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ロジータ、隣の領を目指す
第29話 ダーウィと馬車
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アーカンスの街を出てしばらくは街道に沿って歩いていましたが、森が見えてきたところで、方向を変えてそちらの方へと向かいました。
森に入り込んで完全に街も人影も見えなくなったところで、スキルの『探知』で周辺を調べました。
――大丈夫そうね。
近くには魔物も人もいないのが確認できたので、一休みしようと立ち止まりました。
「さて、ここまで来ればいいかな」
ミトスドンクのダーウィは、少し息があがっていました。
双子を乗せていたせいもあるかもしれませんが、水で薄めた魔獣用のポーションの効果が思ったよりも早く切れかかっています。
「だいじょうぶ?」
「だいじょうぶ?」
双子たちをダーウィから降ろすと、心配そうに見上げながら声をかけます。しかし、ダーウィの方は返事をする余裕もなさそうです。
私はインベントリから残っていた魔獣用ポーション(牛乳瓶1本くらい)を取り出して、原液のままダーウィに飲ませてあげました。
基本的に魔獣用ポーションは体力と活力がアップするものなのですが、当時王宮勤めの薬師だった友人(フロリンダと同じエルフ)から格安で譲ってもらったモノなので、市販の物よりも効果は別格でした。インベントリに入っていたので、効果はそのままです。
全部飲み切った時。
「ブルルルルッ!」
両方の前足をあげて勢いよく嘶いたダーウィの姿には、先程までの年老いた様子はなくなり、現役時代に戻ったかのようです。
毛艶はピカピカ、目にも力が漲っているように見えます。
――さすが、ヴェラだわ。
かつての友人のことを思い出します。200年くらいだったら、彼女のことだったら、もしかしたらまだ生きているかもしれません。
「すごい!」
「きれいになった!」
双子の嬉しそうな声に、私も嬉しくなります。
「さてと、いよいよ馬車を出すわよ」
双子のエメラルドグリーンの瞳が期待でキラキラしだしました。
これから長く一緒に行動する双子には、インベントリのことを教えてあります。ダーウィのために取り出した魔獣用ポーションが、何もないところから出てきたのを見て、大興奮した双子です。馬車に対しても当然そうなることでしょう。
インベントリから取り出した小型の馬車が、ストンっと軽い着地の音とともに現れると、わー!という歓声が上がります。
見た目は大人が4人乗れるような小型の木製馬車です。荷物は馬車の上に載せるタイプですが、今回は何も載せません。
「さぁ、二人は中に乗って」
ドアを開けると、自動で折り畳みの階段が現れます。
中には広いリビングが広がり、ふさふさのクリーム色の絨毯に、大きなクッションがいくつも転がり、奥にはハンモックが下がっています。
久しぶりに見ましたが、あの当時とまったく中身は変わっていません。
「え……」
「うわぁ……」
双子はびっくりして固まっています。
「ほら、早く」
「う、うんっ」
「ロジータ姉ちゃん、くつのままあがっていいの?」
サリーがもじもじしながら聞いてきます。
「ああ、そうね。靴は脱いで上がったほうがいいかも」
「わかった!」
ダニー、サリーの順で馬車の中に上がっていくのを見届けてから、私はダーウィを馬車につなぎます。
「さて、双子に中の説明をしてくるから少し待っててね」
ポンポンと首を軽く叩いて、私は馬車の中へと乗り込みました。
森に入り込んで完全に街も人影も見えなくなったところで、スキルの『探知』で周辺を調べました。
――大丈夫そうね。
近くには魔物も人もいないのが確認できたので、一休みしようと立ち止まりました。
「さて、ここまで来ればいいかな」
ミトスドンクのダーウィは、少し息があがっていました。
双子を乗せていたせいもあるかもしれませんが、水で薄めた魔獣用のポーションの効果が思ったよりも早く切れかかっています。
「だいじょうぶ?」
「だいじょうぶ?」
双子たちをダーウィから降ろすと、心配そうに見上げながら声をかけます。しかし、ダーウィの方は返事をする余裕もなさそうです。
私はインベントリから残っていた魔獣用ポーション(牛乳瓶1本くらい)を取り出して、原液のままダーウィに飲ませてあげました。
基本的に魔獣用ポーションは体力と活力がアップするものなのですが、当時王宮勤めの薬師だった友人(フロリンダと同じエルフ)から格安で譲ってもらったモノなので、市販の物よりも効果は別格でした。インベントリに入っていたので、効果はそのままです。
全部飲み切った時。
「ブルルルルッ!」
両方の前足をあげて勢いよく嘶いたダーウィの姿には、先程までの年老いた様子はなくなり、現役時代に戻ったかのようです。
毛艶はピカピカ、目にも力が漲っているように見えます。
――さすが、ヴェラだわ。
かつての友人のことを思い出します。200年くらいだったら、彼女のことだったら、もしかしたらまだ生きているかもしれません。
「すごい!」
「きれいになった!」
双子の嬉しそうな声に、私も嬉しくなります。
「さてと、いよいよ馬車を出すわよ」
双子のエメラルドグリーンの瞳が期待でキラキラしだしました。
これから長く一緒に行動する双子には、インベントリのことを教えてあります。ダーウィのために取り出した魔獣用ポーションが、何もないところから出てきたのを見て、大興奮した双子です。馬車に対しても当然そうなることでしょう。
インベントリから取り出した小型の馬車が、ストンっと軽い着地の音とともに現れると、わー!という歓声が上がります。
見た目は大人が4人乗れるような小型の木製馬車です。荷物は馬車の上に載せるタイプですが、今回は何も載せません。
「さぁ、二人は中に乗って」
ドアを開けると、自動で折り畳みの階段が現れます。
中には広いリビングが広がり、ふさふさのクリーム色の絨毯に、大きなクッションがいくつも転がり、奥にはハンモックが下がっています。
久しぶりに見ましたが、あの当時とまったく中身は変わっていません。
「え……」
「うわぁ……」
双子はびっくりして固まっています。
「ほら、早く」
「う、うんっ」
「ロジータ姉ちゃん、くつのままあがっていいの?」
サリーがもじもじしながら聞いてきます。
「ああ、そうね。靴は脱いで上がったほうがいいかも」
「わかった!」
ダニー、サリーの順で馬車の中に上がっていくのを見届けてから、私はダーウィを馬車につなぎます。
「さて、双子に中の説明をしてくるから少し待っててね」
ポンポンと首を軽く叩いて、私は馬車の中へと乗り込みました。
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