【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ

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後日譚

後日譚595.事なかれ主義者は率先して焼いた

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 折角集まってきてもらった魔法使いの人たちをそのまま返すのは良くない、という事で海辺でバーベキューをする事になった。どうやら元々ランチェッタさんが指揮をしていたようで、別荘の管理をしてくれている子たちは混乱する事もなくテキパキと準備を進めて行った。立食式なのは堅苦しいのが苦手な僕に対して配慮をした結果だろう。
 潮風が苦手なドライアドたちのために魔道具『防風陣』でバーベキュー会場は囲われているので、先程まで引っ付いて大人しくしていたドライアドたちが元気に活動し始めたけど、転移陣で向こう側に戻るためには結界の外側に行かなくてはいけないのでここの子たちにドライアドたちが育てた野菜を取ってくるように指示を出していた。

「精霊の道とかいうの繋げて自分たちで取りに行けばいいのに」
「それは無理だよ、人間さん」
「そうだよ、人間さん」
「こんな場所で私たちの植物は育たないでござる」
「……なるほど」

 彼女たちがよく使っている『精霊の道』を繋げるためには彼女たちが育てている植物が媒体として必要らしい。それなら確かにこんな海辺で繋げるのは無理か。かといって会場を今更移動するのも微妙なのでここの子たちがドライアドに言われるがまま転移陣とここを行ったり来たりしているわけだ。

「あらかた準備は終わったようだから宴を始めるわ。グラスは行き渡っているかしら?」

 ランチェッタさんがディアーヌさんに視線を向けると、彼女は静かに頷いた。
 それを確認したランチェッタさんが乾杯の音頭を取って、立食パーティーが始まった。
 皆がグラスに入れられたワインに舌鼓を打っている間に僕はグラスを近くにいた子に預け、魔道具『魔動グリル』の方へと向かった。魔道具化しているけど、ただの魔力で動くバーベキュー用のグリルである。
 ユートと比べるために僕も加護を使ったけれど、全然余っているのでこういう所で率先して使って行かないと。

「れも~」
「レモンは焼かない方が良いんじゃないかなぁ」

 串に刺したレモンを網の上に置こうとするレモンちゃんを流石に止めた。レモレモ文句を言っているけど、流石に果物を丸ごと焼いて食べるってなっても美味しいとは思えないからなぁ。

「どうしてもっていうならレモンちゃんが責任もって食べてね?」
「もん」

 返事と共にレモンを刺した櫛を網の上に置くレモンちゃん。皮をむいてすらいないあれはいったいどうなるんだろうか。

「人間さん、まだ?」
「まだだよ」
「もういいと思うでござる」
「まだだって」
「そうかなぁ。もういいと思うけどなぁ」
「もはや生だよ」

 ドライアドたち特製の野菜から順番に網に置いたんだけど、レモンちゃんに意識を向けている間で焼けるわけがない。彼女たちは調理していない物をむしゃむしゃ食べているから生でも問題ないんだろうけど、トウモロコシとかはしっかりと焼きたい。
 ドライアドたちは結局自分たちが網の上に置いたものは殆ど焼けていない状態で食べ始めた。ちょっと温かくなったかな? 程度なんじゃないかな、って思ったけど、肩の上のレモンちゃんも含めて全員もれなく気に入ったようで、追加の野菜を投入している。
 僕の分まで勝手に取られないように警戒しつつ、野菜を焼いていると、ランチェッタさんと共に数人の人が近づいて来た。

「なんであなたがそっち側に回っているのよ」
「こうすればみんな自分で焼くんじゃないかなって」

 目論み通り、観測しに来た魔法使いたちは魔道具を使ってそれぞれバーベキューをしながら何やら話をしている。上の立場の人が率先してやった方がこういう事はやってくれるよね、なんて思いながら人の野菜にまで手を出そうとしたドライアドの髪の毛をけん制していると、魔道具にズイっと顔を近づける人がいた。

「いやぁ、シズト様にはいつも驚かされますね! こんなにもいろんな魔道具を作っていらっしゃったんですね!」
「生活に便利そうな物は一通り作ってるんです。だってその方が楽できるじゃないですか」
「それに、すべての人が魔法の恩恵を得る事ができるっすもんね!」
「そこまで考えて作ったわけじゃないですよ。コーニエルさんも焼きますか?」
「いいんすか? じゃあ、お言葉に甘えて失礼しまーす」

 トングをここの管理をしている子たちから受け取ったのはコーニエル・ドタウィッチさんだ。
 こっちの人にしてはそこそこ珍しい黒髪黒目の人物だけど、周りにそういう人が多すぎてあまり珍しくは感じないんだよな。
 そんな事を考えながら焼くスペースを空けると、コーニエルさんは真っ先にお肉を焼き始めた。ドライアドたちが野菜も焼け、と抗議をしているが「あとで焼くっすよ」とのらりくらりとかわしながら肉を焼き続けた。
 彼のお父さんであるフランシス・ドタウィッチ様はいつも通り女性を複数人連れて近くまで来ていたけど、グリルで何かを焼く事はなく、コーニエルさんが焼いたものを嬉しそうに受け取るとそのまま食べていた。

「レモ!」
「こら、レモンちゃん! 丸ごとレモンを他の人にあげちゃダメって言ってるでしょ!」
「レモ~~~!」
「大丈夫っすよ! 絞れば味チェンできるじゃないっすか」
「レモ~~~!」

 丸かじりをしてほしかったレモンちゃんの抗議の声を気にした素振りもなく、櫛から外したレモンを素手で絞ったコーニエルさん。…………さっきまで焼かれてたんだけど熱くないのかな、なんてどうでもいい事を考えながらレモンちゃんを宥めるのだった。
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