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本編その後(番外編)
にわか雨、そして晴天
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本編後の話/甘々
「うわああああ!」
俺は今、言葉では表しきれないくらいの羞恥と後悔をしている。無理に例えを挙げるとするならば、それは今まで生きてきたベスト5には必ず入るだろうと核心出来るレベルだ。
「や、やめて、見ないでください…!」
「何故だ?」
「なぜって、…そんなの、恥ずかしいからに決まってるじゃないですか…っ」
「…俺のことが書いてるんだろ?」
……そう。
何故俺がこんなにも羞恥に陥っているのかというと、俺がストーカーしていたときに集めていた情報を書き綴っていたノートを武宮さんに見られているからだ。
いつもなら妹にも、そしてもちろん武宮さんにも見られないように机の引き出しの奥の奥へと隠しているのだけど、今日に限って直すことを忘れていたまま武宮さんを部屋にあげてしまったため今の状況になっていたりする。自業自得の話だけど、まさか武宮さんがそのノートを手に取るとも俺は思っていなかった。
「武宮さんのことが書いてるから、恥ずかしいんですよ…っ」
無理矢理にでも奪い取ってやろうと試みたのだが、武宮さんはまるで子供をあしらうかのように簡単に俺を払いのける。それでも負けずと武宮さんが持っているノートに手を伸ばせば、今度は身長差を利用して俺が手が届かないことをいいことに、武宮さんは手を上げるのだ。
「い、意地悪です…!」
「順平が可愛いから苛めたくなる」
「……っ、」
普段滅多に表情を変えない武宮さんがふわりと柔らかい笑みを浮かべるものだから、おもわずときめいてしまった。…ああ、ずるい。その笑みはずるいぞ。反則だよ。
「も、もう…好きに見てください」
俺なんかが武宮さんに勝てる訳がないんだ。
それにもう半分以上中身を見られてるんだ。潔く見られる羞恥を選ぼう…。
「ああ、そうさせてもらう」
「……」
そして武宮さんは俺のベッドに腰を掛けて、堂々と中身を見続ける。一方俺はというと黙々とノートを見続ける武宮さんを椅子に座って観察することにした。
紙を捲るゴツゴツとしている男らしい指。意外と長い睫。
そして唇。舐めるように武宮さんの全てを見つめていると、不意に「順平」と呼ばれた。
「どうしました?」
「ここに来い」
「……?」
座っている隣を手で叩いて「ここに来い」と指示してくる武宮さん。一体どうしたのかと思って俺は素直に従う。少し緊張しながら武宮さんが座っている隣に腰を下ろせば、武宮さんはノートのある一点を指で指した。
「…ここ」
「……?」
「違うだろ」
「…あ、」
「間違ってる。書き直せ」
ムッとした表情をした武宮さんが指を指した箇所というのは。「好きなタイプ:妹?」と書いてある所だった。
「………」
そういえば書き直していなかったな。
武宮さんと妹は付き合っておらず、ただ付き合ったフリをしていただけだというのは最近知ったことなのだが、当時の俺がそのことを知るわけがなく。好きなタイプは妹みたいな子だと思って書き込んだ覚えがある。
「書き直してくれ」
「…で、でも何て書き直せばいいんですか?」
「分かるだろ」
「えっと、」
「俺は今誰と付き合っている?」
「…そ、それは…お、俺?」
「ああ、順平だ。俺が好きなのはお前しか居ない。」
「……っ、」
「だから書き直してくれ」
だけど自ら「武宮さんの好きなタイプ:俺」なんて書けるわけがない。そ、そんなの恥ずかしくて死ぬに決まっている。…書き直すことを戸惑っていると、ペンを握っている俺の手を上から握るように重ねてくる武宮さん。そしてまるで自分の手のように俺の手を動かすと、武宮さんは綺麗な字で好きなタイプの横に「順平」と俺の名を綴った。
「…た、けみやさんっ」
「これで完璧だ」
「……!」
満足そうに再び俺が書いたノートを見る武宮さんに再び俺の心臓は馬鹿みたいに高鳴った。そして先程の行為が何故か初めての共同作業、所謂ケーキー入刀みたいだったと顔を赤くして浮かれる俺は本当に馬鹿だと思う。…武宮さんと一緒に居たら、心臓本当に壊れてしまいそうだ。
……ああ、もう…っ。
こんな俺が好きだと言ってくれるなんて「武宮さんの好きなタイプ:最悪」だとしか言えないよ。
END
「うわああああ!」
俺は今、言葉では表しきれないくらいの羞恥と後悔をしている。無理に例えを挙げるとするならば、それは今まで生きてきたベスト5には必ず入るだろうと核心出来るレベルだ。
「や、やめて、見ないでください…!」
「何故だ?」
「なぜって、…そんなの、恥ずかしいからに決まってるじゃないですか…っ」
「…俺のことが書いてるんだろ?」
……そう。
何故俺がこんなにも羞恥に陥っているのかというと、俺がストーカーしていたときに集めていた情報を書き綴っていたノートを武宮さんに見られているからだ。
いつもなら妹にも、そしてもちろん武宮さんにも見られないように机の引き出しの奥の奥へと隠しているのだけど、今日に限って直すことを忘れていたまま武宮さんを部屋にあげてしまったため今の状況になっていたりする。自業自得の話だけど、まさか武宮さんがそのノートを手に取るとも俺は思っていなかった。
「武宮さんのことが書いてるから、恥ずかしいんですよ…っ」
無理矢理にでも奪い取ってやろうと試みたのだが、武宮さんはまるで子供をあしらうかのように簡単に俺を払いのける。それでも負けずと武宮さんが持っているノートに手を伸ばせば、今度は身長差を利用して俺が手が届かないことをいいことに、武宮さんは手を上げるのだ。
「い、意地悪です…!」
「順平が可愛いから苛めたくなる」
「……っ、」
普段滅多に表情を変えない武宮さんがふわりと柔らかい笑みを浮かべるものだから、おもわずときめいてしまった。…ああ、ずるい。その笑みはずるいぞ。反則だよ。
「も、もう…好きに見てください」
俺なんかが武宮さんに勝てる訳がないんだ。
それにもう半分以上中身を見られてるんだ。潔く見られる羞恥を選ぼう…。
「ああ、そうさせてもらう」
「……」
そして武宮さんは俺のベッドに腰を掛けて、堂々と中身を見続ける。一方俺はというと黙々とノートを見続ける武宮さんを椅子に座って観察することにした。
紙を捲るゴツゴツとしている男らしい指。意外と長い睫。
そして唇。舐めるように武宮さんの全てを見つめていると、不意に「順平」と呼ばれた。
「どうしました?」
「ここに来い」
「……?」
座っている隣を手で叩いて「ここに来い」と指示してくる武宮さん。一体どうしたのかと思って俺は素直に従う。少し緊張しながら武宮さんが座っている隣に腰を下ろせば、武宮さんはノートのある一点を指で指した。
「…ここ」
「……?」
「違うだろ」
「…あ、」
「間違ってる。書き直せ」
ムッとした表情をした武宮さんが指を指した箇所というのは。「好きなタイプ:妹?」と書いてある所だった。
「………」
そういえば書き直していなかったな。
武宮さんと妹は付き合っておらず、ただ付き合ったフリをしていただけだというのは最近知ったことなのだが、当時の俺がそのことを知るわけがなく。好きなタイプは妹みたいな子だと思って書き込んだ覚えがある。
「書き直してくれ」
「…で、でも何て書き直せばいいんですか?」
「分かるだろ」
「えっと、」
「俺は今誰と付き合っている?」
「…そ、それは…お、俺?」
「ああ、順平だ。俺が好きなのはお前しか居ない。」
「……っ、」
「だから書き直してくれ」
だけど自ら「武宮さんの好きなタイプ:俺」なんて書けるわけがない。そ、そんなの恥ずかしくて死ぬに決まっている。…書き直すことを戸惑っていると、ペンを握っている俺の手を上から握るように重ねてくる武宮さん。そしてまるで自分の手のように俺の手を動かすと、武宮さんは綺麗な字で好きなタイプの横に「順平」と俺の名を綴った。
「…た、けみやさんっ」
「これで完璧だ」
「……!」
満足そうに再び俺が書いたノートを見る武宮さんに再び俺の心臓は馬鹿みたいに高鳴った。そして先程の行為が何故か初めての共同作業、所謂ケーキー入刀みたいだったと顔を赤くして浮かれる俺は本当に馬鹿だと思う。…武宮さんと一緒に居たら、心臓本当に壊れてしまいそうだ。
……ああ、もう…っ。
こんな俺が好きだと言ってくれるなんて「武宮さんの好きなタイプ:最悪」だとしか言えないよ。
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