2 / 4
憂鬱な日から非日常への始まり
2.特別講義にて
しおりを挟む念のため、大学の掲示板を見ていこう。充を疑っているわけではないが、確証して言ってはなかったので見に行くだけだ。よし、第一講堂だ。
さあ、行こうと思った所、
「ねぇねぇ、爽くん。この後授業ないんでしょ?一緒に帰ろうよ。」
嫌なのに捕まった。彼女は開海 集美。いや、僕が彼女のことを嫌なんじゃ無くて、彼女の言ってもないのに、相手がいけると思って行動するところが嫌なのだ。
まぁ、そう言いつつも僕の彼女であることには変わりないのだが。
「あー、ごめん。この後行くところがあって……。だから今日は……」
「えぇ~いいじゃない、別に。行かなくても死ぬわけじゃないんだから。ね?」
こういうところだ。こういうところが嫌なんだ。人の話を聞かないところ。いえば直してくれるが、またちょっとすると出てしまうのだ。癖みたいなものなんだろう。お陰でこっちは、苦労しているが。それを除けば、いい子なんだけど。
「今日限りのやつだから、今日行かないともう行けないかもしれないんだ。だから今日は、一緒に帰れないんだ。ごめんね」と、やんわり彼女の誘いを断る。
「そっか、じゃあ仕方ないね。それってどれくらいで終わるの?」
まさか待ってくれるつもりなのか?掲示板を見た限り、2時間ほどあったはず。そこまでして僕と帰りたいということか。そういうところは愛おしいと思う。
「えーっと二時間後くらいかな?」
「あー、長いね。でもそれくらいなら待てるよ。終わったら連絡してくれる?」
「え、いいの?」
「うん!いいよ。爽くんに話したい事いっぱいあるし。中庭のカフェテリアで待ってるね」
「ごめんね。でもありがとう。終わったらすぐ連絡して、すぐに行くよ」
「ふふ、分かった。じゃあまた後でね」
「うん、また後で」
まさか本当に待ってくれると思っていなかった。どうやら普通に人を待つのと、恋人を待つのとでは違うらしい。これは終わったらすぐに怒られない速さで走らなくては。
さて、そろそろ講堂に行こう。遅刻はしたくない主義なのだ。
第一講堂に行くと、それなりに人はいたが、自由参加の為なのか、やっぱり人がまばらだ。僕とおんなじ考えの人がいるらしく、前に座っている女子二人組は特別授業の先生がどんな人か、 楽しそうに話している。僕は後ろあたりの窓辺に座った。みんな少し暇そうだ。ルーズリーフを机の上に出して待つ。桜の花びらが散っている。綺麗だ。
そろそろすごい研究者とやらが来るはず。
少し重たい鉄の扉が開いた。
瞬間、場の空気が変わった。
みんな僕と同じようにびっくりしているようで、異世界にいるような、そんな不思議な空間にいるような感覚だった。
「おや?人が少なめなんだな。やっぱり強制的に参加させた方が良かったか……?いろんな生徒達に僕の話を聞かせたかったんだが……。うーん……。まぁ良しとしよう」
その人を見た瞬間、とてつもない高揚感に駆られた。何だこれは。初恋みたいな感覚だ。いや、初恋なのかもしれない。とても儚げで上品な印象で、白い肌、ベージュを少し濃くしたような色の髪、鬱金色が映える切れ長のつり目、落ち着いた声色……。この世のものではないような、人間ではないようなそんな人だった。とても、とても美しいと思った。そう思ったのは僕だけではないらしい。近くにいた女の子は顔を赤らめている。
「ああ、そうだ。名前を言っていなかったね。僕は真中ハリエだ。今日一日だけだが、よろしく頼むよ。あ、ちなみにもなかは和菓子の方の漢字ではないよ。真ん中とかいてもなかだ。それだけは覚えておいてくれ」
真中 ハリエ。ハーフの人みたいな名前だ。本当に純日本人なんだろうか。
「ああ、あとそれと、僕は純日本人だ。んまぁ、イギリス生まれではあるからわかりにくのかもしれないが。」
イギリス生まれ日本育ちか。英国紳士というわけか?
「さ、そろそろ特別授業といこうか。まぁ、授業というより僕の話みたいなものだが、それでもいいかな?」
目が合った。目を細めて笑みを作りながら、僕を見ているような……。気のせいか?
「さあ、始めよう。君達にとって良い経験となればいいが……。」
それからは、どんな気持ちで授業をしたのか覚えていない。確かなのはあの人に夢中だった事だ。
パァンッ
突然の手を叩く音に正気に戻った気がした。
「さて、そろそろチャイムがなる頃だ。僕の話はこれで終わりとしよう。誰か、黒板を消すのを手伝ってくれないか?一人で消すのには大きいのでね。」
あっという間だった。
前に座っている女の子2人組が、黒板を消すのを手伝っている。周りを少し見たが、僕だけでなく、見れる限りの人はみんな、はっとしたような表情のまま固まっていた。
黒板を消すのが終わったようだ。
チャイムが鳴った。
「さ、チャイムが鳴ったね。では僕はこれで失礼するとしよう。君達に会えて良かったよ。それでは、さようなら」
そうだ、聞きたいことがあったんだった。あの人に。僕は急いで帰る準備をして、後を追った。
「あ、あの! 先生!先生の授業分かりやすくて……。えっと……」
先生がふふっと笑った。優しい笑い方だ。
「それはそれは良かった。君はとても熱心に僕の話を聞いていてくれたね。僕が学生の頃は真面目じゃなかったから、感心するよ」
意外だ。真面目そうなのに。
「あの……また先生に会えますか?」
「勿論だ。だが、僕はずっと研究所に籠っていてね。山にあるんだが、それでも会いにきてくれるかい?」
「はい。必ず。」
「うん、素晴らしい意思だ。僕も君にまた会えるのを楽しみしているよ。いつでもおいで」
「はい」
すごく嬉しかった。あの人と直接話をできたのも、僕が行くのを楽しみしてくれているのだ。僕みたいにあの人と僕と同じような話をした、別の人がいるのかもしれない。その人にも同じように言ってるのかもしれない。それでもいいのだ。いつかはわからないけど、行こう。山にある研究所……あとで調べよう。集美を待たせている。早くカフェテリアへ行こう。集美に連絡をして、返信を待つ。帰ってきた。僕は怒られない速さで走った。
0
あなたにおすすめの小説
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
繰り返しのその先は
みなせ
ファンタジー
婚約者がある女性をそばに置くようになってから、
私は悪女と呼ばれるようになった。
私が声を上げると、彼女は涙を流す。
そのたびに私の居場所はなくなっていく。
そして、とうとう命を落とした。
そう、死んでしまったはずだった。
なのに死んだと思ったのに、目を覚ます。
婚約が決まったあの日の朝に。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
魅了の対価
しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。
彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。
ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。
アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。
淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる