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ロジータ、隣国を目指す
第54話 ベリーのジャムを作る
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私は宿屋のおばあさんに追いつくと、私たちがベリーを摘んでも構わないか、聞きました。
ジャムを作るにしても、ドライフルーツにしてみるにしても、先程もらった量では試作すらできないと思ったのです。
「ええ。かまわないよ。まだまだあるからねぇ……ほら」
そういって裏手につながるドアを開けてくれました。
目の前には、私の腰ぐらいの高さの木に、まさに鈴生りという言葉がぴったりなくらい、びっしりと赤や黄色のベリーがなっています。
「……凄いですね」
「おほほほ。放っておいたら、こんなに増えてしまってねぇ」
――これが鳥の餌になっちゃうなんて、もったいない!
私はマジックバッグ(とみせかけて、インベントリ)からアーカンスの街で買った鍋を取り出しました。おばあさんに渡された小さなカゴよりもたくさん入れられるでしょう。
確かに軒先がかなり広いおかげで、濡れずに採ることができます。
「そんなに美味しかったかい?」
おばあさんが嬉しそうに声をかけてきたので、コクコクと頷きます。
「うちの子たち、指を真っ赤にして食べてました」
「そうかい、そうかい」
なぜかおばあさんも手伝ってくれて、あっという間に鍋はベリーで山盛りです。
これだけあれば、ジャムもかなりの量が作れるはず。おばあさんたちにもお裾分けができるでしょう。
「あの、調理場って使わせてもらえますか」
テントや馬車にもキッチンはついているものの、いきなり出来た物を渡すのは不自然すぎると思ったのです。
「お客さんはお前さんたちだけだから、夕飯の準備を始める前だったらかまわないよ」
「ありがとうございます!」
軒先ではありましたが、鍋いっぱいのベリーを『ウォーター』でざっと水洗いしました。
――どうせなら、赤と黄色で色違いのジャムがいいよね。
インベントリからもう一つ小鍋を出すと、小鍋のほうに黄色のベリーをよけていきます。
「便利だねぇ、そのバッグは」
おばあさんがしみじみとした声で話しかけてきました。
「母の形見なんです」
「……そうかい、そうかい」
私の言葉に、何かを感じたのか、おばあさんが寂しそうな目になりました。
――そういえば、ここはおじいさんと二人でやってるんだっけ。
お子さんたちはどうしたのか聞いていいものか迷って、私は声をかけられませんでした。
「ロジータ姉ちゃん」
「なにやってるの」
双子たちが空になったカゴを持ってやってきました。
「あ、おばあちゃん、ごちそうさまでした」
「でした!」
「あらあら、ちゃんとお礼が言えるなんて、いい子たちだねぇ」
二人の頭を優しく撫でているおばあさんを横目に、私は2つの鍋に砂糖をたっぷりかけます。
――アーカンスの街で多めに砂糖を買っておいてよかったわ。
ここで少し時間をおいて水分が出てくるのを待ちます。
その間に、おばあさんが双子と一緒にベリーを摘みにいったので、私はインベントリから小さめの空き瓶を4つ取り出しました。
「『クリーン』」
本当なら熱湯消毒するべきなのでしょうけれど、この世界には便利な魔法があるのです。
「ロジータ姉ちゃん、みてみて!」
サリーが得意げにカゴを持ってて見せてくれます。
「凄いわね。ダニーは?」
「ダニーは、つみながらたべてる…・…」
「あらら」
満面の笑みで現れたダニーの口元は、見事に真っ赤に汚れていました。
ジャムを作るにしても、ドライフルーツにしてみるにしても、先程もらった量では試作すらできないと思ったのです。
「ええ。かまわないよ。まだまだあるからねぇ……ほら」
そういって裏手につながるドアを開けてくれました。
目の前には、私の腰ぐらいの高さの木に、まさに鈴生りという言葉がぴったりなくらい、びっしりと赤や黄色のベリーがなっています。
「……凄いですね」
「おほほほ。放っておいたら、こんなに増えてしまってねぇ」
――これが鳥の餌になっちゃうなんて、もったいない!
私はマジックバッグ(とみせかけて、インベントリ)からアーカンスの街で買った鍋を取り出しました。おばあさんに渡された小さなカゴよりもたくさん入れられるでしょう。
確かに軒先がかなり広いおかげで、濡れずに採ることができます。
「そんなに美味しかったかい?」
おばあさんが嬉しそうに声をかけてきたので、コクコクと頷きます。
「うちの子たち、指を真っ赤にして食べてました」
「そうかい、そうかい」
なぜかおばあさんも手伝ってくれて、あっという間に鍋はベリーで山盛りです。
これだけあれば、ジャムもかなりの量が作れるはず。おばあさんたちにもお裾分けができるでしょう。
「あの、調理場って使わせてもらえますか」
テントや馬車にもキッチンはついているものの、いきなり出来た物を渡すのは不自然すぎると思ったのです。
「お客さんはお前さんたちだけだから、夕飯の準備を始める前だったらかまわないよ」
「ありがとうございます!」
軒先ではありましたが、鍋いっぱいのベリーを『ウォーター』でざっと水洗いしました。
――どうせなら、赤と黄色で色違いのジャムがいいよね。
インベントリからもう一つ小鍋を出すと、小鍋のほうに黄色のベリーをよけていきます。
「便利だねぇ、そのバッグは」
おばあさんがしみじみとした声で話しかけてきました。
「母の形見なんです」
「……そうかい、そうかい」
私の言葉に、何かを感じたのか、おばあさんが寂しそうな目になりました。
――そういえば、ここはおじいさんと二人でやってるんだっけ。
お子さんたちはどうしたのか聞いていいものか迷って、私は声をかけられませんでした。
「ロジータ姉ちゃん」
「なにやってるの」
双子たちが空になったカゴを持ってやってきました。
「あ、おばあちゃん、ごちそうさまでした」
「でした!」
「あらあら、ちゃんとお礼が言えるなんて、いい子たちだねぇ」
二人の頭を優しく撫でているおばあさんを横目に、私は2つの鍋に砂糖をたっぷりかけます。
――アーカンスの街で多めに砂糖を買っておいてよかったわ。
ここで少し時間をおいて水分が出てくるのを待ちます。
その間に、おばあさんが双子と一緒にベリーを摘みにいったので、私はインベントリから小さめの空き瓶を4つ取り出しました。
「『クリーン』」
本当なら熱湯消毒するべきなのでしょうけれど、この世界には便利な魔法があるのです。
「ロジータ姉ちゃん、みてみて!」
サリーが得意げにカゴを持ってて見せてくれます。
「凄いわね。ダニーは?」
「ダニーは、つみながらたべてる…・…」
「あらら」
満面の笑みで現れたダニーの口元は、見事に真っ赤に汚れていました。
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