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後日譚
後日譚590.エルフの休日『七日目-①』
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世界樹の番人であり、彼らのまとめ役であるジュリウスの主な仕事はシズトの護衛である。
ただ、まとめ役ともなると他の仕事もある。それらすべてをシズトの近くに控えながら他の者たちに指示を出したり、時には精霊魔法を用いて遠くにいる物に声を届けたりする事によって業務をこなしてきた。
だが、シズトが設けた『お休み』はそれらすべても対象だった。完全なる休日を与えられたジュリウスは緊急の案件以外は報告が来ない事に落ち着かなかったが、週に二回そうなる事を分かっていれば事前にある程度準備をする事もできる。
四回目の休日ともなるとそれらを気にする事もなく過ごす事ができるような状態になっていた。
短時間の睡眠で問題なく過ごせるように長い年月をかけて訓練されたジュリウスは必要最低限の睡眠をとると目を覚まして行動を始めた。まだ外は日が昇る前である。
着替えを済ませ、最低限の護身用の装備を身につけたジュリウスは部屋の扉を静かに開け閉めして自室を出ると、そのまま外に出た。
真っ黒な肌のドライアドたちが闇夜に紛れてジュリウスに近づいていたが、彼は気にする様子もなく畑の中を歩く。そんな彼の頭上から大きな翼をはばたかせる音が聞こえた。
「こんな時間にどこに行くデスか?」
彼が立ち止まって上を見上げると、そこには真っ黒な翼をバサバサと動かして空を飛んでいる翼人族の女性がいた。シズトの妻の一人であるパメラである。
闇夜に溶け込むような黒髪と黒い翼を最大限に生かすためか、暗闇に溶け込むような黒い防具を身につけているが、それらは自在に飛ぶ事を重視されているのか防御力は心許ない魔物の皮で作られていた。
「ファマリアです」
「こんな時間に何しに行くデスか? お酒でも飲むデスか? それとも賭け事をしに行くデスか!?」
「どちらでもないですよ。劇場に行くんです」
「劇場デスか。こんな時間にやってるデスか?」
「いえ、やってないですね」
「じゃあ何をしに行くデスか?」
「前売り券を買うための列に並ぶんです。この時間に出れば十中八九いい席を確保できますからね」
「そうなんデスね。……転移陣でやってきた他の人たちも一緒デスか?」
「そうですね。私と同じように演劇に興味がある者もいたようなので、別の時間に講演されるものについては協力し合って席を取るようにする事にしたんです」
パメラは聞きたい事を聞けて満足したのか、再びバサバサと翼をはばたかせて本館と呼ばれている屋敷の屋根の上へと向かった。それを見届けたジュリウスは、転移陣でやってきた他の世界樹の番人たちと合流すると、ファマリアへと向かうのだった。
シズトに関する劇はファマリアではとても人気な演目の一つである。
それはファマリアで暮らす者たちが少なからずシズトに興味を持っているからという事もあるが、ユグドラシルからエルフたちがやってきてはそれを見ようとするからというのもあった。
前売り券を無事に確保したジュリウス一行は劇を目当てに集まってきた人々の波をすり抜けて手近な飲食店へと入った。
店の中は前売り券を手に入れようとやってきた人々で賑わっていたが、幸いな事にあまり待つ事なく席に通された。
「手に入ったか?」
「ハッ。無事に入手する事が出来ました」
「私の方は残念ながら一番よく見える席は取れなかったです。もう少し早く並び始めてもいいかもしれません」
「……いや、しばらくはあの時間で様子を見よう。あまり早く起きてもまだ眠られていないシズト様に気付かれる恐れもある」
「お言葉ですが、気づかれてもよろしいのではないでしょうか? 休日は仕事に関係する事じゃなければ好きに過ごして良いと仰っておられたんですよね?」
「万が一目撃されても飲食店で飲み会をしていたとでも言えば……あ、いえ、シズト様に嘘をつけばいいというわけではないです! 実際、こうして食事をしているわけですし……」
もごもごと顔に古傷のあるエルフが言った所で首輪をつけた店員が料理を机に並べ始めた。
「まだ注文してないが?」
「えっと、表の看板は御覧になってませんか? 朝のこの時間は決まった物しか出さない事にしてるんです」
「そうか。すまない、見落としたようだ」
「いえ、こちらこそ説明をするべきでしたね」
「いや、そういう特別扱いはしなくていい。代金は?」
「あちらで清算するので食事を終えたら来てください」
「分かった」
ジュリウスとやり取りを終えた店員が慌てた様子で仕事に戻っていく。
それを見送ったジュリウス一行は、とりあえずトーストとゆで卵をぺろりと平らげると、紅茶を飲みながら本日の公演予定を確認するのだった。
ただ、まとめ役ともなると他の仕事もある。それらすべてをシズトの近くに控えながら他の者たちに指示を出したり、時には精霊魔法を用いて遠くにいる物に声を届けたりする事によって業務をこなしてきた。
だが、シズトが設けた『お休み』はそれらすべても対象だった。完全なる休日を与えられたジュリウスは緊急の案件以外は報告が来ない事に落ち着かなかったが、週に二回そうなる事を分かっていれば事前にある程度準備をする事もできる。
四回目の休日ともなるとそれらを気にする事もなく過ごす事ができるような状態になっていた。
短時間の睡眠で問題なく過ごせるように長い年月をかけて訓練されたジュリウスは必要最低限の睡眠をとると目を覚まして行動を始めた。まだ外は日が昇る前である。
着替えを済ませ、最低限の護身用の装備を身につけたジュリウスは部屋の扉を静かに開け閉めして自室を出ると、そのまま外に出た。
真っ黒な肌のドライアドたちが闇夜に紛れてジュリウスに近づいていたが、彼は気にする様子もなく畑の中を歩く。そんな彼の頭上から大きな翼をはばたかせる音が聞こえた。
「こんな時間にどこに行くデスか?」
彼が立ち止まって上を見上げると、そこには真っ黒な翼をバサバサと動かして空を飛んでいる翼人族の女性がいた。シズトの妻の一人であるパメラである。
闇夜に溶け込むような黒髪と黒い翼を最大限に生かすためか、暗闇に溶け込むような黒い防具を身につけているが、それらは自在に飛ぶ事を重視されているのか防御力は心許ない魔物の皮で作られていた。
「ファマリアです」
「こんな時間に何しに行くデスか? お酒でも飲むデスか? それとも賭け事をしに行くデスか!?」
「どちらでもないですよ。劇場に行くんです」
「劇場デスか。こんな時間にやってるデスか?」
「いえ、やってないですね」
「じゃあ何をしに行くデスか?」
「前売り券を買うための列に並ぶんです。この時間に出れば十中八九いい席を確保できますからね」
「そうなんデスね。……転移陣でやってきた他の人たちも一緒デスか?」
「そうですね。私と同じように演劇に興味がある者もいたようなので、別の時間に講演されるものについては協力し合って席を取るようにする事にしたんです」
パメラは聞きたい事を聞けて満足したのか、再びバサバサと翼をはばたかせて本館と呼ばれている屋敷の屋根の上へと向かった。それを見届けたジュリウスは、転移陣でやってきた他の世界樹の番人たちと合流すると、ファマリアへと向かうのだった。
シズトに関する劇はファマリアではとても人気な演目の一つである。
それはファマリアで暮らす者たちが少なからずシズトに興味を持っているからという事もあるが、ユグドラシルからエルフたちがやってきてはそれを見ようとするからというのもあった。
前売り券を無事に確保したジュリウス一行は劇を目当てに集まってきた人々の波をすり抜けて手近な飲食店へと入った。
店の中は前売り券を手に入れようとやってきた人々で賑わっていたが、幸いな事にあまり待つ事なく席に通された。
「手に入ったか?」
「ハッ。無事に入手する事が出来ました」
「私の方は残念ながら一番よく見える席は取れなかったです。もう少し早く並び始めてもいいかもしれません」
「……いや、しばらくはあの時間で様子を見よう。あまり早く起きてもまだ眠られていないシズト様に気付かれる恐れもある」
「お言葉ですが、気づかれてもよろしいのではないでしょうか? 休日は仕事に関係する事じゃなければ好きに過ごして良いと仰っておられたんですよね?」
「万が一目撃されても飲食店で飲み会をしていたとでも言えば……あ、いえ、シズト様に嘘をつけばいいというわけではないです! 実際、こうして食事をしているわけですし……」
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