2 / 26
第一話
疲労、そして記憶
しおりを挟む
今日のシフトが早上がりで助かった。
昼抜きなのは少しつらいけど、いつもなら、ランチタイムを外せて、ゆっくり食事ができる。
でも、今日は予約してる時間に間に合わせるために、駅のコーヒーショップで軽くすませた。
予約時間まで、少し余裕があるものの、仕事上がりでボロボロの顔で、黒川 智信とは、会えない。どんなに綺麗に化粧しても、あの人には見抜かれるのはわかってる。
あの人の前にいる私は、あの頃の子供の私じゃないって、思ってほしい。
――少しでも綺麗な私でいたいから。
疲れのたまった足は、むくみまくりで、駅ビルの化粧室で軽くもんでみたところで、太さは変わらない。
少し汗ばんだ首筋に、パウダーシートをあてる。
「ふぅっ」
倉庫と店舗の往復で、こんな季節なのに、汗まみれ。
ひんやりした感触と、ほんのりとみずみずしい香り。
そして、厚塗りにならなように気を付けながら、ファンデーションで疲れを隠す。
試しに、笑顔になってみても、鏡の私は、ひきつった笑顔を返してくる。
「はぁぁぁっ」
だめじゃん。大きな溜息が出る。
黒川さんとの出会いは、小学校時代までさかのぼる。
彼は近所に住んでいたお兄さんだった。
小学校一年生のとき、集団登校しているときのリーダーで、よく私の面倒をみてくれていた。
その年は、一年生は私だけだったから、余計に気に掛けてくれたのかもしれない。
幼稚園からあがったばかりの一年生からみれば、六年生なんてものは大人で、恐れ多い存在だった。
でも、いつも気にかけてくれた彼は、とても優しい人で、私にとっての初恋の人だった。
正直、幼馴染というには、年齢も家も離れていた。
集団登校が組まれることがなければ、顔も合わせなかったかもしれない。
そんな彼とは、当然、私の成長とともに同じ時間や場所を過ごす機会はなくなった。
たまたま、仕事帰りに飛び込んだ美容室に、黒川さんがいたのだ。
昼抜きなのは少しつらいけど、いつもなら、ランチタイムを外せて、ゆっくり食事ができる。
でも、今日は予約してる時間に間に合わせるために、駅のコーヒーショップで軽くすませた。
予約時間まで、少し余裕があるものの、仕事上がりでボロボロの顔で、黒川 智信とは、会えない。どんなに綺麗に化粧しても、あの人には見抜かれるのはわかってる。
あの人の前にいる私は、あの頃の子供の私じゃないって、思ってほしい。
――少しでも綺麗な私でいたいから。
疲れのたまった足は、むくみまくりで、駅ビルの化粧室で軽くもんでみたところで、太さは変わらない。
少し汗ばんだ首筋に、パウダーシートをあてる。
「ふぅっ」
倉庫と店舗の往復で、こんな季節なのに、汗まみれ。
ひんやりした感触と、ほんのりとみずみずしい香り。
そして、厚塗りにならなように気を付けながら、ファンデーションで疲れを隠す。
試しに、笑顔になってみても、鏡の私は、ひきつった笑顔を返してくる。
「はぁぁぁっ」
だめじゃん。大きな溜息が出る。
黒川さんとの出会いは、小学校時代までさかのぼる。
彼は近所に住んでいたお兄さんだった。
小学校一年生のとき、集団登校しているときのリーダーで、よく私の面倒をみてくれていた。
その年は、一年生は私だけだったから、余計に気に掛けてくれたのかもしれない。
幼稚園からあがったばかりの一年生からみれば、六年生なんてものは大人で、恐れ多い存在だった。
でも、いつも気にかけてくれた彼は、とても優しい人で、私にとっての初恋の人だった。
正直、幼馴染というには、年齢も家も離れていた。
集団登校が組まれることがなければ、顔も合わせなかったかもしれない。
そんな彼とは、当然、私の成長とともに同じ時間や場所を過ごす機会はなくなった。
たまたま、仕事帰りに飛び込んだ美容室に、黒川さんがいたのだ。
0
あなたにおすすめの小説
罪悪と愛情
暦海
恋愛
地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。
だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――
雪の日に
藤谷 郁
恋愛
私には許嫁がいる。
親同士の約束で、生まれる前から決まっていた結婚相手。
大学卒業を控えた冬。
私は彼に会うため、雪の金沢へと旅立つ――
※作品の初出は2014年(平成26年)。鉄道・駅などの描写は当時のものです。
今宵、薔薇の園で
天海月
恋愛
早世した母の代わりに妹たちの世話に励み、婚期を逃しかけていた伯爵家の長女・シャーロットは、これが最後のチャンスだと思い、唐突に持ち込まれた気の進まない婚約話を承諾する。
しかし、一か月も経たないうちに、その話は先方からの一方的な申し出によって破談になってしまう。
彼女は藁にもすがる思いで、幼馴染の公爵アルバート・グレアムに相談を持ち掛けるが、新たな婚約者候補として紹介されたのは彼の弟のキースだった。
キースは長年、シャーロットに思いを寄せていたが、遠慮して距離を縮めることが出来ないでいた。
そんな弟を見かねた兄が一計を図ったのだった。
彼女はキースのことを弟のようにしか思っていなかったが、次第に彼の情熱に絆されていく・・・。
【完】まさかの婚約破棄はあなたの心の声が聞こえたから
えとう蜜夏
恋愛
伯爵令嬢のマーシャはある日不思議なネックレスを手に入れた。それは相手の心が聞こえるという品で、そんなことを信じるつもりは無かった。それに相手とは家同士の婚約だけどお互いに仲も良く、上手くいっていると思っていたつもりだったのに……。よくある婚約破棄のお話です。
※他サイトに自立も掲載しております
21.5.25ホットランキング入りありがとうございました( ´ ▽ ` )ノ
Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.
ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
運命の番より真実の愛が欲しい
サトウミ
恋愛
田舎娘のゾーイは龍族の王子・シャウロンの『運命の番』だった。
ロマンチックな恋を夢見るゾーイは『運命の番』であるシャウロンと会えるのを楽しみにしていた。
しかし、シャウロンはゾーイに対して素っ気ない。
運命の番だからといって、必ずしも愛し合う関係だとは限らないらしい。
それを悟ったゾーイは、シャウロンのもとから去ることを決意した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる