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後日譚
後日譚549.不運な隊長は一人で街を歩かせてもらえない
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ドラゴニア王国最南端の領地を治めるドラン公爵の領地には多くのダンジョンが点在している。
それらは冒険者ギルドが管理している事が多いのだが、実入りが少なく、危険度が高いダンジョンは人気が出ないため公爵が管理をしていた。
定期的に間引きをしないとダンジョンから魔物が溢れ、スタンピードが発生する恐れもあるのでドラン公爵に限らず、ドラゴニアの領地貴族はその規模を申告すれば軍隊を持つ事が許されていた。
そんなドラン公爵が抱える軍隊の中で、『一番不幸な者はだれか』と問われると口を揃えてとある人物の名前が挙がる。また『悪運が強い者が誰か』と問われても同じ人物の名前が挙がる。
悪運だけは強い不幸な男、それがラックである。
その悪運の強さは彼の部隊にも適用されるのか、それともすべての不幸が彼に集まるからかは定かではないが、ラックの隊では未だに死者は出た事がなかった。
そんな彼も結婚適齢期をとうに過ぎている男だ。縁談の話が一つや二つ、入ってきてもおかしくはない。おかしくはないのだが、不運である事で有名な彼に対して知人や友人、ましてや親族を紹介する物好きはいなかったので未だに彼は独身だった。
そんな彼の休日の過ごし方は、街に散策に出る事だった。
与えられた部屋で日がない一日過ごしていても出会いなんてないからだ。
いつも着ている軍服ではなく、あまり使わない私服に袖を通して姿見で変な所がないか確認し終えたラックは、部屋を出ると、町へ繰り出すために兵舎を後にした。
だが、数歩歩かない内に、見覚えのある女性がひょこっと物陰から現れて彼に話しかけた。
「あれー? ラック隊長、おでかけですか~?」
「ん? ああ、暇だし街をぶらぶらしようかなって」
「そうなんですねー。じゃあ、私も暇ですし、ご一緒しますー」
「いや、出来れば一人が……って、人の話聞けよ」
ラックの返事を待たずに「ちょっと待っててくださいね~」と言って兵舎に戻っていく女性を見送ったラックはしばし考えた。
女性を連れていては出会いなんてものは期待できない。だが、鈍い鈍いと言われているラックでも休日をいつも被らせてきては一緒に行動しようとするボニーの気持ちもうすうす気づいてはいた。気づいてはいたが、勘違いという可能性も捨てきれない。
今まで早とちりして痛い目を見たり、悲しい思いをしたりしたではないか。期待しすぎない方が良いだろう。
そんな事を考えていたラックだったが、結局兵舎の前で女性を待つ事にした。
(……っていうか、部隊の中でも一番一緒に過ごす事が多い彼女が不幸体質な俺を本当に好きになんてなるんだろうか。普通に考えたらないよなぁ。やっぱり勘違い――)
と、そこまでラックが考えたところで兵舎から女性が出てきた。
普段の軍服姿ではなく、小柄な体格に似あう可愛らしい服装だった。
彼女の名前はボニー。ラックの部隊の回復魔法の使い手であり、主に負傷したラックを回復する事を任されている人物だった。
私服に合わせたのだろう。可愛らしいワンドを片手に持ち、荷物を入れるための鞄はもう片方の肩から提げていた。
黒い髪と瞳は勇者の血が流れている事を表しているが、本人はそれを自慢する事はなく、年齢よりも幼く見える顔立ちに少々不満を持っている。それがボニーである。
(勇者の血が流れている女性が、わざわざ不運な男を選ぶわけがないな、うん)
その結論に至ったラックは思考を切り替えてボニーに話しかけた。
「ほんとについて来るのか?」
「ラック隊長だけだと大怪我して帰ってきそうですから~」
ニコニコしながらのんびりと答えるボニー。
それに対して一言、二言……いや、いくつも言いたい事があるラックだったが、事実だと言われたらそれ以上言い返す事は出来なかった。
いつも巡っている店を女性を連れて行くわけにはいかない。
だが、ぶらぶらとするだけだと本当に無意味に時間が過ぎて行くだけである。
結局、ボニーを連れてラックが向かったのは最近人気の飲食店だった。
「今代の勇者様が監修されているお店だそうだ。あ、この大陸の勇者じゃなくて別の大陸のだけどな」
「そんな事知ってますよー。別大陸までお仕事をしてきたラック隊長ほどその女性について詳しいわけじゃないですけど、ドランのお店についてはずっとドランにいた私の方が知ってて当然じゃないですか~」
「ん、そうか」
「ちなみに、その勇者様とは仲が良かったんですか?」
「ん? いや、特に仲が良かったとかはないな」
陽太の監視兼護衛兼お目付け役をしていた時に女性がいるお店はいくつも回ったが、同郷の者との交流は少なかった。必然的にラックが関わる事もほとんどなかった。顔を思い出そうとしても曖昧にぼんやりとしか思い出せない。今後は関わる機会が減るだろうから思い出す必要もないだろう。
そんな事を考えながら、長蛇の列をボニーと一緒に並んでいたため、隣からジトッとした目で見てくるボニーの様子にラックが気づく事はなかった。
それらは冒険者ギルドが管理している事が多いのだが、実入りが少なく、危険度が高いダンジョンは人気が出ないため公爵が管理をしていた。
定期的に間引きをしないとダンジョンから魔物が溢れ、スタンピードが発生する恐れもあるのでドラン公爵に限らず、ドラゴニアの領地貴族はその規模を申告すれば軍隊を持つ事が許されていた。
そんなドラン公爵が抱える軍隊の中で、『一番不幸な者はだれか』と問われると口を揃えてとある人物の名前が挙がる。また『悪運が強い者が誰か』と問われても同じ人物の名前が挙がる。
悪運だけは強い不幸な男、それがラックである。
その悪運の強さは彼の部隊にも適用されるのか、それともすべての不幸が彼に集まるからかは定かではないが、ラックの隊では未だに死者は出た事がなかった。
そんな彼も結婚適齢期をとうに過ぎている男だ。縁談の話が一つや二つ、入ってきてもおかしくはない。おかしくはないのだが、不運である事で有名な彼に対して知人や友人、ましてや親族を紹介する物好きはいなかったので未だに彼は独身だった。
そんな彼の休日の過ごし方は、街に散策に出る事だった。
与えられた部屋で日がない一日過ごしていても出会いなんてないからだ。
いつも着ている軍服ではなく、あまり使わない私服に袖を通して姿見で変な所がないか確認し終えたラックは、部屋を出ると、町へ繰り出すために兵舎を後にした。
だが、数歩歩かない内に、見覚えのある女性がひょこっと物陰から現れて彼に話しかけた。
「あれー? ラック隊長、おでかけですか~?」
「ん? ああ、暇だし街をぶらぶらしようかなって」
「そうなんですねー。じゃあ、私も暇ですし、ご一緒しますー」
「いや、出来れば一人が……って、人の話聞けよ」
ラックの返事を待たずに「ちょっと待っててくださいね~」と言って兵舎に戻っていく女性を見送ったラックはしばし考えた。
女性を連れていては出会いなんてものは期待できない。だが、鈍い鈍いと言われているラックでも休日をいつも被らせてきては一緒に行動しようとするボニーの気持ちもうすうす気づいてはいた。気づいてはいたが、勘違いという可能性も捨てきれない。
今まで早とちりして痛い目を見たり、悲しい思いをしたりしたではないか。期待しすぎない方が良いだろう。
そんな事を考えていたラックだったが、結局兵舎の前で女性を待つ事にした。
(……っていうか、部隊の中でも一番一緒に過ごす事が多い彼女が不幸体質な俺を本当に好きになんてなるんだろうか。普通に考えたらないよなぁ。やっぱり勘違い――)
と、そこまでラックが考えたところで兵舎から女性が出てきた。
普段の軍服姿ではなく、小柄な体格に似あう可愛らしい服装だった。
彼女の名前はボニー。ラックの部隊の回復魔法の使い手であり、主に負傷したラックを回復する事を任されている人物だった。
私服に合わせたのだろう。可愛らしいワンドを片手に持ち、荷物を入れるための鞄はもう片方の肩から提げていた。
黒い髪と瞳は勇者の血が流れている事を表しているが、本人はそれを自慢する事はなく、年齢よりも幼く見える顔立ちに少々不満を持っている。それがボニーである。
(勇者の血が流れている女性が、わざわざ不運な男を選ぶわけがないな、うん)
その結論に至ったラックは思考を切り替えてボニーに話しかけた。
「ほんとについて来るのか?」
「ラック隊長だけだと大怪我して帰ってきそうですから~」
ニコニコしながらのんびりと答えるボニー。
それに対して一言、二言……いや、いくつも言いたい事があるラックだったが、事実だと言われたらそれ以上言い返す事は出来なかった。
いつも巡っている店を女性を連れて行くわけにはいかない。
だが、ぶらぶらとするだけだと本当に無意味に時間が過ぎて行くだけである。
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