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後日譚
後日譚594.事なかれ主義者は早く言って欲しかった
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ユートは予定の時刻には既に待ち合わせ場所についていた。ファマリアとファマリーの根元に広がる畑の境界の近くで姿勢よく立っているのを畑側からじろじろとドライアドたちが見ていた。一歩でも入ったらぐるぐる巻きにするつもりなのかもしれない。
「お待たせしてしまいましたか?」
「いえ、少し前に来たばかりです」
「そうですか。それは良かったです」
「シズト、わたくしたちの事を紹介してもらえるかしら?」
「ん? ああ、そうか」
彼に授けられた加護の事を考えると、ここで繋がりを得ておきたいのは当然か。
ランチェッタさんが僕の隣に立った。灰色の目はその場ですぐに片膝をついて首を垂れたユートの頭に向かっているが、普段着用している丸眼鏡をつけていないので睨んでいるようにも見える。
「こちら、僕の側室の一人でランチェッタさんだよ」
「ランチェッタ・ディ・ガレオールよ。こっちは側仕えのディアーヌ。ユート、だったかしら? 今回8の働き次第では、あなたに指名依頼を出す事になるでしょう」
「ユートと申します。一介の冒険者である私がこうして女王陛下の御前に立つのは大変恐れ多い事ですが、ご期待に添える事ができるよう善処します」
「……もういい?」
「いいわ」
「じゃあ移動しようか。今回は転移陣を使うんだけど……とりあえずこの人覚えて貰えるかな? だいぶ覚えやすいと思うんだけど」
なんたって加護を三つも授かってるらしいし。
そんな事をもいながら体に引っ付いているドライアドたちに尋ねると、彼女たちだけではなく、畑の方から集まってきた子たちもジーッと彼を見つめた。ただ、それも長くはなく「大丈夫」とばらばらに言った。
「ドライアドたちとの顔合わせも済んだし、とりあえず入ってもらおうかな。あ、覚えてもらったけど勝手に行動すると面倒な事になるからくれぐれも余計な事はしないでね?」
「心得ております」
ユートを立ち上がらせて僕たちは畑と畑の間を進み、ガレオールにある離島と繋げてある転移陣の元へと向かうのだった。
ガレオール国内に無数にある島々の中でも比較的魔物の被害が少ない島々の中の一つが僕が貰った離党らしい。
最近では大陸間交易船の護衛依頼が減ってしまったことにより仕事にあぶれてしまった魚人たちを雇い、ガレオールの海域内の安全を確保させているそうなので、より安全な海となったわけだけど、それでも魔物が出るかもしれない所で遊ぶ気にはなれないんだよなぁ。
砂浜に立ち、水平線を眺めながらそんな事を思っていると、ランチェッタさんが咳払いをした。
「シズト、準備が整ったわ」
「じゃあ始めようか」
実権の観測をするためにガレオールの宮廷魔法使いだけではなく、他国の有名な魔法使いたちが集まっていた。依頼がたくさん来る事からも分かる通り、他国も天候を操る事ができる加護には期待しているようだ。
注目を集めているユートは気後れした様子もなく、僕の合図を待っていた。
「それじゃあ、とりあえず雨を降るように祈願してもらってもいいかな?」
「かしこまりました」
ここら辺は常夏だけど、雨は普通に降る。降らせようと思えば今すぐにでも降らせることはできるけど、ユートさんはどうなのか。
「【天気祈願】」
ユートが加護を使うために呟いたけれど、特に変化はない。
魔法使いの反応を見る限りだと結構な魔力を使っているようだけど、空は白い雲が風に吹かれて流れているだけで、暗くなる事もなければ、ぽつぽつと天気雨が降る事もない。
「……終わりました」
「変化ないですけど?」
「結構な量の魔力を使いましたが、すぐに雨を降らせるのは不可能だと分かったので、数日後に雨が降るように祈りました」
「そうなんだ……?」
僕が首を傾げているのを他所に、魔法使いたちが話をしていた。
「あれだけの魔力を使っても数日後に変化させる事ができる程度なのか」
「そうなると嵐を鎮めたり、日照りを解消させるのは無理なのでは?」
「やはり神々から直接授かった加護よりも数段劣るな」
「習熟度の問題はあるんじゃないか?」
「少なからずあるだろうが、他の加護も転移者とそれ以外が授かるものではだいぶ効率も効果も違うっていうのは明らかになっているんだ。まじないの神の加護も同様だと考えるのが自然だろう」
「そうなると今後もシズト様に依頼をするしかないのか……」
緊急性の高い物から順番に対応しているからどうしても待たせる事になるし、下手したら順番が来る頃には解決している事もあるからな。僕も残念だ。口に出すと面倒な事になりそうだからニコニコ笑顔をキープしてるけど。
「あの、シズト様……発言してもよろしいでしょうか?」
「いちいち許可を求めなくていいですよ。それで、なんですか?」
「その、大変いい辛い事なのですが、今さっきチャム様から神託を授かりまして……」
「それで?」
「そんな天気を簡単に変えられるような加護だったらもっと信仰を集めてた、との事でした。なんでも、以前は数人の加護を授かった者が協力して何とか嵐を鎮めてたとか……」
……そういう事は早く行って欲しいんですけど? と、チャム様に向けて心の中で悪態をついたけど、最低限ユートと僕が協力している様子を他国のお偉いさんに見せる事が出来たのでまあ良しとしよう。
「お待たせしてしまいましたか?」
「いえ、少し前に来たばかりです」
「そうですか。それは良かったです」
「シズト、わたくしたちの事を紹介してもらえるかしら?」
「ん? ああ、そうか」
彼に授けられた加護の事を考えると、ここで繋がりを得ておきたいのは当然か。
ランチェッタさんが僕の隣に立った。灰色の目はその場ですぐに片膝をついて首を垂れたユートの頭に向かっているが、普段着用している丸眼鏡をつけていないので睨んでいるようにも見える。
「こちら、僕の側室の一人でランチェッタさんだよ」
「ランチェッタ・ディ・ガレオールよ。こっちは側仕えのディアーヌ。ユート、だったかしら? 今回8の働き次第では、あなたに指名依頼を出す事になるでしょう」
「ユートと申します。一介の冒険者である私がこうして女王陛下の御前に立つのは大変恐れ多い事ですが、ご期待に添える事ができるよう善処します」
「……もういい?」
「いいわ」
「じゃあ移動しようか。今回は転移陣を使うんだけど……とりあえずこの人覚えて貰えるかな? だいぶ覚えやすいと思うんだけど」
なんたって加護を三つも授かってるらしいし。
そんな事をもいながら体に引っ付いているドライアドたちに尋ねると、彼女たちだけではなく、畑の方から集まってきた子たちもジーッと彼を見つめた。ただ、それも長くはなく「大丈夫」とばらばらに言った。
「ドライアドたちとの顔合わせも済んだし、とりあえず入ってもらおうかな。あ、覚えてもらったけど勝手に行動すると面倒な事になるからくれぐれも余計な事はしないでね?」
「心得ております」
ユートを立ち上がらせて僕たちは畑と畑の間を進み、ガレオールにある離島と繋げてある転移陣の元へと向かうのだった。
ガレオール国内に無数にある島々の中でも比較的魔物の被害が少ない島々の中の一つが僕が貰った離党らしい。
最近では大陸間交易船の護衛依頼が減ってしまったことにより仕事にあぶれてしまった魚人たちを雇い、ガレオールの海域内の安全を確保させているそうなので、より安全な海となったわけだけど、それでも魔物が出るかもしれない所で遊ぶ気にはなれないんだよなぁ。
砂浜に立ち、水平線を眺めながらそんな事を思っていると、ランチェッタさんが咳払いをした。
「シズト、準備が整ったわ」
「じゃあ始めようか」
実権の観測をするためにガレオールの宮廷魔法使いだけではなく、他国の有名な魔法使いたちが集まっていた。依頼がたくさん来る事からも分かる通り、他国も天候を操る事ができる加護には期待しているようだ。
注目を集めているユートは気後れした様子もなく、僕の合図を待っていた。
「それじゃあ、とりあえず雨を降るように祈願してもらってもいいかな?」
「かしこまりました」
ここら辺は常夏だけど、雨は普通に降る。降らせようと思えば今すぐにでも降らせることはできるけど、ユートさんはどうなのか。
「【天気祈願】」
ユートが加護を使うために呟いたけれど、特に変化はない。
魔法使いの反応を見る限りだと結構な魔力を使っているようだけど、空は白い雲が風に吹かれて流れているだけで、暗くなる事もなければ、ぽつぽつと天気雨が降る事もない。
「……終わりました」
「変化ないですけど?」
「結構な量の魔力を使いましたが、すぐに雨を降らせるのは不可能だと分かったので、数日後に雨が降るように祈りました」
「そうなんだ……?」
僕が首を傾げているのを他所に、魔法使いたちが話をしていた。
「あれだけの魔力を使っても数日後に変化させる事ができる程度なのか」
「そうなると嵐を鎮めたり、日照りを解消させるのは無理なのでは?」
「やはり神々から直接授かった加護よりも数段劣るな」
「習熟度の問題はあるんじゃないか?」
「少なからずあるだろうが、他の加護も転移者とそれ以外が授かるものではだいぶ効率も効果も違うっていうのは明らかになっているんだ。まじないの神の加護も同様だと考えるのが自然だろう」
「そうなると今後もシズト様に依頼をするしかないのか……」
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