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ロジータ、隣国を目指す
第48話 ベントリーさんの思い出
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ベントリーさんが即金でポンッと金貨100枚出してしまうのにはびっくりしましたが、わざわざ商人ギルドに行ってお金を預ける(マジックバッグがあっても、一部は預けておいた方がいいと言われたので)のも同行して下さって、その上、私の代わりにクレームまで入れて下さったのには、言葉もありません。
「ゴンザレス、リンダはだめだ」
「ベントリー様」
「例え、ヨラニード子爵家の縁戚の娘とはいえ、ちゃんと接客できないようなのを受付に置いてはダメだ」
「……申し訳ございません」
名前の迫力とは違って、小柄で弱そうな中年男性のギルドマスターは、ベントリーさんの指摘にしょぼんとなっています。
お貴族様に忖度した結果、ということなのでしょう。 結局、意地悪な受付の女の人は裏方に回されることになるそうです。
それだけベントリーさんの発言力が強いということなのでしょう。
次の約束の相手を待たせてまで、私の対応をしてくださった上に、わざわざ門のところまで見送りにまで来てくださったベントリーさん。
「これからどこへ向かうのかお聞きしても?」
「とりあえず、国を出るつもりです」
今いるヨラニード子爵領は国境に接した場所ですが、隣国との間には高い山々が連なっています。
「となると、まずは辺境伯領に向かわれることになるのでしょうか」
たぶん、それが常識的な経路なのでしょうけれど、私はちょっと別の方法を考えています。
なので私はにこりと笑みを浮かべるだけにとどめました。
カジャダインの街を出て、街道を馬車で走っています。すでに日は傾きつつあります。
私は手の中にあるベントリーさんから渡された金属製の割符に目を向けます。
『何かあったら、うちの支店に寄って下さい』
そう言ってベントリー商会(名前そのままです)の各支店で通用するという割符を渡されたのです。
――こんな大事な物を、私のような小娘に渡してもよかったのかしら。
ありがたいと思いつつも、少しだけ心配になった私でした。
+ + + + + + + +
ロジータの馬車を見送るベントリーを、ひょろりとした若い男性、跡取りでもある孫息子が声をかける。
「旦那様、本当に時間がないんですよ」
「わかってる」
「もう、いい加減にしてくださいよ……」
ぼそぼそと文句を言いつつも、それ以上は促さないのは、祖父の切なそうな顔に気付いてしまったからだ。
「あの獣人の娘が何だって言うんです」
馬車が見えなくなって、ようやく動いたベントリーの後を、孫息子が不満げに言う。
「……私の命の恩人であり、初恋の人の娘なのさ」
「は?」
フフフっと照れくさそうに笑う祖父を見て、孫息子が固まる。
ベントリーとロジータの母、ミリアとの出会いは、ベントリーが跡取りとして商隊についていくようになった10代前半まで遡る。
当時、すでに冒険者として活躍していたミリアは、見た目はベントリーより少し年上くらいに見えた。
ベントリーは、ミリアに大事そうに抱えている古ぼけたマジックバッグのことを聞いた時のことを、今でも覚えている。
『このマジックバッグはね。私以外は使えないのよ』
『使用者限定なのか。凄いな』
『私と血縁関係があれば使えるけど、今は誰も残ってないの』
少し寂しそうにそう言っていたミリアの姿を、今でもありありと思い出せる。
後に、実際は数十歳年上だというのを知ってかなりショックだったのも、今ではいい思い出になっている。
――家族が出来てよかったですね。
ベントリーは、心の中で今は亡きミリアにそっと声をかけるのであった。
「ゴンザレス、リンダはだめだ」
「ベントリー様」
「例え、ヨラニード子爵家の縁戚の娘とはいえ、ちゃんと接客できないようなのを受付に置いてはダメだ」
「……申し訳ございません」
名前の迫力とは違って、小柄で弱そうな中年男性のギルドマスターは、ベントリーさんの指摘にしょぼんとなっています。
お貴族様に忖度した結果、ということなのでしょう。 結局、意地悪な受付の女の人は裏方に回されることになるそうです。
それだけベントリーさんの発言力が強いということなのでしょう。
次の約束の相手を待たせてまで、私の対応をしてくださった上に、わざわざ門のところまで見送りにまで来てくださったベントリーさん。
「これからどこへ向かうのかお聞きしても?」
「とりあえず、国を出るつもりです」
今いるヨラニード子爵領は国境に接した場所ですが、隣国との間には高い山々が連なっています。
「となると、まずは辺境伯領に向かわれることになるのでしょうか」
たぶん、それが常識的な経路なのでしょうけれど、私はちょっと別の方法を考えています。
なので私はにこりと笑みを浮かべるだけにとどめました。
カジャダインの街を出て、街道を馬車で走っています。すでに日は傾きつつあります。
私は手の中にあるベントリーさんから渡された金属製の割符に目を向けます。
『何かあったら、うちの支店に寄って下さい』
そう言ってベントリー商会(名前そのままです)の各支店で通用するという割符を渡されたのです。
――こんな大事な物を、私のような小娘に渡してもよかったのかしら。
ありがたいと思いつつも、少しだけ心配になった私でした。
+ + + + + + + +
ロジータの馬車を見送るベントリーを、ひょろりとした若い男性、跡取りでもある孫息子が声をかける。
「旦那様、本当に時間がないんですよ」
「わかってる」
「もう、いい加減にしてくださいよ……」
ぼそぼそと文句を言いつつも、それ以上は促さないのは、祖父の切なそうな顔に気付いてしまったからだ。
「あの獣人の娘が何だって言うんです」
馬車が見えなくなって、ようやく動いたベントリーの後を、孫息子が不満げに言う。
「……私の命の恩人であり、初恋の人の娘なのさ」
「は?」
フフフっと照れくさそうに笑う祖父を見て、孫息子が固まる。
ベントリーとロジータの母、ミリアとの出会いは、ベントリーが跡取りとして商隊についていくようになった10代前半まで遡る。
当時、すでに冒険者として活躍していたミリアは、見た目はベントリーより少し年上くらいに見えた。
ベントリーは、ミリアに大事そうに抱えている古ぼけたマジックバッグのことを聞いた時のことを、今でも覚えている。
『このマジックバッグはね。私以外は使えないのよ』
『使用者限定なのか。凄いな』
『私と血縁関係があれば使えるけど、今は誰も残ってないの』
少し寂しそうにそう言っていたミリアの姿を、今でもありありと思い出せる。
後に、実際は数十歳年上だというのを知ってかなりショックだったのも、今ではいい思い出になっている。
――家族が出来てよかったですね。
ベントリーは、心の中で今は亡きミリアにそっと声をかけるのであった。
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