【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

文字の大きさ
1,406 / 1,408
後日譚

後日譚594.事なかれ主義者は早く言って欲しかった

しおりを挟む
 ユートは予定の時刻には既に待ち合わせ場所についていた。ファマリアとファマリーの根元に広がる畑の境界の近くで姿勢よく立っているのを畑側からじろじろとドライアドたちが見ていた。一歩でも入ったらぐるぐる巻きにするつもりなのかもしれない。

「お待たせしてしまいましたか?」
「いえ、少し前に来たばかりです」
「そうですか。それは良かったです」
「シズト、わたくしたちの事を紹介してもらえるかしら?」
「ん? ああ、そうか」

 彼に授けられた加護の事を考えると、ここで繋がりを得ておきたいのは当然か。
 ランチェッタさんが僕の隣に立った。灰色の目はその場ですぐに片膝をついて首を垂れたユートの頭に向かっているが、普段着用している丸眼鏡をつけていないので睨んでいるようにも見える。

「こちら、僕の側室の一人でランチェッタさんだよ」
「ランチェッタ・ディ・ガレオールよ。こっちは側仕えのディアーヌ。ユート、だったかしら? 今回8の働き次第では、あなたに指名依頼を出す事になるでしょう」
「ユートと申します。一介の冒険者である私がこうして女王陛下の御前に立つのは大変恐れ多い事ですが、ご期待に添える事ができるよう善処します」
「……もういい?」
「いいわ」
「じゃあ移動しようか。今回は転移陣を使うんだけど……とりあえずこの人覚えて貰えるかな? だいぶ覚えやすいと思うんだけど」

 なんたって加護を三つも授かってるらしいし。
 そんな事をもいながら体に引っ付いているドライアドたちに尋ねると、彼女たちだけではなく、畑の方から集まってきた子たちもジーッと彼を見つめた。ただ、それも長くはなく「大丈夫」とばらばらに言った。

「ドライアドたちとの顔合わせも済んだし、とりあえず入ってもらおうかな。あ、覚えてもらったけど勝手に行動すると面倒な事になるからくれぐれも余計な事はしないでね?」
「心得ております」

 ユートを立ち上がらせて僕たちは畑と畑の間を進み、ガレオールにある離島と繋げてある転移陣の元へと向かうのだった。



 ガレオール国内に無数にある島々の中でも比較的魔物の被害が少ない島々の中の一つが僕が貰った離党らしい。
 最近では大陸間交易船の護衛依頼が減ってしまったことにより仕事にあぶれてしまった魚人たちを雇い、ガレオールの海域内の安全を確保させているそうなので、より安全な海となったわけだけど、それでも魔物が出るかもしれない所で遊ぶ気にはなれないんだよなぁ。
 砂浜に立ち、水平線を眺めながらそんな事を思っていると、ランチェッタさんが咳払いをした。

「シズト、準備が整ったわ」
「じゃあ始めようか」

 実権の観測をするためにガレオールの宮廷魔法使いだけではなく、他国の有名な魔法使いたちが集まっていた。依頼がたくさん来る事からも分かる通り、他国も天候を操る事ができる加護には期待しているようだ。
 注目を集めているユートは気後れした様子もなく、僕の合図を待っていた。

「それじゃあ、とりあえず雨を降るように祈願してもらってもいいかな?」
「かしこまりました」

 ここら辺は常夏だけど、雨は普通に降る。降らせようと思えば今すぐにでも降らせることはできるけど、ユートさんはどうなのか。

「【天気祈願】」

 ユートが加護を使うために呟いたけれど、特に変化はない。
 魔法使いの反応を見る限りだと結構な魔力を使っているようだけど、空は白い雲が風に吹かれて流れているだけで、暗くなる事もなければ、ぽつぽつと天気雨が降る事もない。

「……終わりました」
「変化ないですけど?」
「結構な量の魔力を使いましたが、すぐに雨を降らせるのは不可能だと分かったので、数日後に雨が降るように祈りました」
「そうなんだ……?」

 僕が首を傾げているのを他所に、魔法使いたちが話をしていた。

「あれだけの魔力を使っても数日後に変化させる事ができる程度なのか」
「そうなると嵐を鎮めたり、日照りを解消させるのは無理なのでは?」
「やはり神々から直接授かった加護よりも数段劣るな」
「習熟度の問題はあるんじゃないか?」
「少なからずあるだろうが、他の加護も転移者とそれ以外が授かるものではだいぶ効率も効果も違うっていうのは明らかになっているんだ。まじないの神の加護も同様だと考えるのが自然だろう」
「そうなると今後もシズト様に依頼をするしかないのか……」

 緊急性の高い物から順番に対応しているからどうしても待たせる事になるし、下手したら順番が来る頃には解決している事もあるからな。僕も残念だ。口に出すと面倒な事になりそうだからニコニコ笑顔をキープしてるけど。

「あの、シズト様……発言してもよろしいでしょうか?」
「いちいち許可を求めなくていいですよ。それで、なんですか?」
「その、大変いい辛い事なのですが、今さっきチャム様から神託を授かりまして……」
「それで?」
「そんな天気を簡単に変えられるような加護だったらもっと信仰を集めてた、との事でした。なんでも、以前は数人の加護を授かった者が協力して何とか嵐を鎮めてたとか……」

 ……そういう事は早く行って欲しいんですけど? と、チャム様に向けて心の中で悪態をついたけど、最低限ユートと僕が協力している様子を他国のお偉いさんに見せる事が出来たのでまあ良しとしよう。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

処理中です...