思えた。それでも、落ち着きが戻れば少しずつ彼を受け入れることの困難さを実感させられていた。
「次は俺と二人でしましょうね」
そっと誘いを耳に吹き込まれ、びくりと実結の肩が跳ねる。予想はしていたものの、実際言われると身構えずにはいられない。
「早速、明日したいところなんですけど」
「む、無理……」
「じゃあ、来週ってことで」
初めての行為から一週間経って、今日だって慶は即座に性行為に及ぼうとしたのだ。彼は恋愛関係に明らかにそういう行為を求めている。けれども、実結はやはりまだ早いと思ってしまうのだ。
「しなきゃダメなの……?」
「先輩、体力ないですよね。でも、する内につくんじゃないですかね」
慶ははっきりとは言わないが、彼といる以上性行為が避けられないものだと改めて認識して実結は気が遠くなりそうだった。側にいてやることはできても、そういったことを求められると思えば受け入れ難い部分がある。
あれだけのことをしても羞恥は消えない。ただでさえ和真が聞いているのに、考えたくないと思ってしまう。
心が和真のところに置き去りになったまま逆らえずに体だけ支配されてしまうだろう。
不安になって俯けば、右から頭を抱き寄せられる。
「大丈夫だよ。怖くない。大丈夫」
黙っていた和真が、安心させるように優しい声をかけてくれる。髪を撫でられるのが嬉しくて目を細めれば左手がぎゅっと握られる。
「そうです。怖いことなんてないです。気持ち良くなるだけですよ」
その気持ち良くなることが怖いのだとは言えなかった。慣れだと言われてしまえばそれまでだ。
「実結ちゃん、俺から提案があるんだけど、聞く気はある?」
「聞かなくていいです」
慶は即座に阻止するように言ったが、実結にも迷いはなかった。
「聞かせてください」
和真は欲しい言葉をくれる。閉ざされた世界を手探りで行く状況で彼は光明となり、導いてくれる。
「いっそ、俺たちが実結ちゃんを共有するっていうのはどうかな?」
「共有……?」
「三人で幸せを探そう」
力強く言われて実結はそのまま頷いてしまいそうになっていたが、痛いほど握られた手がそれを許さない。
「やっぱり脳味噌溶けてます?」
「このまま表向きには遠間と付き合っていればいい。でも、休みに会う時は三人って言っても俺はこれから免許取ったり、受験関係で忙しくなるから会えない時もある。その時は二人で会って構わないし、だからと言って俺は二人っきりになることを要求しない」
和真の提案は実結にはとても魅力的に思えた。慶との表向きの関係を続けながら和真とも秘密の関係を築く。百パーセント慶が望むようにはならなくても、恐れずに彼の側にいてやることはできる。きっと彼を理解するにはまだ時間が必要だ。
「二人きりでイチャイチャしてもいいんですか?」
「実結ちゃんが嫌じゃなければっていうのが大前提だけど」
和真の配慮は実結の気持ちを楽にしてくれる。慶が相手では選択権がなくなってしまうのだが、和真が間に入ることでやっと実結に権利が与えられる。
「もし、俺が二人にとって邪魔者だと思ったら引く。そうやって、ゆっくり三人で答えを見付けない?」
「邪魔ですよ。役目は終わったんで、さっさと引いてください。答えは出ました。思い出作りは終了です」
試してみたものの、答えを出すにはまだ早いと感じているのに慶は急かしてくる。そうして、実結から選択肢を奪おうとするかのように。
「お前は何を焦ってる? 俺は実結ちゃんをお前から取り上げるつもりはない。答えを出すのをもう少し待ってあげてもいいだろ」
答えを待ってほしいと実結は思っている。もう少し自分の話を聞いてほしいのに、やはり慶は聞く耳を保たないようだ。和真の説得にも意地でも応じないつもりなのだろう。
「……先輩といると実結先輩が汚れていく気がするんです」
「お前が汚したんじゃないのか?」
拗ねたように慶が呟けば、和真の低い声が問う。
自分は汚れているのだろうか。実結が不安になった時、和真にぽんぽんと頭を叩かれる。
「実結ちゃんは綺麗なままだよ。汚いのは俺達だ」
二人を汚いとは思わないが、家に帰って、とんでもないことをしてしまったと自己嫌悪に苛まれるかもしれない。けれども、ストッパーとして調停者として和真がいてくれるのなら乗り越えられる気がしていた。
やはり我が儘で欲張りなのかもしれない。
「自分がどれだけ実結ちゃんを不安にさせてるのかわかってるのか? お前ももう実結ちゃんに無理強いできないと思ったから俺だって妥協してるんだ」
「懐深いとか騙されないでくださいよ。ただの変態ですから。これで諦めてくれないなんて質が悪い」
和真に言われて少しは自分の気持ちもわかってくれるだろうかと実結は期待したが、無駄だったようだ。強い力で和真から引き剥がされる。
「大体、お前の気持ちばっかりで実結ちゃんの気持ちは考えないのか?」
慶は答えないまま実結を抱き寄せる。しかし、実結は反射的に右手を和真に伸ばしていた。
独り善がりの愛に応えてやるのは難しい。一方的な愛を受け入れてやれるほど実結はキャパシティーが大きいわけではない。
「相手の気持ちも考えない自分勝手さが本当に愛だと思っているのなら、お前はまだまだガキだよ」
「……あんたに説教されるとかマジむかつく」
強い力で抱き込まれながら実結は何も解決していないのだと実結は悟る。自分の状態をはっきりさせるのが目的だったが、慶にも何かを感じてほしいと思っていた。
それなのに、慶は和真へ反発するばかりだ。激しく抱かれたのさえ当て付けのように思えてくる。
「答えを出すのはお前じゃない。実結ちゃんだ」
求めるように伸ばした手を掴まれて安堵しながら実結はやはり自分には和真が必要なのだと思った。
体を動かすのが億劫で、水の入ったグラスさえ気付いたどちらかが取ってくれるのに任せている。しかし、水を飲んでも、元々強くない喉が酷使されて違和感が消えない。
シャワーを浴びさせてもらってすっきりしたが、まだ頭の中は霞がかかっている気がする。夢を見ていたような現実味のなさだが、確かな疲労感が現実だったことを教えてくれる。服も大人しく着せてもらってしまったくらいだ。
和真はベッドで休んで良いと言ってくれた。実結自身もベッドを占領して本格的な眠りに落ちてしまいたい誘惑に駆られていたが、慶は違う。
今も答えを求めるように強い視線を送ってくるのだ。
「あれだけしても大丈夫って和真先輩効果は凄いですね。目がハートになってたんじゃないですか?」
慶の言葉には小さな棘を感じる。実結が和真を好いていることをわかっているくせにひどい言い方だと思っても恨み言を返す気力もない。慶のせいでこうなってしまったというのに。
今、和真の肩を借りているのも慶の方に傾いた頭を彼が押したからだ。まるで今だけ夢を見させてくれるかのようだった。左隣に慶の体温を感じるからこそ実結は戸惑っているのだが。
「でも、まあ、これで俺ともできそうだし、和真先輩に感謝してあげますね」
慶も様子を見ながらしていたのだろうが、実結には激しすぎる行為だった。それでも最後は恐怖など嘘だったかのように快楽を貪ることしか考えられなかった。
和真がいたからこそ、どんな行為も受け止めようと思えたのは事実だ。未練もあったが、彼の存在は心強くて慶に向き合おうと思えた。それでも、落ち着きが戻れば少しずつ彼を受け入れることの困難さを実感させられていた。
「次は俺と二人でしましょうね」
そっと誘いを耳に吹き込まれ、びくりと実結の肩が跳ねる。予想はしていたものの、実際言われると身構えずにはいられない。
「早速、明日したいところなんですけど」
「む、無理……」
「じゃあ、来週ってことで」
初めての行為から一週間経って、今日だって慶は即座に性行為に及ぼうとしたのだ。彼は恋愛関係に明らかにそういう行為を求めている。けれども、実結はやはりまだ早いと思ってしまうのだ。
「しなきゃダメなの……?」
「先輩、体力ないですよね。でも、する内につくんじゃないですかね」
慶ははっきりとは言わないが、彼といる以上性行為が避けられないものだと改めて認識して実結は気が遠くなりそうだった。側にいてやることはできても、そういったことを求められると思えば受け入れ難い部分がある。
あれだけのことをしても羞恥は消えない。ただでさえ和真が聞いているのに、考えたくないと思ってしまう。
心が和真のところに置き去りになったまま逆らえずに体だけ支配されてしまうだろう。
不安になって俯けば、右から頭を抱き寄せられる。
「大丈夫だよ。怖くない。大丈夫」
黙っていた和真が、安心させるように優しい声をかけてくれる。髪を撫でられるのが嬉しくて目を細めれば左手がぎゅっと握られる。
「そうです。怖いことなんてないです。気持ち良くなるだけですよ」
その気持ち良くなることが怖いのだとは言えなかった。慣れだと言われてしまえばそれまでだ。
「実結ちゃん、俺から提案があるんだけど、聞く気はある?」
「聞かなくていいです」
慶は即座に阻止するように言ったが、実結にも迷いはなかった。
「聞かせてください」
和真は欲しい言葉をくれる。閉ざされた世界を手探りで行く状況で彼は光明となり、導いてくれる。
「いっそ、俺たちが実結ちゃんを共有するっていうのはどうかな?」
「共有……?」
「三人で幸せを探そう」
力強く言われて実結はそのまま頷いてしまいそうになっていたが、痛いほど握られた手がそれを許さない。
「やっぱり脳味噌溶けてます?」
「このまま表向きには遠間と付き合っていればいい。でも、休みに会う時は三人って言っても俺はこれから免許取ったり、受験関係で忙しくなるから会えない時もある。その時は二人で会って構わないし、だからと言って俺は二人っきりになることを要求しない」
和真の提案は実結にはとても魅力的に思えた。慶との表向きの関係を続けながら和真とも秘密の関係を築く。百パーセント慶が望むようにはならなくても、恐れずに彼の側にいてやることはできる。きっと彼を理解するにはまだ時間が必要だ。
「二人きりでイチャイチャしてもいいんですか?」
「実結ちゃんが嫌じゃなければっていうのが大前提だけど」
和真の配慮は実結の気持ちを楽にしてくれる。慶が相手では選択権がなくなってしまうのだが、和真が間に入ることでやっと実結に権利が与えられる。
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試してみたものの、答えを出すにはまだ早いと感じているのに慶は急かしてくる。そうして、実結から選択肢を奪おうとするかのように。
「お前は何を焦ってる? 俺は実結ちゃんをお前から取り上げるつもりはない。答えを出すのをもう少し待ってあげてもいいだろ」
答えを待ってほしいと実結は思っている。もう少し自分の話を聞いてほしいのに、やはり慶は聞く耳を保たないようだ。和真の説得にも意地でも応じないつもりなのだろう。
「……先輩といると実結先輩が汚れていく気がするんです」
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自分は汚れているのだろうか。実結が不安になった時、和真にぽんぽんと頭を叩かれる。
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やはり我が儘で欲張りなのかもしれない。
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和真に言われて少しは自分の気持ちもわかってくれるだろうかと実結は期待したが、無駄だったようだ。強い力で和真から引き剥がされる。
「大体、お前の気持ちばっかりで実結ちゃんの気持ちは考えないのか?」
慶は答えないまま実結を抱き寄せる。しかし、実結は反射的に右手を和真に伸ばしていた。
独り善がりの愛に応えてやるのは難しい。一方的な愛を受け入れてやれるほど実結はキャパシティーが大きいわけではない。
「相手の気持ちも考えない自分勝手さが本当に愛だと思っているのなら、お前はまだまだガキだよ」
「……あんたに説教されるとかマジむかつく」
強い力で抱き込まれながら実結は何も解決していないのだと実結は悟る。自分の状態をはっきりさせるのが目的だったが、慶にも何かを感じてほしいと思っていた。
それなのに、慶は和真へ反発するばかりだ。激しく抱かれたのさえ当て付けのように思えてくる。
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