53 / 69
ロジータ、隣国を目指す
第52話 街道を進む、分かれ道
しおりを挟む
防音効果のおかげもあって、テントでは静かな夜を過ごせました。
食事を終えて外に出てみると、気持ちのいい青い空が広がっています。
「ダーウィ、おまたせ」
「ほら、おいしいジーニスだよ」
双子にダーウィの世話を任せている間に、テントを片づけて、結界の魔道具を抜いていきます。
馬車の向こう側、他の冒険者パーティたちがいるほうを見ると、すでにいなくなっているパーティが1つ、残りもそろそろ出かける準備をしているようです。
昨夜、声をかけてくれた女の冒険者のパーティも残っていて、ちょうど彼女と目があったので、小さく会釈だけして戻ります。
「ロジータ姉ちゃん、このまちではかいものしないの?」
餌をやりおえたダニーが聞いてきます。
本当なら買い物もしたいところですが、厄介そうな視線があっただけに、この町に長居はしたくありません。
「まだ食料も足りてるし、次の村でいいかなと思うんだ」
「そうか」
「ねぇ、ぎょしゃだいにのってもいい?」
「ごめんね。町を出たら乗せてあげる」
「わかった!」
サリーは残念そうではありましたが、先に行ったダニーについて素直に馬車の中へと入っていきます。
「窓から顔を出さないようにね」
「……わかった」
私の声色で何かを察した双子は、顔を引き締めて頷きました。
――まったく、変なのに目をつけられたみたいね。
残っていた冒険者パーティのうち、もう一つのほうからビシビシと嫌な視線が感じられて、ため息が出ます。しかし、そんなのを気にしていたら動けません。
私は御者台に乗ると、馬車を西門の方へと向かわせました。
元気いっぱいのダーウィと風の魔法のおかげで 、街道を軽快に馬車は走ります。
町を出てしばらくは、後ろからついてくる馬がいましたが、途中から私たちのスピードについていけず、いつの間にか消えてしまいました。
途中、王都や辺境伯領に向かう分かれ道がありましたが、私たちは予定通りにアマン山脈に向かう道に進みます。
「ダーウィ、もう少しいったら休憩しましょうね」
ブルルルっ
陽気に返事をするダーウィに、私も気持ちが軽くなります。
休憩が終わったら、双子たちを御者台に乗せてあげてもいいかもしれません。
「その前に」
私は馬車を少し先で止めると、分かれ道まで戻って轍の後を確認します。少し残っているような気がしたので、箒でササッと消しました。
「『ミスト』からの『ドライ』」
ついでに生活魔法の『ミスト』と『ドライ』を使って、箒の跡も消せば完璧です。
「これで少しは時間稼ぎになればいいんだけど」
――あの手の奴らは執念深いって、相場が決まってるのよね。
私は再び御者台に乗ると、休憩場所を目指して馬車を進めました。
* * * * *
ロジータの馬車が分かれ道でアマン山脈の方へ進んで30分程経った頃、冒険者を乗せた馬が2頭、ちょうど分かれ道までやってきていた。
一人は『黒き雷』のバッド。ロジータを狙っていた悪い奴だ。
「おいおいおい、本当にアレはミトスドンクなのかよ」
「チッ、全然追いつかねぇじゃねぇか」
「バッド、いい加減諦めろよ」
「くそ、あのメス猫め。奴隷にして売っぱらったら、相当な値段になったはずだぜ」
「まぁ、確かにな」
「どこかで休憩くらいはするだろ。追いかけるぞ」
「まだ行くのかよぉ」
一緒にいた男のほうは、いい加減にしてほしいと思っているが、頭に血が上っているバッドを放っておくわけにもいかなかった。
二股の分かれ道で、普通に向かうのは辺境伯領の道。反対の道は寂れた村しか残っていない。
「ハイッ」
バッドたちは当然のように辺境伯領に馬を走らせるのであった。
食事を終えて外に出てみると、気持ちのいい青い空が広がっています。
「ダーウィ、おまたせ」
「ほら、おいしいジーニスだよ」
双子にダーウィの世話を任せている間に、テントを片づけて、結界の魔道具を抜いていきます。
馬車の向こう側、他の冒険者パーティたちがいるほうを見ると、すでにいなくなっているパーティが1つ、残りもそろそろ出かける準備をしているようです。
昨夜、声をかけてくれた女の冒険者のパーティも残っていて、ちょうど彼女と目があったので、小さく会釈だけして戻ります。
「ロジータ姉ちゃん、このまちではかいものしないの?」
餌をやりおえたダニーが聞いてきます。
本当なら買い物もしたいところですが、厄介そうな視線があっただけに、この町に長居はしたくありません。
「まだ食料も足りてるし、次の村でいいかなと思うんだ」
「そうか」
「ねぇ、ぎょしゃだいにのってもいい?」
「ごめんね。町を出たら乗せてあげる」
「わかった!」
サリーは残念そうではありましたが、先に行ったダニーについて素直に馬車の中へと入っていきます。
「窓から顔を出さないようにね」
「……わかった」
私の声色で何かを察した双子は、顔を引き締めて頷きました。
――まったく、変なのに目をつけられたみたいね。
残っていた冒険者パーティのうち、もう一つのほうからビシビシと嫌な視線が感じられて、ため息が出ます。しかし、そんなのを気にしていたら動けません。
私は御者台に乗ると、馬車を西門の方へと向かわせました。
元気いっぱいのダーウィと風の魔法のおかげで 、街道を軽快に馬車は走ります。
町を出てしばらくは、後ろからついてくる馬がいましたが、途中から私たちのスピードについていけず、いつの間にか消えてしまいました。
途中、王都や辺境伯領に向かう分かれ道がありましたが、私たちは予定通りにアマン山脈に向かう道に進みます。
「ダーウィ、もう少しいったら休憩しましょうね」
ブルルルっ
陽気に返事をするダーウィに、私も気持ちが軽くなります。
休憩が終わったら、双子たちを御者台に乗せてあげてもいいかもしれません。
「その前に」
私は馬車を少し先で止めると、分かれ道まで戻って轍の後を確認します。少し残っているような気がしたので、箒でササッと消しました。
「『ミスト』からの『ドライ』」
ついでに生活魔法の『ミスト』と『ドライ』を使って、箒の跡も消せば完璧です。
「これで少しは時間稼ぎになればいいんだけど」
――あの手の奴らは執念深いって、相場が決まってるのよね。
私は再び御者台に乗ると、休憩場所を目指して馬車を進めました。
* * * * *
ロジータの馬車が分かれ道でアマン山脈の方へ進んで30分程経った頃、冒険者を乗せた馬が2頭、ちょうど分かれ道までやってきていた。
一人は『黒き雷』のバッド。ロジータを狙っていた悪い奴だ。
「おいおいおい、本当にアレはミトスドンクなのかよ」
「チッ、全然追いつかねぇじゃねぇか」
「バッド、いい加減諦めろよ」
「くそ、あのメス猫め。奴隷にして売っぱらったら、相当な値段になったはずだぜ」
「まぁ、確かにな」
「どこかで休憩くらいはするだろ。追いかけるぞ」
「まだ行くのかよぉ」
一緒にいた男のほうは、いい加減にしてほしいと思っているが、頭に血が上っているバッドを放っておくわけにもいかなかった。
二股の分かれ道で、普通に向かうのは辺境伯領の道。反対の道は寂れた村しか残っていない。
「ハイッ」
バッドたちは当然のように辺境伯領に馬を走らせるのであった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
69
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる