ダンジョンチケット

１９章 月界の長と凍結の支配者

ダンジョンチケット３１０

　その戦いに割って入ろうとしたのはヨルムンガルドであった。

「フェンリルッ！！　これ以上の振る舞いは赦さぬ！」

　その瞬間、スルト達が立ち上がり、ヨルムンガルドを巨兵族が壁際まで一気に押し戻し壁に叩きつけた。

「拓武の戦いだッ！！　邪魔はさせない！」

　スルトの言葉に皆が一斉に力を込める。動けなかった者達が次々にヨルムンガルドに向かっていく。

「俺の獲物だぞ？　横取りかよ」

　ベルゼの笑いながらの悪態、だが其れをスルトは笑って頷いた。

「拓武がアースを倒した時に我も手柄をたてねば話にならない」

「アハハっ！　ちげぇーねぇや！」

　ヨルムンガルドを前に笑みすら浮かべる光景、誰もがわからぬ未来を前に皆は再度、拓武の勝利を信じたのだ。

「拓武っ！　僕は初めて本気て君が嫌いだァァァ！」

『アァァァスゥゥゥゥッ！！』

　激しいぶつかり合いの中、アースは勝利を目前に計画が狂わされた事実に動揺を露にしていた。

　そして、その瞬間はやってきた。
　フェンリルと化した拓武の爪がアースを押さえつけ、その鋭い牙がアース目掛けて襲い掛かったのだ。

　全員が希望を信じ戦いを見つめ、ヨルムンガルドは必死に父であるアース(ロキ)を助けまいと暴れていた。

『終わりだ！　アァァァーースゥゥゥ！』

「こんなところで……ウオォォォォっ！　拓武っ！」