ダンジョンチケット

１３章 王の戦い

ダンジョンチケット１５０

意識を失った拓武を皆が心配そうに見つめるなか、ハデスは暴走が止まったことにホッと一息いれた。
そして、自身が与えた力が強大になっている事実を受け入れざるおえなかった。

ハデス【流石にクリュメノスの器だな、常識何てもんが存在しないって事か】

ハデスの意味するモノは魔力の上限であり、ハデスが与えた黒い炎は既にハデスの魔力では太刀打ち出来ない程に膨れ上がっていた。
その事実はハデスに新たな決断を迫るものでもあった。

拓武の暴走が切っ掛けで休戦を余儀無くされた竜人族と海王族は互いに争おうとはしなかったが、歩み寄ろうともしなかった。
ただ両者が別れる中心に拓武の存在が横たわっていると言う不思議な光景だけだ広がっていた。

リュトル「皆に伝えよ、此度の戦いは我らの敗けだ！我等、竜人族はアインと手を切る、もし異論があるならば其れは構わん好きにしろ」

リュトルの言葉に各々が顔を見合わせた。
少なくとも、幻想界に戻ってからのリュトルが敗北を口にした事など無かった。
そのリュトルが自ら敗北を口にしたのだ。
竜人族の心の中に広がる動揺は凄まじいモノがあった。

其れは相対していた海王族も同じであった。
血を流す他に争いを終わらせる方法など無いと思っていたのは双方同じであり、竜人族からの敗北宣言など、予想だにしていなかった。

ただ１つ言えるのはオクシードはまるで弟を心配する兄のように、リュトルも大切な兄弟を心配するような暖かい感情が込み上げていたのだ、何より拓武という半人前の王を心配する気持ちに二人は偽りなど無かったのだ。