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15、魔獣の森で薬草探し
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今日は、魔獣の森の見回りの日だ。ニナリアは馬に乗って、アレンと騎士団の後ろについていった。討伐と違い十人の少人数で、装備も軽装だった。
見回りを定期的に行うのは、魔鉱石の密猟を防ぐためと、遭難している領地民がいないかを確認するためだ。森には珍しい薬草の他にも、果物やハチミツも取れる。森に入るのは制限されていないため、魔獣に襲われる領地民もいるのだ。
森の外に馬をつなぎ徒歩で中に入る。少し開けた場所があり、そこを拠点とした。二名が森の奥へ偵察に向かい、アレンを含む三名が近辺の見回りに出た。ニナリアを含む残り五名はその場で待機した。
治療班はユアンと、ぽっちゃりな青年ミックだ。待機している間に座って、魔鉱石の説明を聞いた。
「魔鉱石の持ち出しと持ち込みは、厳しく制限されています。これは、領地の財源を守るためと、街中での魔獣化を防ぐためです。
証明書がなければ見つかった時点で、原価の半値で買取られます。領地の魔鉱石はすべて、領地の物となっているので、領地民は所持できません」
(ほお~、しっかりしている)
ニナリアは仕組みに感心した。ミックも話に入る。
「瘴気はどこにでもあるので、魔鉱石を持っていると危険なんですよ。それと、高価なので盗難の面でも、持ち歩くのは危険ですね」
「加工のために持ち込む方もいます。持ち込みの場合は、領地の役所で所持品である証明書を発行してもらわなければいけません。これがさっき言っていた証明書です。所持できるのは、重さ500gまでか、五個以下になっています」
魔獣の森の瘴気は、大陸中の瘴気が地中を伝って噴き出しているのではないかと言われている。大きな魔鉱石で十分瘴気を集めることができたら、ドラゴンが誕生するかもしれない。そうなると大陸が焦土と化すことになる。
「それ以上は役所に預けることになっています。引き出す場合は役所と往復しながら、加工したものを見せては魔鉱石を引き渡してもらいます。
魔鉱石に魔獣化を防ぐ魔法陣を付与すれば、準魔鉱石となるので制限からは外れます。そうしてでも加工のためにストラルトに来るのは、ここの料金が一定で安いからなんです」
(ふんふん、なるほど)
ニナリアは興味深く聞いていた。ユアンがニナリアのベルトから下げた、麻の平たい袋に気が付いた。
「それ、魔法袋ですよね」
「そうです……」
前日にアレンからもらったのだ。入れたものを何でも収納できるという魔法の袋だ。取り出したいものを思い浮かべれば、引き出すことが出来る。大きいものは、袋を裏返して中に書かれている魔法陣に当てれば収納が可能で、とても便利だ。二人が背負っているリュックの装備を見て、自分だけ便利なものをもらって申し訳ないなと、ニナリアは少し気まずかった。でも、二人は気にしていなかった。
「便利なようで、不便な袋」
ミックが言って、二人は顔を見合わせて笑った。ニナリアは、?と思った。
アレンの説明では、
『破れて中の魔法陣が破損したら使えなくなるが、予備で同じ魔法陣を書いたカードキーがあるから取り出すことができる。それも使えなくなれば、魔法使いが袋の番号を管理しているので、魔法陣を書いてもらえば取り出せる』
と言っていた。ユアンがニナリアに説明する。
「緊急用では使いにくいんですよ。後で取り出すような、採取するものには便利です」
(そういうことか)
気にしなくていいので、少しほっとする。
「防御の魔法石もそうですが、魔法道具で使い方に注意がいる物は流通していないので、貴重なんですよ」
「防御の魔法石もですか⁉」(広まっていないなんて知らなった!)
「はい、自分から瘴気が出た場合は、暴発するので持っていると危険なんです」
(え~!?)「それ、初めて聞きました……」
ニナリアは、持っていて大丈夫なのか心配になった。
「ニナリア様は大丈夫ですよ。アハハハ」
ミックはニナリアの心配に気が付いて笑う。ユアンも付け足す。
「城で働いてる人たちは大丈夫ですね」
「そうですか。良かったです」
(知らずに他の人に渡していたら大変だった)
ニナリアは、城の人は大丈夫と聞いて安心した。いい人ばかり、ということだなと思った。
近辺の見回りからアレンが戻って来た。
「この辺は大丈夫そうだから、薬草を取りに行ってもいいぞ。一緒に行こう」
「はい」
ニナリアは立ち上がる。アレンは腰に下げていた聖剣を抜いた。聖剣からは薄い赤色のオーラが出ていた。
「聖剣を抜くと、魔獣は近寄ってこない」
「そうなんですか。聖剣があれば、魔獣がいても安心ですね」
「そうだが、聖剣で魔鉱石に触れると消化してしまう。そうなると資源が無駄になるから、普段は使わない」
(え~⁉)
アレンは何かに気づいた。
「どうも、聖剣がお前に近寄りたいみたいだ」
アレンが手を離すと、聖剣がくるりと柄を上にして浮いた。そのままニナリアの所へ寄ってきて、柄を曲げた。
(え? 曲がった?)
「どうもお前が気に入ったようだな。挨拶をした」
(これ、挨拶なんだ)
聖剣はそのままニナリアに柄を向けたままだった。
(剣から圧を感じる)
「そいつの名前はタルガハリだ。お前に触れてほしいようだな」
ニナリアは恐る恐る柄に触ってみた。すると、まばゆい光が放たれた。その場にいた全員が驚いた。ニナリアは驚いて手を離すと、光は消えた。
(何かを吸い取られた……?)
ニナリアはそう思った。
「どういうことだ?」
アレンはいぶかしんだ。そのときだった。
「うわぁぁぁぁ!!」
森の奥から叫び声が届いた。偵察に行った二人だ。
「一人はついてこい。あとはニナリアを守れ」
『はい!』
アレンは指示を出すと、声のほうへ走り出した。
「タルガハリ、案内してくれ」
聖剣が魔獣の出た方向を感知する。アレンはそれを感じ取って進んだ。しばらくすると、黒くて巨大な熊型の魔獣と、騎士が一人剣を構えて対峙していた。もう一人は木の下に座って、左肩を抑えている。
「下がれ」
「はい!」
騎士がどくと、アレンは迷いなく魔獣を切り捨てた。魔獣は消滅したが、魔鉱石は消えなかった。まばゆい光を放つと、光は消え魔鉱石は地面に落ちた。石は透明で三つの塊が連なった形をしており、少し大きめだった。アレンはそれを拾うと腰の袋にしまった。後ろでは、怪我をした騎士に二人が声をかけていた。
「しっかりしろ」
怪我をした騎士は、左肩を噛まれていた。
「状況は?」
「それが、魔獣が走ってきた先に我々がいて、ハリーとぶつかったんです。それで、押し倒されて左肩を噛まれました」
「分かった。すぐに戻ろう。俺が担ぐ」
アレンがハリーを担ぐとすごい速さで走り出した。人を担いでいるのに、あとの二人よりも早かった。
拠点にたどり着くと、怪我をしたハリーを横にする。
「聖水を全部かけろ」
『はい!』
ユアンが傷口部分の服を切り取り、それぞれリュックから聖水を三本ずつ取り出した。アレンはそのときに、ユアンの瓶の一つが光っているのに気が付いた。
二人は肩の傷口に聖水をかけ始める。光っていたものをかけたときに、ハリーの表情が少し和らいだ。しかしすぐに苦しみ始め、容態は思わしくなかった。
ニナリアはそれを見て、呆然としていた。噛まれたら瘴気は体の中に入り込む話を思い出して、手を胸の前で握りしめた。アレンに声をかける。
「アレン」
ニナリアは膝をついているアレンに近づくと、耳元でこそっと告げた。
「……私には、聖女の力があるんです」
「!」
アレンは驚いてニナリアを見た。ニナリアは黙ってうなずく。
「分かった。話はあとで聞く」
アレンはニナリアに静かに答えると、立ち上がって指示を出した。
「ハリーは、俺とニナリアで診療所へ運ぶ。四人は二手に分かれて、異変がないかこの周辺を探索してくれ。三人は森の外に出て、魔獣が森から出て来ないかを確認。いつもの通り、30分したら撤収してくれ」
『はい!』
アレンは、ハリーを担いで森の外に出ると馬に乗せた。ニナリアもあとから付いて行く。二人は馬を走らせ、急いでその場から離れた。
見回りを定期的に行うのは、魔鉱石の密猟を防ぐためと、遭難している領地民がいないかを確認するためだ。森には珍しい薬草の他にも、果物やハチミツも取れる。森に入るのは制限されていないため、魔獣に襲われる領地民もいるのだ。
森の外に馬をつなぎ徒歩で中に入る。少し開けた場所があり、そこを拠点とした。二名が森の奥へ偵察に向かい、アレンを含む三名が近辺の見回りに出た。ニナリアを含む残り五名はその場で待機した。
治療班はユアンと、ぽっちゃりな青年ミックだ。待機している間に座って、魔鉱石の説明を聞いた。
「魔鉱石の持ち出しと持ち込みは、厳しく制限されています。これは、領地の財源を守るためと、街中での魔獣化を防ぐためです。
証明書がなければ見つかった時点で、原価の半値で買取られます。領地の魔鉱石はすべて、領地の物となっているので、領地民は所持できません」
(ほお~、しっかりしている)
ニナリアは仕組みに感心した。ミックも話に入る。
「瘴気はどこにでもあるので、魔鉱石を持っていると危険なんですよ。それと、高価なので盗難の面でも、持ち歩くのは危険ですね」
「加工のために持ち込む方もいます。持ち込みの場合は、領地の役所で所持品である証明書を発行してもらわなければいけません。これがさっき言っていた証明書です。所持できるのは、重さ500gまでか、五個以下になっています」
魔獣の森の瘴気は、大陸中の瘴気が地中を伝って噴き出しているのではないかと言われている。大きな魔鉱石で十分瘴気を集めることができたら、ドラゴンが誕生するかもしれない。そうなると大陸が焦土と化すことになる。
「それ以上は役所に預けることになっています。引き出す場合は役所と往復しながら、加工したものを見せては魔鉱石を引き渡してもらいます。
魔鉱石に魔獣化を防ぐ魔法陣を付与すれば、準魔鉱石となるので制限からは外れます。そうしてでも加工のためにストラルトに来るのは、ここの料金が一定で安いからなんです」
(ふんふん、なるほど)
ニナリアは興味深く聞いていた。ユアンがニナリアのベルトから下げた、麻の平たい袋に気が付いた。
「それ、魔法袋ですよね」
「そうです……」
前日にアレンからもらったのだ。入れたものを何でも収納できるという魔法の袋だ。取り出したいものを思い浮かべれば、引き出すことが出来る。大きいものは、袋を裏返して中に書かれている魔法陣に当てれば収納が可能で、とても便利だ。二人が背負っているリュックの装備を見て、自分だけ便利なものをもらって申し訳ないなと、ニナリアは少し気まずかった。でも、二人は気にしていなかった。
「便利なようで、不便な袋」
ミックが言って、二人は顔を見合わせて笑った。ニナリアは、?と思った。
アレンの説明では、
『破れて中の魔法陣が破損したら使えなくなるが、予備で同じ魔法陣を書いたカードキーがあるから取り出すことができる。それも使えなくなれば、魔法使いが袋の番号を管理しているので、魔法陣を書いてもらえば取り出せる』
と言っていた。ユアンがニナリアに説明する。
「緊急用では使いにくいんですよ。後で取り出すような、採取するものには便利です」
(そういうことか)
気にしなくていいので、少しほっとする。
「防御の魔法石もそうですが、魔法道具で使い方に注意がいる物は流通していないので、貴重なんですよ」
「防御の魔法石もですか⁉」(広まっていないなんて知らなった!)
「はい、自分から瘴気が出た場合は、暴発するので持っていると危険なんです」
(え~!?)「それ、初めて聞きました……」
ニナリアは、持っていて大丈夫なのか心配になった。
「ニナリア様は大丈夫ですよ。アハハハ」
ミックはニナリアの心配に気が付いて笑う。ユアンも付け足す。
「城で働いてる人たちは大丈夫ですね」
「そうですか。良かったです」
(知らずに他の人に渡していたら大変だった)
ニナリアは、城の人は大丈夫と聞いて安心した。いい人ばかり、ということだなと思った。
近辺の見回りからアレンが戻って来た。
「この辺は大丈夫そうだから、薬草を取りに行ってもいいぞ。一緒に行こう」
「はい」
ニナリアは立ち上がる。アレンは腰に下げていた聖剣を抜いた。聖剣からは薄い赤色のオーラが出ていた。
「聖剣を抜くと、魔獣は近寄ってこない」
「そうなんですか。聖剣があれば、魔獣がいても安心ですね」
「そうだが、聖剣で魔鉱石に触れると消化してしまう。そうなると資源が無駄になるから、普段は使わない」
(え~⁉)
アレンは何かに気づいた。
「どうも、聖剣がお前に近寄りたいみたいだ」
アレンが手を離すと、聖剣がくるりと柄を上にして浮いた。そのままニナリアの所へ寄ってきて、柄を曲げた。
(え? 曲がった?)
「どうもお前が気に入ったようだな。挨拶をした」
(これ、挨拶なんだ)
聖剣はそのままニナリアに柄を向けたままだった。
(剣から圧を感じる)
「そいつの名前はタルガハリだ。お前に触れてほしいようだな」
ニナリアは恐る恐る柄に触ってみた。すると、まばゆい光が放たれた。その場にいた全員が驚いた。ニナリアは驚いて手を離すと、光は消えた。
(何かを吸い取られた……?)
ニナリアはそう思った。
「どういうことだ?」
アレンはいぶかしんだ。そのときだった。
「うわぁぁぁぁ!!」
森の奥から叫び声が届いた。偵察に行った二人だ。
「一人はついてこい。あとはニナリアを守れ」
『はい!』
アレンは指示を出すと、声のほうへ走り出した。
「タルガハリ、案内してくれ」
聖剣が魔獣の出た方向を感知する。アレンはそれを感じ取って進んだ。しばらくすると、黒くて巨大な熊型の魔獣と、騎士が一人剣を構えて対峙していた。もう一人は木の下に座って、左肩を抑えている。
「下がれ」
「はい!」
騎士がどくと、アレンは迷いなく魔獣を切り捨てた。魔獣は消滅したが、魔鉱石は消えなかった。まばゆい光を放つと、光は消え魔鉱石は地面に落ちた。石は透明で三つの塊が連なった形をしており、少し大きめだった。アレンはそれを拾うと腰の袋にしまった。後ろでは、怪我をした騎士に二人が声をかけていた。
「しっかりしろ」
怪我をした騎士は、左肩を噛まれていた。
「状況は?」
「それが、魔獣が走ってきた先に我々がいて、ハリーとぶつかったんです。それで、押し倒されて左肩を噛まれました」
「分かった。すぐに戻ろう。俺が担ぐ」
アレンがハリーを担ぐとすごい速さで走り出した。人を担いでいるのに、あとの二人よりも早かった。
拠点にたどり着くと、怪我をしたハリーを横にする。
「聖水を全部かけろ」
『はい!』
ユアンが傷口部分の服を切り取り、それぞれリュックから聖水を三本ずつ取り出した。アレンはそのときに、ユアンの瓶の一つが光っているのに気が付いた。
二人は肩の傷口に聖水をかけ始める。光っていたものをかけたときに、ハリーの表情が少し和らいだ。しかしすぐに苦しみ始め、容態は思わしくなかった。
ニナリアはそれを見て、呆然としていた。噛まれたら瘴気は体の中に入り込む話を思い出して、手を胸の前で握りしめた。アレンに声をかける。
「アレン」
ニナリアは膝をついているアレンに近づくと、耳元でこそっと告げた。
「……私には、聖女の力があるんです」
「!」
アレンは驚いてニナリアを見た。ニナリアは黙ってうなずく。
「分かった。話はあとで聞く」
アレンはニナリアに静かに答えると、立ち上がって指示を出した。
「ハリーは、俺とニナリアで診療所へ運ぶ。四人は二手に分かれて、異変がないかこの周辺を探索してくれ。三人は森の外に出て、魔獣が森から出て来ないかを確認。いつもの通り、30分したら撤収してくれ」
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