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ロジータ、街に帰る
第10話 隠蔽と身体強化
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乗合馬車に乗るには、お金が必要です。
残念ながら、マジックバックに入っている私の小銭じゃ、乗れないようです。
一応、インベントリの中には『フロリンダ・デジール』時代の金貨や銀貨等が入っているようですが、この国で使えるのかわかりませんし、そもそも、ロジータが持つような金額ではないのです。
当初、ダンジョンから戻った時に、ドロップ品の売却で帰りの乗合馬車の駄賃になるんじゃないかと思っていたのですが、到達フロアの問題でゴタゴタしていたせいで買取の出張所で売却できなかったのが痛かったです。
移転陣の間に戻って、買取してもらえばいいのかもしれませんが、ギルド職員に捕まるのも面倒ですし、万が一(本当に万が一!)、私を捨てたパーティメンバーが戻ってきてしまったら、もっと面倒です。
――さっさと、ここから離れるに限るね。
ダンジョンの入り口近くは、武器、防具などの店の他、宿屋や飲み屋など、ちょっとした宿場町の様相を呈しています。
この時間帯は戻ってきた冒険者たちで騒めいていて、私一人がここから出ていったところで、気にもしないでしょう。
こっそりと建物の影へと向かいます。
案の定、誰一人、私の動きを気にする人はいません。
――『隠蔽』
心の中でそう呟くと、私の気配が周囲に溶け込むように消えていきます。これで、完全に誰も私に気付くことはありません。
門が何時に閉まるのかはわかりませんが、まだ開かれたままです。
今のうちにと、私は堂々とその場から抜け出すことに成功しました。
――よし。次は『身体強化』
今度は『身体強化』で足を強化します。
元々『猫獣人』として脚力にはそこそこ自信はありました。ただ種族が『黒豹族』に変わったことと、スキルによって強化されることによって、どうなるのかは未知数です。
私は道沿いを、まずはゆっくりと走り始めました。軽いランニング程度のスピードです。
――うん、これくらいだったら、変わらないのね。
「よしっ」
ダンジョンから少し離れて人の姿が見えなくなったところで、私は気合を入れると、走るスピードを本気モードに変えました。
「っ!?」
急な加速に自分でも驚きました。その上、もの凄いスピードで砂埃を巻き上げて走ってます。しかし、驚いたのも最初だけで、すぐにこのペースに馴染んでいます。
――日が落ちててよかった!
実は夜間になるほど魔獣や魔物が襲ってくる可能性が高まるので、この時間にもダンジョンに向かってくるような無謀な者は多くはありません。
私? 私は、ちゃんと魔物除け機能のある黒龍の爪のネックレスをしてるので、問題はありません。
しばらく街に向かって走っていると、少し先に明かりが見えてきました。
たぶん、街とダンジョンの中間にある休憩場所だと思われます。もう、こんなところまで走ってきたのかと、自分の身体能力にビックリです。
――少しスピードを落として……。
さすがに『隠蔽』したまま、砂埃をあげながら走り抜ける気はありません。怪しすぎるし、魔物と勘違いされて襲われたらたまりません。
休憩場所に近づく頃には、ゆっくり歩くペースに変わっています。
チラリと休憩場所の方を見ると、乗合馬車と、他にも馬が数頭見えます。何人かの人の声も聞こえてきました。
――このまま、誰にも気付かれずに通り過ぎてしまおう。
人の声が聞こえなくなるくらいまで離れたとろこで、私は再び、スピードをあげるのでした。
* * * * *
休憩場所にいたAランクパーティの冒険者たちの会話。
「うん?」
「どうした」
「いや、何か気配がしたような」
「なに?」
「……いや、気のせいだろう。おいっ、それ、俺の肉だぞ」
残念ながら、マジックバックに入っている私の小銭じゃ、乗れないようです。
一応、インベントリの中には『フロリンダ・デジール』時代の金貨や銀貨等が入っているようですが、この国で使えるのかわかりませんし、そもそも、ロジータが持つような金額ではないのです。
当初、ダンジョンから戻った時に、ドロップ品の売却で帰りの乗合馬車の駄賃になるんじゃないかと思っていたのですが、到達フロアの問題でゴタゴタしていたせいで買取の出張所で売却できなかったのが痛かったです。
移転陣の間に戻って、買取してもらえばいいのかもしれませんが、ギルド職員に捕まるのも面倒ですし、万が一(本当に万が一!)、私を捨てたパーティメンバーが戻ってきてしまったら、もっと面倒です。
――さっさと、ここから離れるに限るね。
ダンジョンの入り口近くは、武器、防具などの店の他、宿屋や飲み屋など、ちょっとした宿場町の様相を呈しています。
この時間帯は戻ってきた冒険者たちで騒めいていて、私一人がここから出ていったところで、気にもしないでしょう。
こっそりと建物の影へと向かいます。
案の定、誰一人、私の動きを気にする人はいません。
――『隠蔽』
心の中でそう呟くと、私の気配が周囲に溶け込むように消えていきます。これで、完全に誰も私に気付くことはありません。
門が何時に閉まるのかはわかりませんが、まだ開かれたままです。
今のうちにと、私は堂々とその場から抜け出すことに成功しました。
――よし。次は『身体強化』
今度は『身体強化』で足を強化します。
元々『猫獣人』として脚力にはそこそこ自信はありました。ただ種族が『黒豹族』に変わったことと、スキルによって強化されることによって、どうなるのかは未知数です。
私は道沿いを、まずはゆっくりと走り始めました。軽いランニング程度のスピードです。
――うん、これくらいだったら、変わらないのね。
「よしっ」
ダンジョンから少し離れて人の姿が見えなくなったところで、私は気合を入れると、走るスピードを本気モードに変えました。
「っ!?」
急な加速に自分でも驚きました。その上、もの凄いスピードで砂埃を巻き上げて走ってます。しかし、驚いたのも最初だけで、すぐにこのペースに馴染んでいます。
――日が落ちててよかった!
実は夜間になるほど魔獣や魔物が襲ってくる可能性が高まるので、この時間にもダンジョンに向かってくるような無謀な者は多くはありません。
私? 私は、ちゃんと魔物除け機能のある黒龍の爪のネックレスをしてるので、問題はありません。
しばらく街に向かって走っていると、少し先に明かりが見えてきました。
たぶん、街とダンジョンの中間にある休憩場所だと思われます。もう、こんなところまで走ってきたのかと、自分の身体能力にビックリです。
――少しスピードを落として……。
さすがに『隠蔽』したまま、砂埃をあげながら走り抜ける気はありません。怪しすぎるし、魔物と勘違いされて襲われたらたまりません。
休憩場所に近づく頃には、ゆっくり歩くペースに変わっています。
チラリと休憩場所の方を見ると、乗合馬車と、他にも馬が数頭見えます。何人かの人の声も聞こえてきました。
――このまま、誰にも気付かれずに通り過ぎてしまおう。
人の声が聞こえなくなるくらいまで離れたとろこで、私は再び、スピードをあげるのでした。
* * * * *
休憩場所にいたAランクパーティの冒険者たちの会話。
「うん?」
「どうした」
「いや、何か気配がしたような」
「なに?」
「……いや、気のせいだろう。おいっ、それ、俺の肉だぞ」
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