【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

文字の大きさ
1,362 / 1,408
後日譚

後日譚550.酒乱元奴隷は酒の勢いで解決したい

しおりを挟む
 狼人族の女性シンシーラはシズトの元奴隷であり、現在はシズトの側室の一人だ。
 町で暮らしている奴隷の中でも特に獣人族の女性から憧れの的となっている彼女は、二人目を妊娠してから五ヶ月ほどが経過していた。
 二人目という事や、毎日欠かさずに大地の神を祀る教会に通い、祈りを捧げると共に寄進している結果、とても安定している。
 ストレスのない生活を心掛け、規則正しい生活を繰り返していた彼女だったが、真の誕生日パーティーでのスピーチではストレスを感じていたようだ。

「酔ってれば何ともないのに……今度からはタイミングを考える事にするじゃん」
「それ、最初は良くても増えれば増えるほど難しくなるんじゃないかしら」

 談話室の机に突っ伏しているシンシーラの目の前にカップを置きながら呆れた様子で言ったのは狐人族のエミリーである。
 彼女はシンシーラとは違う理由で奴隷になっていたのだが、彼女と同じシズトの側室という立場を手に入れた獣人族という事でシンシーラと同様に憧れの的となっていた。

「計画的に同じ月に産むように努力するじゃん」
「加護を授かっていないと前後する事もあるんだから難しいって」
「より多く寄進すれば耳を傾けて貰えるかもしれないじゃん」
「流石にそこまでは無理なんじゃないかしら」

 二人がそんなやり取りをしていると、窓が突然開かれ、小柄な女性が中に入ってきた。その後に続いて数人のドライアドも入ろうか、と顔を覗き込んでいたが、シンシーラたちの視線を受けて入ってくる事はなかった。

「窓から入るなって何度言えば分かるのかしら」
「窓から入る方がすぐ着くデス。なんで遠回りしなくちゃいけないデスか?」
「普通、窓は出入り口として使われないからよ」

 そうデスかね、と小鳥のように首を傾げたのは黒い翼が特長的な翼人族の女性パメラである。
 エミリーやシンシーラとは違う理由で奴隷になった彼女は、二人と同じくシズトの側室の座を手に入れる事ができた。ただ日頃町で遊び回っている結果、彼女の事を知る機会が多いからか、憧れよりも「なぜシズト様はパメラ様と結婚されたのか」と疑問を持たれる事が多い女性だった。
 そんな彼女は空いていた席に座ると、机の上に置かれていたお菓子に手を伸ばした。だが、その手を叩いたエミリーは真っ白な毛を逆立たせて「手を洗ってきなさい」と注意した。

「しょーがないデスね~。手を洗ってくるから、パメラの分も取っておいて欲しいデス」
「…………時々頭を小突きたくなるのは私だけかしら?」

 エミリーがそう問いかけたが、体を起こしたシンシーラは肩を竦めるだけだった。



 パメラが戻ってくると、早速彼女は焼き菓子に手を伸ばした。外で遊んできて小腹が空いたようだ。
 そんな彼女の事を放っておいて、先程の話に話題が戻った。

「次はお披露目会よね? そっちの練習は順調なの?」
「順調だったら酒に頼りたい気持ちが湧いてくるわけないじゃん」
「……まあ、そうよね」
「シーラは気にし過ぎデス。ただお話しするだけデスよ?」
「貴族向けの話し方をしなくちゃいけないじゃん。気にしないなんて無理じゃん」
「そうデスか? パメラは全然気にしてないデス。早くパーティーを開きたいくらいデスよ」
「話す内容は覚えたの?」
「?」
「…………こんなにも記憶力がないのにどうして自信満々でいられるのかしら?」
「失敗してもくよくよする事も出来ないからな気がするじゃん」
「記憶力がないのは悪い事ばかりじゃないのね」

 エミリーはカップに入れられた紅茶を飲み干すと、ティーポットに手を伸ばしてお代わりを淹れ始めた。シンシーラは無言でカップを彼女の近くに移動させ、パメラは元気よく「お代わりくださいデス!」と言って羽をバサバサ動かしている。
 そんなパメラに対して注意するエミリーを見ながらシンシーラは小さくため息を吐いた。

「……そんなに気乗りしないのなら、妊娠している事を理由に不参加にしてもいいんじゃないかしら? ストレスは良くないって言うし」
「でも、ルウはするって言ってるじゃん。私だけ逃げるわけにはいかないじゃん」
「妊娠の症状は個人差がある事は多くの人が理解してるでしょうし、そこは気にしなくてもいいんじゃないかしら?」
「私が気にするじゃん。とにかく、参加しないという事は無しじゃん」
「じゃあ練習しまくるしかないわね。……暇だし、今この場で練習する?」
「…………そうするじゃん」
「じゃあパメラは観客をするデスよ」
「観客って言うかただ食べてるだけでしょ」

 エミリーは再び呆れた様子でパメラに行ったのだが、彼女は特に気にした様子もなくケーキに手を伸ばしている。
 そんな自由奔放な女性は参加者にはいないだろうな、なんて事を考えながらもシンシーラはエミリーの前で姿勢を正し、カンペをちらちらと確認しながらスピーチの練習をするのだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

処理中です...