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しおりを挟む私、金森小雪は今生を終えようとしている。
目を閉じているけど、周りには確かに誰かがいるようで、時折その誰かの声がうっすらと聞こえ、それらの言葉はおばあちゃんと言っているようだった。
私は、100点満点ではないにしろ、幸せな人生を歩めてこれたと、このいまわの際に考えられる程度には、今生を全うできたのだろうと、その声々を聴いて、少し嬉しさも感じていた。
ふとその声の中に、少し声変わりしたようだけど、確かに孫の声に似た男の子の声が聞こえた。
声が変わるほど会っていなかったのかと少し寂しさも感じたが、何分このまぶたはもう開いてはくれないので、その成長を確認することも、今となってはできない。
ふとその時、その孫から借りた本を思い出した。
何やら異世界転生?とやらで、現世で生を終えた人物が、別の世界に新たな生を受け、第二の人生を始めるというものであり、剣と魔法の世界で生きるというのはどういう苦労があるのだろうと少し興味がある――が、まああれは創作でのお話。
しかし。
(でも、そんな夢物語のような世界も、きっと楽しいのでしょうね……)
まさに今生を終えようとしている私にとって、今風の言葉を借りればタイムリーな話しであるからこそ、このような考えにもつくのだろうかと、表情を変えることが出来ずともニヤけてしまいそうであった。
まあ、なにせ。
(新しく人生を始められるなら、やっぱりとびっきりのべっぴんさん……お人形さんみたいな女の子に……生まれ変わりたいわ……)
もう眠いの、私。
(それで……それで……何かしたいわけではないけれど……)
周りの音がどんどん遠ざかるように感じる。
(けれども、きっと……もっと楽しい人生が……)
感覚もどんどんと薄れていく
(歩めるのかし……ら……)
最期を知らせるように、ほんの一瞬だけだが何らかの機械音のような甲高い音が聞こえ、何も聞こえない完全な闇に落ちていく。
そうして私は85年の生を終えたのだった――
と思っていたのもつかの間。
激しい爆撃音が聞こえ、私は飛び起きた。
「へ!!?なんの音!!?」
私はあたりを見回すと、自身の記憶の中にある最後の光景……病室での光景とはあまりにもかけ離れた環境に、ポカンとした表情を浮かべ、動けずにいた。
瓦礫なのか藁葺なのかわからないが、簡素的な建物を崩して洞穴にしたような場所に身をおいているようで、子供一人が入れるような穴から光が漏れている。
外からはドンドンとけたたましく轟音をあげる音が続いており、気になってしまった私は老体かつ、死に体に鞭打つように身体を動かそうとして、少し違和感を感じた。
多少のだるさや怪我などはありそうではあるが、ものすごく身体が軽い。
今いる場所が件の穴以外からは光が入っていないことから、自分の身体の状態を確認することはできない。
違和感の正体を確認することは後にして、まずは外の確認――をしたその瞬間、私は目を疑った。
「は、へ、え?……え!?」
そこには西洋風の鎧を身に纏う屈強そうな男達と、それらと相対しているであろう巨大な生物……ドラゴンといったか。そのような生物1体とが争っている現場がそこにあった。
男達は時折身体を数メートルも飛ばし、そこから火の玉や巨大な氷を出したりしており、もう何がなんやらわからない状況であった。
「な、な、これは、え?」
状況に混乱していると、ふと男達の中の1人がこちらに気付いたようで、ガシャガシャと鎧の音をたてながらこちらに向かって全力で走ってきた。
「おおい!!大丈夫かああ!!!」
「ひえええああ!?!?」
とてつもなく巨大な男がこちらへ、これまたとてつもなく速い足でこちらへ走って来る様子を見て、私は悲鳴をあげて、その場から逃げ去る。
「!?な、なぜ逃げるんだ!?待ちなさい!!」
「いやぁぁぁぁ!!ころ、殺されるぅぅ!!」
「こ、ころ?んなわけ――あっ!!」
「ひぎゃっ!」
大男から逃げ回るのに必死で、地面の状況をロクに確認していなかった為か、派手に転んでしまった。
その私の声に反応したのかどうかはわからないけれど、その時私は超巨大な生物というか、ドラゴンというか、その2階建てのアパートみたいな大きさのソレと目が合う。
「……こんにちは」
グルゥオオオオオ!!!という咆哮で私の挨拶はかき消され、その口は何かを溜めるかのように光を集めていた。その照準は当然私にあるのだろう。多分まずいことになっている。
「ほぎゃぁぁぁぁ!!」
「こん――ばがや――うらぁぁ!!」
その瞬間、先程まで私を追いかけてきていた男が地面に滑りながら私を抱きかかえそのまま走り抜け、その刹那に先程までの私がいたであろう場所から爆発が聞こえた。
その瞬間、あまりの出来事が続いたことからか、私はまた意識を手放してしまった。
これは最悪なのか、それとも夢に見た最高なのか私には分からないが、1つだけ確かな事がある。
私は、今まで経験した全てが無為になるかもしれない新たな世界に来たのだと、遠くなる爆撃音と男の罵声を聞きながら、そう思った。
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