【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

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後日譚

後日譚586.事なかれ主義者は警戒した

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 ユウトからの手紙を貰ってから数日後、彼がファマリアにやってきたとジュリウスから報告があった。

「随分と早いね。転移系の魔法が使えるのかな?」
「各地に派遣している者たちからの報告をまとめると、加護による高速移動だと推察されます」

 どうやら返信を貰ってすぐに飛んできたらしい。
 リヴァイさんが連れてくる事も想定していたので最悪、翌日に来ても大丈夫なように気持ちを落ち着かせていたので問題ない。

「いかがなされますか?」
「予定通りすぐに会うよ」
「私は本当に行かなくていいのですわ?」
「うん。大人しくお留守番しててね。セシリアさん、レヴィさんの事はよろしくね?」
「かしこまりました」
「ドーラさんも」
「ん、分かった」
「ラオも連れてかないのですわ?」
「ギルドマスターの仕事があるから」
「じゃあ、シンシーラ……は、私と同じ理由で駄目ですわね。パメラは?」
「パメラを連れてくと別の問題が発生しそうだから。護衛に関してはジュリウスたちだけで十分だよ。それに、僕だけの方が彼らも楽だろうし」
「そうですね。守るべきものが少なければ少ないほど動きやすくなります。もちろん、他の方々がいらっしゃっても守り切る事はできるという自負はありますが、万全を期すのならばシズト様だけの方がいいでしょう」

 ジュリウスの言葉を聞いてレヴィさんはそれ以上何も言わなくなった。
 レヴィさんとドーラさんがいつも通り過ごせるようにサクッと終わらせる事を意識しておこう。
 そんな事を思いながら僕は数人のドライアドたちを体に引っ付けたまま、世界樹の番人を引き連れて迎賓館へと向かうのだった。



 今回はエルフたちの正装を着て対応をするので迎賓館までは馬車で移動していた。
 馬車の周囲には仮面をつけたエルフだけではなく、大量のドライアドもついて来ていた。どうやら護衛のつもりのようだ。
 僕や子どもたちの誕生日の度に行われているパレードの成果なのか、それともドライアドの習性を活用しているのかは分からないけど、一糸乱れぬ行進だった。
 その様子をレモンちゃんを含めた他のドライアドたちと一緒に窓から眺めていると馬車が止まった。どうやら迎賓館に着いたようだ。
 扉が外から開けられたので立ち上がると、それまで窓際に張り付いていた子たちが今度は服に張り付いた。
 馬車から降りると、迎賓館の入り口と、馬車の間に一人の男性が片膝をついて首を垂れ、じっと動かずに待っていた。
 その人物の所へ行く前に、僕の姿が見えた途端に沸き起こった歓声を上げている町の子たちに向けて愛想を振りまいておく。正装を着ているのならそういう事も仕事の内だってリヴァイさんが以前言っていたからだ。
 歓声を上げている人たちに手を振っている間、黒髪の男性はその場からピクリとも動かない。仮面をつけたエルフたちが周囲を取り囲んでいても気にした様子もない。それはこの状況でも何とでもなるから、という自信の表れか、それとも――。
 ジュリウスからの合図があったので手を振るのをやめて彼の元へとゆっくりと進む。せかせかと向かうのも良くないと教わったので、一歩一歩ゆっくりと踏みしめるように歩く。
 ある程度黒髪の人物に近づくと、僕の周りでウロチョロしていたドライアドたちがわらわらと黒髪の人物を取り囲み始めた。ジーッと顔を覗き込んでいる子もいる。

「…………僕が笑いそうになるから彼から離れるように伝えてもらってもいいかな?」
「わかった~」
「いいよ~」
「伝えるでござる」

 体に引っ付いていた子たちにお願いすると、黒髪の人物の周辺にいたドライアドたちが一斉にこちらを見て、それから再び隊列を組むかのように並ぶと僕の周りをウロチョロし始めた。
 ジュリウスの合図とともに僕が歩みを止めると、僕の周りをぐるぐる回っていたドライアドたちもピタッと動きを止めた。
 さて、何と声を掛けようかな。

「……遠路はるばる、お越しいただきありがとうございます。久しぶりですね、ユウト殿」

 僕の声掛けに黒髪の人物――ユウトはさらに頭を深く下げた。

「ああ、そうか。面を上げて発言してもらっていいですよ」
「ありがとうございます」

 最初に礼を述べたユウトは顔をあげて片膝をついたまま僕を見上げてきた。
 あの出来事から数年経っているからか、それともこれまでの苦労からか、随分老けたように見える。まあ、僕もたぶん大人っぽい顔立ちになってるからお互い様だろうけど。

「本日はわざわざお時間を取って頂きありがとうございます。ユウトと申します」
「名前くらいは覚えてますよ」
「名を覚えていただき感謝します。ドラコ家から出奔してからは名をユートに変え、冒険者として活動して参りました。自身の力を試したく、以前シズト様が主宰された大会に参加させていただきましたがわが身の未熟さを思い知らされました。ただひたすら、自分を磨く事だけを考えて北の方で活動をし続けてきましたが、手紙でお伝えした通り加護を授かったのでご意見を頂きたく参上しました」
「そうですか。事情は分かりました。このような場所で話す事ではないので中に入りましょう」

 ユウト改めユートがゆっくりと立ち上がった。周囲のエルフたちの視線は鋭く、周囲を警戒している少数以外は彼の一挙手一投足を監視していた。
 ジュリウスの方へと視線を向けると、彼は心を読む魔道具を持って立っていた。ただ立っているだけなのを確認した後、仮面をつけたエルフの案内で歩き始めたユートの後を追って僕も迎賓館の中に入るのだった。
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