人外しと精神病院

燈紗那菊(ひしゃなぎく)

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憂鬱な日から非日常への始まり

1.憂鬱な日

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 今日はとても憂鬱な月曜日だ。
昨日は朝も早起きしなくてもいい、ゆったりとした一日だったのに、今日は早起きして、バスに乗り遅れないようにしなければならないという、忙しい日だ。休日と平日のメリハリをつけなきゃいけないのはわかっているものの、どうもできないものだ。

 さて、憂鬱な気持ちで準備した、大学に持っていく物一式を持って家を出よう。
これから僕は、憂鬱な気持ちで駅に行くまでの道を歩き、憂鬱な気持ちで改札を出て、憂鬱な気持ちで揺られながら準急電車に乗り、憂鬱な気持ちで電車を降り、改札を出て、駅を出て、憂鬱な気持ちでバスに乗り、何もすることなく停まる所までボーッと過ごし、憂鬱な気持ちで大学までの十分ほどの道のりを歩くのだ。

 僕の行く大学は、都心の少し離れた所にある、静かな場所だ。結構昔からある大学らしく、有名人もここの大卒だったりするらしい。緑も多くて、落ち着く所だと思う。
ちなみに僕が行く学科は医学部だ。
今日、授業を三つほど取っている。だから、帰れるのは昼過ぎくらいだろうか。校門を過ぎて、自分の教室に向かい、席に座って授業の準備をして授業が始まるのを待とう。
と思っていた所、
「よっ、爽。今日は憂鬱だよなぁ。昨日まで休みだったのに、大学に行かなきゃなんねぇってさ。
ま、そうでもしねぇといつまでも休んじまうかもな」
と僕の友達、下鷲充 かわし みつるが、僕にいつも通り話し掛けてくる。
「そうだなぁ。ここにくるまでずっと憂鬱な気持ちで過ごしてたよ。でも、ずっと休むのもアリっちゃアリかもだけど」
と、さっきまでの憂鬱な気持ちと彼の言ったことで思った事をを素直に話す。
「んー、いいかもしんねぇけど、後々しんどくなりそうだな」
「確かに」
「あ、そうだ。今日授業何取った?何個とった?」
僕たちは他愛もない話をする。
お陰で、暇で仕方なくなりそうだった授業が始まるまでの時間が暇じゃ無くなった。

授業のチャイムが鳴った。

午前中の授業が終わり、昼食でも食べてから家に帰ろうと思い、学食にいるであろう、充を探す。
いた。充も僕に気づいたらしく、こっちにくるように手を振っている。
「俺は日替わりランチにしたんだけど、お前何頼んだ?お、コロッケじゃんラッキー♪」
質問をしているのかしていないのか曖昧みたいなこと言うなぁ……。
「焼きサバ定食にした。今日は和食の気分だったから」
「へぇ、いいじゃん。ちょっと頂戴」
「お前のもくれたらいいよ」
「はいはい、わかってるって」
そう言いながら、僕たちは互いのを一口ほど交換した。やっぱりここの食堂は美味しいものばかりなんだなと、サクサク音を立てるコロッケを食べながら思う。もちろん僕が頼んだ焼きサバ定食も美味しい。白ご飯がホカホカだ。自分で作るよりよっぽど美味しい。
「そういえばさ、今日昼休みの後、特別授業があるんだってよ」
キャベツとコロッケを一緒に頬張りながら充が言う。ちょっと聞こえにくかったが、聞き取れなくはない。
「特別授業?」
思わず箸が止まる。
「そう。なんでも、すげぇ研究者の特別授業らしいぜ」
「ふーん……。なんて名前の人?」
「なんだったけな……。えーっと……。あ、そうそうモナカみたいな名前の人だ」
「ちゃんと思い出せないんかい」
「人の名前覚えるの苦手なんだって」
「まぁそうだろな。僕の名前も簡単なはずなのに1日のうちに7回も聞いてくるって」
「そんときは悪かったって」
「いいよ。全然気にしてないし」
「あ、マジ?サンキュー」
「……」
全く……。反省の色が薄いというかないというか……。
もなか……研究者……なんか聞いたことはある気がするけど、よく思い出せない。でも……、なんだか気になるな。行ってみようか?特別授業に。などと考えながらサバ定食の最後の一口を食べる。
あ、そうだ。
「なあ、その人って男?女の人?」
「男らしいけど。あ、なんか外国人みたいな見た目してるらしい。純日本人らしいけどな。」
なんか妙に詳しいな。
「どこでそんな情報知ったんだ?」
「あぁ。数学の咲坂さきざかが言ってたんだよ。その人に助けてもらったことがあるんだとさ。」
ますます気になる。咲坂先生を助けたという事もだが、すごい研究者って……。どれだけすごいのだろう?そういえば、咲坂先生は、確か……。人外だったはず。人外を助けた研究者?……直接見に行ったほうがいいみたいだ。
「お前は見に行くのか?充」
「ああ。行きたいんだけど、授業取っちゃってさ見に行きたくても、行けないんだよな」
困ったな。こういうのは一人で行くのは少し気が引ける。他の友達を誘おうか?
「そっか。他のやつを誘って行ってみるよ。場所は?」
「おう!明日どんなんだったか教えてくれよな!あー……確か、第一講堂だと思う」
「わかった。じゃあ、また明日」
「ん、じゃあな」
そう言って僕たちは食堂の席を立ち、お盆を持って返しに行った。
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