ダンジョンチケット

夏カボチャ

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19章 月界の長と凍結の支配者

ダンジョンチケット309

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 不適な笑みを浮かべるアースは天高く浮き上がり全てを見渡すようにそして、見下すようにその眼を大きく開いた。

「お前達は皆終わりだっ! 今より太陽は飲まれ、月は光を喪い世界は暗闇となるだろう、永遠の凍結、永遠の終焉っ! 僕の見たかった世界が作られるんだ……その最初の供物になるがいい……」

 しかし、誰一人として、その言葉に動揺しない姿に、アースは不思議と切なさを感じていた。

「寂しいなぁ? もっと絶望してくれないと僕は退屈なんだけど……まぁいいや、後は宜しくねフェンリル、僕はティータイムだ」

 姿を消そうと後ろを振り向いたアースの耳に『ヒャアァァァァッ!!』と響き渡る最初の断末魔、その声にワクワクしながら振り返る。

 そこには、無惨にフェンリルとなった拓武の口の中で、もがきながら手だけが見えているといった光景があり、口元から滴る血液が全てを一瞬で噛み砕いた事を物語っていた。

 皆が騒然とする中、アースはある事実に気づかされる。

「おいっ……フェンリル? いったい何を口にしたッ!! 今飲み込んだのはなんだっ!」

 アースの初めて見せる動揺、それは言葉だけでなく、表情にまで露にするほどの物であった。

 クチャっクチャっと、ホール全体に響くように口の中に残った其れを再度、飲み込んだフェンリル。その光景にアースが我を忘れて怒りのままに飛び込んでいく。

「僕の言うことを聞けないのかっ! フェンリルゥゥゥッ!!」

 向かってくるアースに対して、大きく口を開き、凄まじい雄叫びを放つフェンリル。
 アースの体が雄叫びによる音の振動で一瞬、動きが止まると一気にその鋭く巨大なノコギリのような歯がアースに襲い掛かったのだ。

 あまりの両者の勢いにあてられ、スルトやバーダすらも動けずにいた。

 それ程にフェンリルの攻撃は激しく、アースですら手に余ると言わん状況はまさに終焉へと、向かう序章のようであった。

「なんで! 僕の言葉が聞けないんだっ!」

『アァァァスゥゥゥゥッ!!』

 フェンリルが低く掠れた声を発したのだ。

「やはり、化け物は化け物か、せっかく僕が育ててきてやったのに……フェンリル、もういらないや……」

 アースはフェンリル目掛け圧縮魔法を放つ、即座に躱しながら巨大な爪と牙を前に襲い掛かるフェンリル、互いに譲らないその荒々しく戦う。
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