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後日譚
後日譚574.事なかれ主義者は本格的に習う事にした
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朝ご飯を食べたら暇になった。
ジュリウスにお休みを与えるためにファマリーの根元周辺から一歩も出ない、という約束をしたからドランにある大地の神様の教会に寄進をしに行く事も出来ないし、他国からの依頼を消化するために出かける事も出来ない。
暇なだけならいいんだけど、有り余る魔力を使うタイミングがないから魔力が余ってしまうのもなんか勿体ない感じもする。使わなかった分は別の日にストックしたリ、魔力タンクのような魔道具にひたすら魔力を込めたりする事が出来ればいいのに……なんて思った事は何回かあったけど、結局そういう便利な道具は思いつかなかったので手持ちにない。
どうしたものかな、なんて考え事をしながら自分の畑の見回りをしていたら、レヴィさんが「魔道具を作る練習でもしてみたらどうですわ?」と言ってきた。
「魔道具作りには魔力が必要だって話ですわ。これからもジュリウスが休みの日は魔力が有り余ってしまうのは分かり切っているのですし、毎週練習をすれば作れるようになるかもしれないのですわ」
「んー…………まあ、確かにそうだね。そうしたらノエルの負担も少しは減らせるかもしれないし……」
折角これからまとまった時間ができるのならそれをしてもいいな。という事で善は急げで行動に移した。ドライアドたちに後の事は任せて、肩の上から降りる気配のないレモンちゃんをそのままにして僕は屋敷に戻ると階段を上ってノエルの自室へと向かった。
扉をノックしてすぐに中から扉が開けられた。出迎えてくれたのは望愛を抱っこしたエルヴィスだった。
ただ、いつもと様子が少し違って、元気な挨拶をする事もなければノエルに呼びかける事もなく、ただただ場所を空けて中に入るように促して来た。
「……なんかあったの?」
「なんかあったというか……なんもなかったというか……」
歯切れの悪いエルヴィスの視線を追うと、こちらに背を向けた状態でせっせと魔道具作りに励んでいる金髪の女性がいた。エルフと比べると若干短いけれど、純粋な人族ではない証明である細長い耳に、緩く波打っている金色の髪の彼女はノエル。エルフと人間の間に生まれたハーフエルフである。
「……どうしたの、ノエル? なんかあった?」
「べつに、なにもないっすよ、シズト様」
平坦な声音でそう答えたノエルは、最近の彼女にしては珍しくこちらを見る気配がない。……これは知らない内になんかやらかした気がする。
お嫁さんを何人も抱えているとこういう事はごく稀にある。そういう時はとりあえず謝るのが良い気がするんだけど……原因がわからないと謝る事も出来ない。
「エイロン?」
「えっ! そ、そこで俺に聞くんすか!?」
「だってノエルは教えてくれそうにないし……」
「そんな事ないっすよ、シズト様。ボクはちゃーんと、シズト様に教えてるっす。なんにもない、って」
「何もなかったんでしょ? じゃあ何で怒ってるの?」
「怒ってないっすよ。怒っても仕方ないっすもん。ただ、何もない事に対してちょっと思う所があるだけっす」
よく分からないなぁ、と頭を書いたらいつの間にかすぐ近くにいたエルヴィスが僕を見上げ、彼女にしては小さな声で「休みがないのが問題なんだよ」と言った。
彼女の言葉は僕よりも細長いノエルの耳にもしっかりと届いていたようだ。回転する椅子をゆっくりと回し、僕の方を見たノエルはジト目で僕を見てきた。
「そうっす。ジュリウスや、ジューロ、ジュリエッタには休みがあるっすけどボクにはないっす。エイロンやエルヴィスにも休みが与えられるらしいけど、ボクはそういう話が全くないっす。わかるっすよ? 魔道具のノルマを課しているのはシズト様じゃないって事は。でも、エルヴィスやエイロンの休みまで指示したのに、その上司である僕の休みについてなんでホムラ様たちに言ってくれないんすか」
「あー……」
なるほど、確かにこれは何もない事が問題なやつだ。
なんでノエルの休みについて相談してあげなかったのかと問われれば、単純にそこまで意識が向いてなかっただけなんだけど……。それを言っても仕方がない事なのでとりあえずノエルに謝罪した。
「今回ばかりは謝罪ではなく行動で示してほしいっす」
「はい。すぐにやらせていただきます……って、言いたいところだけどジュリウスがいないから二人が帰ってきてからでもいい?」
「……しょうがないっすね。でも、ボクにも休みが貰えるよう二人に言って欲しいっす」
「はい」
ノエルは深くため息を吐くと、再び椅子を回転させて机に向かった。
だが、こちらの方に意識は向けてくれているらしい。背を向けたまま「それで? 何しに来たっすか?」と問いかけてきた。普段通りの声音である。
「いや、ほら、ジュリウスがいないからさ。外に出る事が出来ないじゃん? 加護を使う事もほとんどないから魔力が余っちゃって勿体ないし、まとまった時間もこれから定期的に手に入りそうだからいっその事魔道具作りに本格的に挑戦してみようかなって思って。……僕の発案じゃなくてレヴィさんに言われたからそうしようかなって思っただけなんだけど、僕が魔道具を最低限作ることができる用になったらノエルの負担も少しは減るかもしれないし……」
「…………いいんじゃないっすか? 場所は明日以降ボクの隣に用意させるっすけど、とりあえず適当に椅子と机でも持ってきて真っすぐな線と綺麗な縁を書く練習でもしてるといいっす」
「……それだと魔力減らないんじゃない?」
「魔道具を作る際に使う専用のペンがあるっす。それは魔力をインクに変換する代物っす。最初は均一な線を引く事も難しいと思うっすけど頑張るっす」
「コツとかは何かある?」
「慣れっすね」
「ここでもそれかぁ」
美術や技術家庭科は苦手だったんだけど、頑張ってやるしかないか。
そんな事を思いながら、とりあえずアイテムバッグと繋がっているノエルの机の引き出しを開けて折り畳み式の椅子と机を取り出すのだった。
ジュリウスにお休みを与えるためにファマリーの根元周辺から一歩も出ない、という約束をしたからドランにある大地の神様の教会に寄進をしに行く事も出来ないし、他国からの依頼を消化するために出かける事も出来ない。
暇なだけならいいんだけど、有り余る魔力を使うタイミングがないから魔力が余ってしまうのもなんか勿体ない感じもする。使わなかった分は別の日にストックしたリ、魔力タンクのような魔道具にひたすら魔力を込めたりする事が出来ればいいのに……なんて思った事は何回かあったけど、結局そういう便利な道具は思いつかなかったので手持ちにない。
どうしたものかな、なんて考え事をしながら自分の畑の見回りをしていたら、レヴィさんが「魔道具を作る練習でもしてみたらどうですわ?」と言ってきた。
「魔道具作りには魔力が必要だって話ですわ。これからもジュリウスが休みの日は魔力が有り余ってしまうのは分かり切っているのですし、毎週練習をすれば作れるようになるかもしれないのですわ」
「んー…………まあ、確かにそうだね。そうしたらノエルの負担も少しは減らせるかもしれないし……」
折角これからまとまった時間ができるのならそれをしてもいいな。という事で善は急げで行動に移した。ドライアドたちに後の事は任せて、肩の上から降りる気配のないレモンちゃんをそのままにして僕は屋敷に戻ると階段を上ってノエルの自室へと向かった。
扉をノックしてすぐに中から扉が開けられた。出迎えてくれたのは望愛を抱っこしたエルヴィスだった。
ただ、いつもと様子が少し違って、元気な挨拶をする事もなければノエルに呼びかける事もなく、ただただ場所を空けて中に入るように促して来た。
「……なんかあったの?」
「なんかあったというか……なんもなかったというか……」
歯切れの悪いエルヴィスの視線を追うと、こちらに背を向けた状態でせっせと魔道具作りに励んでいる金髪の女性がいた。エルフと比べると若干短いけれど、純粋な人族ではない証明である細長い耳に、緩く波打っている金色の髪の彼女はノエル。エルフと人間の間に生まれたハーフエルフである。
「……どうしたの、ノエル? なんかあった?」
「べつに、なにもないっすよ、シズト様」
平坦な声音でそう答えたノエルは、最近の彼女にしては珍しくこちらを見る気配がない。……これは知らない内になんかやらかした気がする。
お嫁さんを何人も抱えているとこういう事はごく稀にある。そういう時はとりあえず謝るのが良い気がするんだけど……原因がわからないと謝る事も出来ない。
「エイロン?」
「えっ! そ、そこで俺に聞くんすか!?」
「だってノエルは教えてくれそうにないし……」
「そんな事ないっすよ、シズト様。ボクはちゃーんと、シズト様に教えてるっす。なんにもない、って」
「何もなかったんでしょ? じゃあ何で怒ってるの?」
「怒ってないっすよ。怒っても仕方ないっすもん。ただ、何もない事に対してちょっと思う所があるだけっす」
よく分からないなぁ、と頭を書いたらいつの間にかすぐ近くにいたエルヴィスが僕を見上げ、彼女にしては小さな声で「休みがないのが問題なんだよ」と言った。
彼女の言葉は僕よりも細長いノエルの耳にもしっかりと届いていたようだ。回転する椅子をゆっくりと回し、僕の方を見たノエルはジト目で僕を見てきた。
「そうっす。ジュリウスや、ジューロ、ジュリエッタには休みがあるっすけどボクにはないっす。エイロンやエルヴィスにも休みが与えられるらしいけど、ボクはそういう話が全くないっす。わかるっすよ? 魔道具のノルマを課しているのはシズト様じゃないって事は。でも、エルヴィスやエイロンの休みまで指示したのに、その上司である僕の休みについてなんでホムラ様たちに言ってくれないんすか」
「あー……」
なるほど、確かにこれは何もない事が問題なやつだ。
なんでノエルの休みについて相談してあげなかったのかと問われれば、単純にそこまで意識が向いてなかっただけなんだけど……。それを言っても仕方がない事なのでとりあえずノエルに謝罪した。
「今回ばかりは謝罪ではなく行動で示してほしいっす」
「はい。すぐにやらせていただきます……って、言いたいところだけどジュリウスがいないから二人が帰ってきてからでもいい?」
「……しょうがないっすね。でも、ボクにも休みが貰えるよう二人に言って欲しいっす」
「はい」
ノエルは深くため息を吐くと、再び椅子を回転させて机に向かった。
だが、こちらの方に意識は向けてくれているらしい。背を向けたまま「それで? 何しに来たっすか?」と問いかけてきた。普段通りの声音である。
「いや、ほら、ジュリウスがいないからさ。外に出る事が出来ないじゃん? 加護を使う事もほとんどないから魔力が余っちゃって勿体ないし、まとまった時間もこれから定期的に手に入りそうだからいっその事魔道具作りに本格的に挑戦してみようかなって思って。……僕の発案じゃなくてレヴィさんに言われたからそうしようかなって思っただけなんだけど、僕が魔道具を最低限作ることができる用になったらノエルの負担も少しは減るかもしれないし……」
「…………いいんじゃないっすか? 場所は明日以降ボクの隣に用意させるっすけど、とりあえず適当に椅子と机でも持ってきて真っすぐな線と綺麗な縁を書く練習でもしてるといいっす」
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